雇用形態は複雑多岐にわたるが、それは、できる限り正社員としては雇いたくない、いつでも事情が変われば首にできるようにしておきたいという、雇用主側の事情によっている。これらを巧みに使って、正社員にせず、給与を安く押さえ、福利厚生費を減らし、いつでも好きなときに首にできるような状況を保っておこうとするものだ。よほど、優秀で、信頼がおけて、離したくない社員のみを正社員にするべきだ。とんでもないものを正社員にすると、正社員にしたとたんに安心して働かなくなってしまう。
- 正社員(Regular Employee)
会社の通常の役割を遂行する社員で6ヶ月間の試用期間等、所定の過程を経て正社員として採用されたもの。会社が規定する一切の特典(ベネフィット)を享受する。特典としては、13カ月給与(クリスマスに支給される確定年末ボーナス)、会社の業績に応じた特別ボーナス、残業、退職金、ベースアップなどがあり、13ヶ月給与を除いて日本と大差ない。また、昇格により、いったん役職につけた場合、なにか特別の事情のない限り降格する事は許されない。また、いったん与えたベフィットは何か代わりを与えない限り止めることは許されず、しかも彼らは常に雇用条件の改善を求めるから、最初から何もかも与えないで小出しに少しづつ与えていくのがこつだ。こうすれば毎年良くなっていくと希望を持って会社に残るわけだ。
- 試用社員(Probationary Employee)
正社員として正式に採用する前に、通常6ヶ月、契約により最長18ヶ月間、試用期間を置く事ができる。この間、正社員にするに値しないと判断された場合、無条件で期間満了をもって雇用を打ち切る事ができる。この期間は雇用、被雇用者とも必死になって相手を見極めなければならない。被雇用者は必死に見とめられようとして働くはずで、雇用者としてはイマイチと思ったら遠慮なしに切る事だ。イマイチだけど正社員にしたらやる気が出てパフォーマンスがあがるだろうなどと甘い事を考えてはいけない。社員がもっとも頑張る時期にだめなものは、その先何を与えてもだめだろう。SMデパートの売り子など試用期間で全員解雇して常に社員を入れ替えているところもある。人件費を安く保つためだろうが、特に技量の必要性がないところでは多く行われているようだ。
- 契約社員(Contractual Employee)
コンサルタントなど一定の技量を持った人を、期間を限定して雇用するもので、通常の業務をやらせる事ができる。ボーナス、残業等のベネフィットは正社員と同様にする必要はなく、契約書に明記されている範囲で支給する。契約を延長する場合、2週間程度の間隔を開ける必要がある。そうしないと連続して1年以上働いた場合、会社にとってパーマネントに必要な役務で、正社員にしなければならないと判断されるからだ。実際、単に正社員にしたくないから契約社員にするといったことが多く行われているため、そのような法的措置があるようだ。
4. 季節雇用(Casual Employee)
季節により、あるいは一定の時期だけ必要になる業務を行わせる場合、雇用するもので夏の海の家のアルバイトとといった感じだ。必要な時期が終わると解雇される。
5. プロジェクト雇用(Project Employee)
家の建設など一定のプロジェクトのために雇用されるもので、その建設が終了すれば自動的に解雇となる。契約書にプロジェクトと予定の完了時期を明記しておく。建設工事の労務者は、皆このように雇われている。
6. 代替雇用(Substitute Employee)
正社員が産休などで一定期間いなくなる場合、それを充当するものとして、雇用される。正社員が復帰した時点で解雇となる。代替雇用で技量を判断して、正社員の空きが出たとき、代替社員の中から正社員として採用する、というような方式をとっている会社も多い。
7. 派遣社員(Agent Employee)
人材派遣会社から必要に応じて派遣させるものだが、直接の雇用関係はなく、身分はあくまでも派遣もとの社員のままだ。ジャニター、警備員等、会社の本業とは関係なく、一定の専門職で、直接雇用にするのが適切でないものに限定される。もちろん給与は派遣もとの会社から支払われる。会社の本業に関係していて長期にわたって派遣させると直接雇用としてみなされ、簡単に首にできなくなってしまう。1年以上にわたって同じ人間を派遣させると、問題になる事があるので適宜、交代させて同じ人間が長く働かないようにする必要があある。