Daily Archives: August 15, 2010


パサイ・シティのバクラランと云えば、庶民の買い物どころで有名だ。また、オルティガスの先にあるグリーンヒルも穴場中の穴場としていつも人でごった返している。その両方が姿を消してしまったのだ。  バクラランはバクララン教会の脇の通りからLRTのバクララン駅まで道路いっぱいに衣類や靴・鞄を売る屋台が軒を連ねており、信じられない値段で売っていた。コピーブランド商品もごちゃ混ぜになっていた。  それが最近、訪問してみたら、きれいさっぱりなくなっていた。この道路がこんなに広かったんだとあらためて認識したくらいだ。それでも生活の糧を奪われた人たちが屋台の代わりに商品を担いで、いつでも逃げられるようにしている。警察が来るとあわてて路地に逃げ込んでいた。庶民のしたたかさを感じるが、哀れにもなる。何も彼らは警察に追われるような悪いことをしているわけでもなく、ただ必死に生きようとしているだけなのだ。  LRTの高架下の屋台も固定の屋根や屋台は撤去され、車輪のついた移動式の屋台が出ている。これもいつでも移動して逃げられるようにしているのだろう。バクラランはこれら屋台だけではなくて、道の両側のビルの中には一坪程度の店が数千軒がひしめく問屋街だ。だから街の機能は変わりなく、平日でも多くの人が買い物をしている。しかし、何かバクラランらしさをなくしてしまって、面白みが無い。 一方、グリーンヒルは元々ビルの中に一坪ショップがひしめいて、バッグ、衣類、時計、携帯などのコピーブランドや装飾品・民芸品・パソコンなどを売っていたのだが、本物(装飾品、民芸品、パソコンなど)を売る店を除いてすべて一掃されてしまったのだ。 こちらは徹底していて、バクラランのようにこそこそと商品を担いで売っている人もいない。なんともはや寂しい限りだ。ここでの商売を糧として生きていた人はどうしているのだろう。あの山のような商品はどこへ行ってしまったのだろう。  ここでコピー商品を買い求める人々が、それがなくなったからといって、本物のルイビトンやシャネルのバッグを買うはずも無い。アキノ新政権は一体庶民の味方なのだろうか。大手ブランドの利益にも寄与するはずもないコピーブランドの一掃を行い、多くの庶民の生活の糧を奪い、さらに庶民の買い物の楽しみを奪うという、なんとも意味のないパーフォーマンスだ。  私の相棒のジェーンは、「すぐに元に戻るわよ」と気楽なことを云ってたが、私としても「ショッピングの穴場」として、ご家族を案内したのに、面目が丸つぶれだった。          唯一もとのグリーンヒルらしさを保っていたのが、装飾品売り場だ。数百軒もあろうかというショップは格安の真珠を中心とする装飾品を売っている。モスリム (回教徒)が多いが、このモスリム姉妹の写真を撮るために、1000ペソの大枚をはたいてネックレスを買うはめになってしまった。同行した8歳のお嬢さんにお母さんがことのいきさつを説明していたが、理解できなかったらしい。男心を知るにはもうちょっと時間がかかりそうだ。

また一つマニラ名物の灯が消えた(その4)2010年8月15日


  日本ではあまり無いが、東南アジアでは唐辛子(チリー)を丸のまま料理に入れてあることが多々ある。それを知らずに食べて口の中が火事になってしまう経験をした人も多いと思う。特に韓国料理に唐辛子は不可欠だ。キムチなどあの赤い色が食欲をそそる。日本では七味唐辛子などそばに入れるが、好みの辛さになるように粉末になっている。韓国人は平気で丸のまま唐辛子を食べる。赤唐辛子はさすがに辛すぎるので、大きめで緑色の唐辛子を食べるが、唐辛子は小さいほ うが辛味が強い。 西洋では唐辛子が東洋から持ち込まれるまで、胡椒が一番辛く、肉の味付けなどはこの胡椒が主体だ。そもそもこれら香辛料(唐辛子、胡椒、わさび、辛子、 ニンニク、生姜、塩、酢など)は味付けというより、食品の保存に用いられたものだ。冷蔵庫の無い時代、どうやって作物のとれない冬や航海中の食物を保存するかが大きな問題だった。香辛料は抗菌性があるから腐敗するのを防ぐあるいは遅らせる。刺身にわさびをつけるのもそもそもナマの魚を腐敗から守るためのも のだ。 大航海時代の航海の目的はアジアやアメリカからこの香辛料を西洋に持ち帰って巨大な利益を得ることだった。また、砂糖も大変高価な調味料で、甘いケーキを食べるのが当時の貴婦人の無常の喜びだったらしい。そのため、糖尿病が不治の病として流行したらしい。 フィリピンでは唐辛子は小さな木にいくらでも出来るので、とても安い。一皿たったの5ペソだ。フィリピン人は甘党だが、ニンニクや唐辛子、生姜や小粒の玉ねぎを料理の味付けに多用する。ほとんどの料理の味付けが、この4つの香辛料と塩・醤油ですましてしまうといっても過言ではない。フィリピンで唯一辛い 料理が、下の写真のビコール・エクスプレスだ。刻んだ唐辛子に豚肉や小さなエビやオキアミを混ぜる。これに白い飯があれば充分いける。だから、フィリピンで辛党なのはビコラノだけだ。  さて本題だが、唐辛子を食べてしまい、口の中が火事になったとき、普通は水を飲んで消そうとするが、そう簡単には消えない。辛いというより、その痛みに 長いこと耐えなければならない。しかし、これを一瞬にして消し去る方法がある。それは、フィリピンならどこにでもある、あの小さなカラマンシーをいくつか 絞って水にいれ、それで口をゆすぐのだ。アルカリ性の液に酸を入れると一瞬にして色が消えて水になってしまう、という実験を中学のときにやったと思うが、まさにそれだ。辛味と酸味が中和して一瞬にして消える。カラマンシーでなくても酸味のある柑橘系の果物、レモンやカボスなどでも同じだろう。  このカラマンシーもフィリピンでは一袋10ペソ程度と格安だ。しかもカラマンシーの皮には認知症に効く成分が含まれているという有用植物なのだ。韓国料理やインド料理を食するときは是非前もって食卓に用意しておくことをお勧めする。

伊東家の食卓(フィリピン版)2010年8月15日