コンドミニアム建設ブームの終焉 2014年8月31日


ここ数年、マニラ圏のコンドミニアムの建設ブームはすさまじいものがあった。価格もここ5~6年で、3倍近くに上昇した。購入しているのは、主に海外の投資家、あるいは海外で働くフィリピン人(OFW)で、あくまでも投資目的で、実需ではない。完成したら、転売して大きな利益を得よう、あるいは賃貸で投資の回収を計ろうとするものだった。上海など高くなりすぎた不動産に比べて、フィリピンの不動産価格が割安感があり、大きな投資効果が期待できるという歌い文句につられて、投資が殺到した。

たとえ、実需でないとしても、デベロッパーとしても売れさえすれば良いのであって、雨後の竹の子のように高層コンドミニアムが立ち上がった。DMCI(建設会社)、SMDC(SMデパート)など、他業種からの参入も盛んだった。一方、アヤラやメガワールド、フェデラルランドなどの老舗もここぞとばかりにマカティの空いている土地を買いあさった。

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建設業界大手のDMCIはメトロマニラに比較的低価格で大型プロジェクトを立ち上げた(左)。デパート業界の雄、SMも超大型のコンドミニアムを多数販売している(右)。

こんな小さなユニットをあんなに高い金で、一体、誰が買うのか、という疑問はフィリピン在住のものなら誰しも持ったはずだ。価格は500万円~1000万円程度(賃料としては5万~10万円に相当)、投資には手ごろで、その価格に合わせて、25m2~50m2のスタジオタイプ(ワンルーム)の小さなユニットが大半だ。

そもそも、フィリピン人は大家族だから、こんな小さなユニットに大枚をはたいて住もうとする人は少数だ。ちなみに25m2のユニットで、月々5万円の賃料は、大卒初任給の2ヶ月近いお金で、一般のフィリピン人にとっては高嶺の花。同じ賃料で、郊外ならば、戸建てに住むことができる。しかし、外国人投資家には戸建ての家は、法律上買えないから、外人でも買えるコンドミニアムということになる。したがって、郊外の戸建てはこのブームとは無縁で、従来と大差のない価格で取引されている。

デベロッパーは、価格が上がるということを海外の投資家に示すために、需要供給の市場原理とは関係なく、売り出し価格を定期的に上げている。傍目に価格上昇は続いており、投資効果は間違いないと映る。しかし、ここに来て、大量の物件が完成し、賃貸市場に流れ込んで、マカティスクエアの新築コンドなどでは、50ユニットの賃借人募集などの宣伝が盛んに行われている。こんな高いお金で借りるフィリピン人は少数だから、日本人などの外国人がターゲットとなる。日本の大手の賃貸仲介の会社も進出してきているが、一体どれだけの日本人が賃貸を必要としているのか、賃借人の獲得競争は熾烈を極め、賃貸料も下降気味だ。

完成して、転売すれば儲かるなどという歌い文句は、過去のものだ。かつて、完成前の購入は、その物件が完成するという保証はなく、リスクの高いものだった。したがって、完成したら、購入価格にかなりの上乗せをして転売できた。今、実需がないにもかかわらず、これだけの新築物件が売り出されている現状で、完成物件を高値で買い求める人はいない。

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マロンガイ通り沿いは、マカティの高層地区膨張の象徴で多くの高層コンドミニアムが出現したが、その一角でも未着工のプロジェクトが眠っている(左)。マカティの高層地区で、唯一ともいえる新規着工のプロジェクト。しかし、ブエンディア通りをはさんだ手前の空き地は着工の気配がない(右)

とある若い退職者の方は、コンドミニアムを投資目的で購入した。フィリピンでローンを組んで、賃貸収入で返済しようとしている。しかし、賃貸料は低下、あるいは賃貸できるという見通しはなく、支払い済みの頭金は損切りの覚悟を決めているという。別の方は、賃貸の期待ができないので、ホテル仕様に変更して投資の回収を打診されているが、そのためには追加の改装資金が必要で、どうするべきか逡巡している。

そうなると、バブル崩壊で、不動産市場は壊滅し、価格の暴落が起こっても不思議はない。しかし、デベロッパーは強気に価格を上昇させている。そうしないと、海外からの投資家の呼び込みは不可能になるので、価格を下げて叩き売るわけには行かないのだ。

そもそも、デベロッパーは建設前にユニットを売り出して資金を集め建設するから、売れ残ったユニットを叩き売って資金を回収する必要はない。転売あるいは賃貸できないで困るのは投資家で、投資金を塩漬けにするしかない。したがって、バブル崩壊後の価格の暴落は起きないだろう。ただし、需要が供給に追いつくまで、10年、あるいは20年はコンドミニアムの建設は影を潜めるだろう。

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マカティの巨大コンドミニアムSM JAZZは完成して入居も始まったが、その手前の空き地(元TOYOTA Bel-Air)は一向に着工の気配がない(左)。パソンタモ沿いの空き地も看板だけで着工の気配がない。

ちなみに昨年当たりに着工を計画し、敷地を準備したプロジェクトは、ほとんどそのままで、一向に建設が開始される気配がない。要は建設前にユニットを売却して資金を集めることができないから、着工できないのだ。一方、外見が、あらかた出来上がったプロジェクトは着々と完成を目指している。すでに売れており、資金も用意できているのだろう。しかし、完成の暁には、誰も住まない幽霊コンドの出現となるのは間違いない。

このコンドミニアムブームのフィリピン経済への影響は、どうなるのだろうか。日本のバブル崩壊のように大きな経済の停滞を引き起こすのだろうか。多分、現在好調を維持しているフィリピン経済は、このまま順調に推移するだろう。なぜなら、このブームで海外から大きな投資を呼び込み、それがそのままフィリピンに塩漬けされて、フィリピン経済に寄与し続けるのだ。デベロッパーもコンドミニアムを大量に販売して、大きな利益をあげ、泣きを見ているのは海外の投資家だけなのだから。

 

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