最近ラグナ・テクノパークで違法就労容疑の法人が拘束されたというニュースがマニラ新聞に出ていた。「男は就労許可や就労ビザを取得せずに日系企業の営業部長として働いており、情報提供があったため強制捜査に踏み切った。男は旅券やビザを証明する書類を持っておらず、運転免許証が押収された。」とある。
ここで目に付いたのは、「情報提供」という言葉だ。要はタレこみがあったのだ。タレこんだのはきっと男の部下で、きっとへまをしでかしてきつくおこられたのだろう。腹いせに入管にタレこんだに違いない。
本当に営業部長として組織に組み込まれて働いている場合、日系企業で就労ビザ(9dないし9gビザなど)も就労許可(AEP-Alien Employment Permit)もとらずにいるなどということはありえない。きっと下記のような微妙な状況にあったに違いない。
- 9gビザないしAEPの申請中で手元にパスポートがなかった。通常、申請中であれば情状酌量の余地はあるが、それを証明する書類の写しを所持しているべきである。例え一日でも収容施設に入れられたのではたまらない。
厳密に言えば申請中でもPWP(Provisional Work Permit、暫定労働許可)が必要で、2~3日で発行される。大分前の話になるが、私自身がPRAで働き始めるときにAEPを取らされたのだが、それが取れるまで出勤することは許されなかった。さすが役所のやることはお堅い。
- 出張ベースで来て現地社員の指導をしており、給与も現地会社からはもらっておらず特に就労しているわけではない。あるいはセミナーなどの指導のために短期間訪問していている場合だ。これも厳密に言えばSWP(Special Work Permit, 特別労働許可)が必要で、2~3日で発行されるが、そんなものを一々とっている会社は少ない。また、芸能人が公演をするときなども必要なビザだ。
さらに最近は特に会社に所属しているわけではないが、個人的にフィリピンに在住して業務を遂行して、日本の会社から対価を得ているという場合がある。従来であれば、フィリピンで収入があるわけでもないし、対価は日本の口座に振り込まれるし、一体、入管なり税務署に捕捉する手立てがあるのか、ということでAEPはとらないでも大丈夫と判断された。
しかしながら同僚ないし知り合いにタレこまれたのではたまらない。立ち入り調査でパソコンなどを調べられたら、仕事をしていることは一目瞭然で、通帳などを見ればしっかりと収入を得ていることもばれる。しかも税金も納めていないから脱税の容疑もかかる。
しかし、個人的に働いていて、どうやってAEPが取れるのか。AEPを取るためには基本的に下記の書類が必要とされる。
1.申請書
2.パスポートの顔写真と長期ビザのページ
3.雇用契約書ないし役員などに指名されたという会社の証明書
4.雇用される会社の営業許可証並びにSEC会社登記書
AEPの申請には就労ないし経営する会社が必要であって、仕事あってのAEPであり、フィリピンの長期ビザ(SRRV、SIRVなど)をとったからといって漠然と発行されるものではない。逆に9gビザ(いわゆるワークビザ)などの申請にはAEPの取得が前提となっている。
税務署としては税金さえ取れれば文句はないからTINさえ取得して納税申告をすれば受け付けてもらえるかもしれない。しかし、それはフィリピンで収入を得ている、すなわち不法に就労しているという扱いを受けてしまい、入管の取締りの対象になる恐れが十分にある。
一番間違いないのは、きちんと会社を興して、一人社員で運営するかだが、SECの届出や年次会計報告の作成や納税申告などなどかなり厄介でお金もかかる。そんな悩みの相談を受けて考え付いたのが、どこかの会社に雇用してもらって、納税申告などの必要書類準備は、全部やってもらって、それなりの対価を支払うというものだ。納税申告は、なにも日本の会社から受け取っている収入でなくても、その会社との契約、AEP取得のために用意した雇用契約に基づいて行えばよいだろう。
2018年9月10日追記
しかしながら、このような抜け道を厳しく取り締まるために、DOJ(Department Of Justice、法務省)が乗り出してきて、ダミー経営者や雇用者をきびしく審査している。これは大量の中国人労働者の流入により、フィリピン人の仕事が奪われかねないという状況が発生しているためだそうだ。
それにたいして退職ビザの保有者は就労に際して、AEPを免除されるという新しい規則が準備中で、近いうちにAEP免除というお墨付きがつき、退職ビザの価値が格段に向上する見通しだ。
2019年7月31日追記
長い間、期待していたAEP免除のお達しが一向に出ない。この間、新聞ではAEPの発行を厳密にするという記事が続いている。PRAの営業部長代理に聞いてみても渋い顔をして、全く消えたわけではないと、言い訳をする始末だ。昨今の状況でAEP免除などとんでもないという声が大きいのだろう。残念ながら当面、このことは忘れていた方が良さそうだ。
はじめまして。
本日の昼前にPRAにSRRVの二回目の更新に出向いたところ、書いていた訪問者名簿の一つ上の欄に志賀様のお名前を見つけたいへん驚きました。執筆された『金なしコネなしフィリピン暮らし』を基にこれまでやってこれた部分が多いので、この場をお借りしてお礼申し上げます。
昨日こちらの追記を見つけ、目下AEP取得と格闘している(そして負けそう)ので一筋の光明を見た感じがしました。
一年前にローカルのDOLEを相談に訪れた時は「 フィリピン人にはできない技術を二人以上のフィリピン人を雇って教えること」、一ヶ月前に再び訪れた時は前回のは廃止となってそのかわり「10人以上のフィリピン人を雇用すること」などが条件になっていると聞かされました。今年のについてはネットを検索しても出てこないのでローカルのルールなのかもしれません。
屋台のようなスモールビジネスであとはAEPだけなので待ち遠しいです。
あと、市の営業許可とdtiの登録もフィリピン人のみということなのでこのあたりも一緒に改善してほしいところです。
基本的に小売ビジネスはフィリピン人に限定され、200万ドル以上の資本を投入しないと許可されません。屋台のようなスモールビジネスだからこそフィリピン政府はフィリピン人のビジネスを外国人が奪わないようにしているわけで、外国資本の投資は歓迎だが、これこそは最後の牙城として守っているのです。どういう会社形態でビジネスを立ち上げようとしているのかわかりませんが、まずは外資規制(ネガティブリスト)を研究してください。
それからAEPが免除されている13aあるいはクオータビザを取り直すという手もありますが、13aはフィリピン人配偶者が必要で、一方、クオータビザは高額なので悩ましいところです。