パサイ・シティのバクラランと云えば、庶民の買い物どころで有名だ。また、オルティガスの先にあるグリーンヒルも穴場中の穴場としていつも人でごった返している。その両方が姿を消してしまったのだ。
バクラランはバクララン教会の脇の通りからLRTのバクララン駅まで道路いっぱいに衣類や靴・鞄を売る屋台が軒を連ねており、信じられない値段で売っていた。コピーブランド商品もごちゃ混ぜになっていた。
それが最近、訪問してみたら、きれいさっぱりなくなっていた。この道路がこんなに広かったんだとあらためて認識したくらいだ。それでも生活の糧を奪われた人たちが屋台の代わりに商品を担いで、いつでも逃げられるようにしている。警察が来るとあわてて路地に逃げ込んでいた。庶民のしたたかさを感じるが、哀れにもなる。何も彼らは警察に追われるような悪いことをしているわけでもなく、ただ必死に生きようとしているだけなのだ。
LRTの高架下の屋台も固定の屋根や屋台は撤去され、車輪のついた移動式の屋台が出ている。これもいつでも移動して逃げられるようにしているのだろう。バクラランはこれら屋台だけではなくて、道の両側のビルの中には一坪程度の店が数千軒がひしめく問屋街だ。だから街の機能は変わりなく、平日でも多くの人が買い物をしている。しかし、何かバクラランらしさをなくしてしまって、面白みが無い。
一方、グリーンヒルは元々ビルの中に一坪ショップがひしめいて、バッグ、衣類、時計、携帯などのコピーブランドや装飾品・民芸品・パソコンなどを売っていたのだが、本物(装飾品、民芸品、パソコンなど)を売る店を除いてすべて一掃されてしまったのだ。
こちらは徹底していて、バクラランのようにこそこそと商品を担いで売っている人もいない。なんともはや寂しい限りだ。ここでの商売を糧として生きていた人はどうしているのだろう。あの山のような商品はどこへ行ってしまったのだろう。
ここでコピー商品を買い求める人々が、それがなくなったからといって、本物のルイビトンやシャネルのバッグを買うはずも無い。アキノ新政権は一体庶民の味方なのだろうか。大手ブランドの利益にも寄与するはずもないコピーブランドの一掃を行い、多くの庶民の生活の糧を奪い、さらに庶民の買い物の楽しみを奪うという、なんとも意味のないパーフォーマンスだ。
私の相棒のジェーンは、「すぐに元に戻るわよ」と気楽なことを云ってたが、私としても「ショッピングの穴場」として、ご家族を案内したのに、面目が丸つぶれだった。
唯一もとのグリーンヒルらしさを保っていたのが、装飾品売り場だ。数百軒もあろうかというショップは格安の真珠を中心とする装飾品を売っている。モスリム (回教徒)が多いが、このモスリム姉妹の写真を撮るために、1000ペソの大枚をはたいてネックレスを買うはめになってしまった。同行した8歳のお嬢さんにお母さんがことのいきさつを説明していたが、理解できなかったらしい。男心を知るにはもうちょっと時間がかかりそうだ。