外国人の難敵TIN(Tax Identification Number-納税番号)2018年7月6日 1


フィリピンで就労している場合、外国人であってもフィリピンへの納税義務があるため、TIN(Tax Identification Number:納税番号)の取得が義務付けられている。日本のマイナンバーに近いものと思ってよいのだが、このTINは就労していなくてもコンドミニアムの売買、株式投資、遺産相続など納税の必要が出た場合にBIR(Bureau of Internal Revenue)という日本の税務署にあたる役所から提示を求められる。フィリピンで就職した場合、TINは雇用する企業がまとめて取得等の事務処理を行うため、就職時にTINの存在を意識する必要はない。

一方SRRVの取得にはTINは必要ないため、ほとんどのSRRVホルダーはTINを持っていない。しかし、上記のような事柄に関連してCAR(Certificate Authorizing Registration:納税証明書)を申請する際、売買では売り手と買い手、相続では相続人と被相続人双方に必須の情報となるため、TINが必要となってくる。

就労していない外国人にとってこのTINの取得が難関なのだ。また、TINの番号だけでよいか、あるいはTINカード(TINが印刷され、顔写真を貼付できる紙製のカード)が必要なのかによってその難 易度が大きく異なる。端的に言ってTINカードの取得はフィリピンで就労していない場合は、よほどのコネがない限りその取得は不可能といってよい。

さて、件のSIRV申請中の方と、SIRV取得に必須である株式投資のためにフィリピンの某大手証券会社に訪れた。証券口座を開設するためだ。口座の開設には顔写真付きのID、現住所を証明できるもの、銀行口座等が必要なのだが、その必要書類のリストの一番下に目立たぬように、難敵であるTINが記載されている。申請者はフィリピンで就労していないので、当然TINを持っていない。

証券会社の担当者よりTIN取得の要領が記載されたペーパーを渡された。そこにはインターネット上でTINを取得できることも記載されているのだが、よく読むとフィリピン人用であり外国人は対象となっていない。口座開設者のTINを証券会社の方で代わりに取得してもらえないかと要求してみたのだが、それはできないという。現地証券会社でできないものが一外国人にできるわけもないと思うのだが、そのあたりの企業努力はされていないようだ。後日、申請者はインターネット上でTIN取得を試みたそうだが、何度操作しても「BIRに訪れ申請してください」と表示され、どうにもならなかったそうだ。

当方としては金にものを言わせれば何とかすることができるのだが、今後も常にネックとなることなので、今回は正攻法、つまりBIRに訪れ担当デスクでTINの取得を試みることとした。

まず、証券会社としては必ずしもTINカードを要求しているわけではなさそうなので、まずはTINの番号の取得を試みることにした。さらに色々と調べていくと、どういうわけか就労していない外国人の新規TINの発行は、現在はケソンのBIR RDO(Revenue District Office:支所)39という事務所のみで扱っているということが分かった。なお、ケソンには複数のBIRのRDOがあるため、BIRということだけを頼りに行動するとひどい目に合うことは必須だ。

Google Mapを駆使してほぼピンポイントで場所も特定し、TIN取得に必要な申請用紙BIR Form 1904も事前に入手した。しかし、いくらGoogle Mapがあるとはいえ地の利のない外国人がその場所までたどり着くのは容易とは言えない。また、BIRにたどり着いてもすんなりと担当デスクにまでたどり着けるとは限らない。そこで、今回はユージン会計士とそのドライバーにも協力を依頼し、万全の態勢で乗り込むことにした。なお、会計士であるユージンにとってはBIRもTINも専門分野なのだが未就労外国人の新規TIN取得については経験がないとのこと。

これがBIR RDO39が入居するビルCOHER CENTER。メイン道路の側道沿いであり、側道は一方通行である。なお、手前はPetron(ペトロンガソリンスタンド)

ビルの上方にBIRという看板が掲げられているがちょっと目に付き難い

 マカティから車で1時間ちょっと、ようやくBIR RDO39が入居するビルCOHER CENTERにたどり着いた。BIRの事務所はこのビルの5階~7階である。一見単なるBIRの一事務所であるが、さっそくユージン会計士が窓口で聞き取りをしてくれた。やはり、未就労外国人のTIN発行は現在はここRDO39だけで扱っているのだそうで、担当デスクを教えてもらい、小難しそうな顔をした担当者に申請書類を見せる。担当者はなぜTINが必要なのかと聞いてきたので、BOIのSIRVの申請に株式投資が必要で、証券口座開設のために証券会社からTINを要求されている等とグダグダと説明した。後から考えると、単に株式投資がしたいということでも良かった気がする。

記入済みのForm-1904を2部、パスポートの顔写真とビザのページのコピー、さらに担当者が要求したのでSIRVの申請書のコピーを提出し、担当者がその場で新規のTINを発行しForm1904に書き込んでくれた。ちなみに、ビルの4階にゼロックスのサービスがありそこでコピーをとることができるため、万が一他の書類のコピーが必要になっても、外でコピーができる店を探し回る必要はない(インターネット情報ではコピーをとるのにえらい目にあったと記されていた)。

その後、証券会社で不足していた書類とともにTINの書かれたForm-1904を担当者に見せ、「あなたはイージーと言っていたが、未就労外国人である私には取得はすごくハードだった」と申請者が話をしたが、担当者はピンときていないようだった。この調子では顧客に外国人投資家を呼び込めないのではないだろうか。それはともかく、やはり番号さえあれば問題ないようで、無事に証券口座の開設ができた。なお、From-1904の記入必要箇所は意外と少ない。ユージン会計士曰く「わかるところだけ書いて、わからないところは空欄で。それで問題ない」とのこと。


「申請者から画像の提供があったので追記して掲載します」

 


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One thought on “外国人の難敵TIN(Tax Identification Number-納税番号)2018年7月6日

  • kujira

    勝手な言いようですが、志賀さんの事務所に勤務したようにしてtin#発行が出来なかったのでしょうか。
    この番号は勤労者が出資者に変わっても変わらないものと思っていますが・・
    毎度のことですが初めてのフィリピン! ご苦労と共に情報ルートに感謝いたします。