フィリピン人は何故地図が読めない 2012年5月12日


フィリピンにやって来て最初に苦労するのが、なかなか良い地図が見つからないことだ。特に道路マップが貧弱で、地方に旅行するときなど苦労する。1989年フィリピンにやって来て最初に手がけたのが地図探しだった。

 そこで判ったのがフィリピンにも1万(1万分の一地形図)、5万あるいは20万という地図が立派に存在することだ。日本の国土地理院のようなところ(The National Mapping and Resource Information Authority (NAMRIA))で発行・販売しているだけだが、販売所はボニファシオの基地の中にある。ちなみに下の地図はマヨン火山付近の20万分の一の地形図だ。

フィリピン全体の地図としては色々あるが観光省で発行している地図が日本語で見やすい。主要な観光地が記されて、裏はマニラあるいはセブの観光案内がコンパクトにまとめられている。在日フィリピン大使館の横山さんに頼めば手に入るはずだ。

道路マップとしては主にACCU-mapE-Z MAPが主要都市とフィリピン全土をカバーするものを出しているが、個人的にはACCU-mapの方が好きだ。最近でこそ、本屋、文房具屋、ホテルなどで見かけるが90年代は、入手がなかなか難しかった。

マニラ首都圏のマップとして優れものがマニラ新聞で出しているNAVIに載っているマップだ。マカティ、エルミタ/マラテ、ボニファシオ、オルティガス、ロックウエルなどが、日本人が訪れる店や事務所が日本語で記載され、大変重宝だ。

 いよいよ本題に入るが、何故、フィリピンでは地図が少ないのか。それはフィリピン人が地図を使わないからだ。それでは、何故使わないのか。それはほとんどの人が地図を読めないからだ。日本人からすると、何故と思うかもしれないが、彼らは地図など見なくても、住所さえあればどこでもいけるし、それで不自由はしないのだ。

 そもそも、鳥でもない限り地形や道路を上から、あるいは3次元的に見ることはない。地表にいる限り、人は平面的あるいは2次元の世界で暮らしている。だから、どこかへ行くのに人は、元来地図すなわち3次元的ではなくて平面的すなわち2次元的に捉えているのだ。例えば、「まっすぐ1km進んで、マクドナルドのところを右に向かって、3つ目の道路を左に折れて...」てな具合だ。

 本来2次元である地形や道路を鳥のように3次元で捉えること、また逆に3次元的に眺めたの地図から2次元に落として捉える、と言うことはよほどの訓練がなければできないことだ。すなわち訓練によって身につけることのできる後天的能力であって、エンジニアーが設計図を見ただけで、現物をイメージできるのと似ている。

 例えば、鳥が地上に降りて歩いてどこかへ行こうとしても不可能だろう。また、逆に蟻を空に連れて行って、行き先を聞いても判らないだろう。彼らは位置の捕らえ方が、全く違うのだ。どちらかといえば、蟻に近い我々においては、2次元で捉えている位置を3次元的に表現しようというところにどだい無理があるのかもしれない。

 たしかに、日本でも家具や電気製品を買ったりして、配達のため、家の場所の地図を書いてくださいと言われて、それをすらすら書ける女性がどれだけいるだろうか。普段生活している場を地図の形で表すのは一つの特殊能力なのだ。

 かつて、現役のころ、会社に3次元CADComputer Aided Design)なるものが導入され、図面をコンピューターに入力して、3次元画像であたかも構造物を人間の目線で見れるようにして、最終的な設計のレビューとして使っていた。それはプラントを運転する人たちは設計のエンジニアーではないから、図面を見ても、実際の構造物がどうなるのかということが読めないのだ。

 そうなってくるとフィリピン人の多くが地図を読めないからと言って、目くじら立てるほどのこともないような気がする。実際どこかへ行こうとすると、地図がないから、お手上げになってしまう日本人よりも、住所だけで目当ての場所を探り当てるフィリピン人の方が、よほど頼りになる。犬が数千kmの旅をして家に戻ってきたという超能力的な話もあるが、必ずしも地図が位置を決める唯一の手段ではないのだ。

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