相続税の支払いに関する法律が改正されました(TRAIN Law)2018年6月10日 4


2月早々の肺炎による入院以来、2月は自宅療養、3~4月のホリーウイークの静養のための休暇、5月末の日本出張、そしてそれを補うため4~6月は超多忙という状況でブログに手を付ける余裕が全くありませんでした。ここに来て業務もやっと落ち着いてブログにでも手を付けようかという余裕が出てきました。その間、ブログのネタは山ほどあるのですが、時間が過ぎると鮮度がなくなって筆を取る気になりません。これからは鮮度を見極めながら従来のペースで記載していきたいと思いますのでよろしく閲覧願います。

この間の一番大きな話題は、相続税の支払い方法が劇的に改善されたことだ。

退職者が亡くなられたら、PRAに預けてある預託金や銀行預金の引き出しには相続人による相続手続きが必要となる。相続手続きには、死亡証明書、正当な相続人であることを証明する戸籍謄本、相続人の身分証明書、遺産分割協議書などをそろえて、PRAないし銀行に提出する必要がある。しかしながら、相続手続きの最大の山は税務署(BIR)から相続税の支払い証明書(CAR、Certificate Authorizing Registration)を取得することだ。そのために、BIRが要求する諸々の書類をそろえ相続税を前払いしてさらに3~6ヶ月の期間、ひたすら待つ必要があった(わざと遅くして何らかの見返りを期待しているのではないかという疑いさえもたれる)。

この諸々の書類が曲者で、例えフィリピンに住んでいなくても、上記の他に居住証明、地方税の支払い証明書、固定資産がないことの証明、納税番号(TIN)などの提出が必要だ。しかし、フィリピンに居住していていない限りこれらの書類は準備できない。本来ないものを入手して提出せよという無理難題を押し付けられるのだが、金にものを言わせれば出来ない相談ではないものの、その相場が高騰して相続人の負担を大きくしている。

さらに厳しいのが相続税の前払いだ。日本とは異なって、まず相続税をBIRの要求に沿って支払わなければならない。遺産が大きい場合、相続税の支払いに借金をしなければならないというはめにも陥りかねない。それらすべての難関を乗り越えて遺産の支払いが実行されるのだが、書類の準備も含めて一年以上かかることもざらで、その間の相続人の不安と焦りは想像に難くない。

最近、2件の相続を扱っているのだが、相続手続きの手順を銀行からヒアリングしている最中に元私の部下でCPA(公認会計士)のユージンさんから貴重な情報が飛び込んだ。曰く「2018年1月1日以降に亡くなった場合、税務署からのCARの取得は不要で、銀行が6%の相続税を源泉徴収して遺産の引き出しを可能とする」というものだ。これで相続税の前払い、ややこしい書類の準備、果てしない税務署の怠慢(CAR発行の遅さ)に頭を悩ます必要がなくなった。そこで、早速馴染みのBank of Commerceにヒアリングしてみると、社内通達ではっきりと「もはやCARは不要」となっているとのこと。これは朗報と「さすがドテルテ大統領」と感心した。一石2鳥、3鳥の税制改革で、相続人の負担軽減(税の前払い、期間短縮、ペーパーワークの削減)税務署員の汚職の削減と税収入の増加などなど、いいことだらけの改正だ。

しかし、PRAにヒアリングしたところ、相続の手順は従来どおりでCARが必要という。退職者の便宜をはかるべき立場にあるPRAが法律が改正されたにも関わらず、それを適用しないということは何たる怠慢かと厳しく詰め寄ったものの、担当者レベルではいかんともしがたいところがあり、しばし様子を見ることにした。1万ドルの預託金(年金申請の場合)の大半が相続税や、ややこしい手続きのおかげでなくなってしまうという現実をPRAは一体把握しているのだろうか。そのため件の相続者にはしばし様子を見ることを提案して、相続手続きを保留することにした。

もう一方の相続ではメトロバンクにかなり高額の預金があるが、近くの支店で話を聞いてみると、なんと従来と同じくCARを取得して来いというのだ。どうもこの本店からは支店に指示が出ていないらしい。具体的に相続手続きを行って預金を払い出すのは支店だから、早期に銀行本店からお達しを発行してもらわないと埒があかない。しかしこのまま待つのでは能がないので、CPAのユージンさんから中央銀行(BSP-Bangco Sentral NG Pilipinas)に訴えのレターを提出してもらってメトロバンクに圧力をかけることにした。法律が改正されたのにそれに従わないというのは法律違反であって、一流銀行としてありえない話だというのがユージン会計士の言い分だ。

そして、メトロバンクの本店で当該預貯金の相続の手続きについて該当部署とミーティングを持つことになった。当方からはCARの取得については不要とするよう要求してあったので、その場には銀行の弁護士も出席して相続手続きの書類について話し合った。冒頭、弁護士はこちらから話を出すまでもなく「CARは不要」と宣言した。BSP経由の圧力が功を奏したのかどうかは定かではないが、まさに勝利の瞬間で卓球の若きエース張本級の雄叫びを上げたくなった。「さすがドテルテ」と感想を述べると、メトロバンクの担当はうれしそうな顔をしていた。しかしながら手続きは緒についたばかりで、銀行の社内体制は旧法によるものなので、具体的な手続きの段階で翻弄されることになった。

この新法が徹底されて、PRAを含めた銀行預金の相続が早期に簡便化されることを願ってやまない。


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4 thoughts on “相続税の支払いに関する法律が改正されました(TRAIN Law)2018年6月10日

  • 志賀 安之

    本当に、ブログの再開をお待ちしていました。早速、PRAの難題に、当たり、フィリピンの最新情報を探索し、最善策を常に追求する姿勢には、同じ、老境にあるものとして、感銘を受けます。健康に、気をつけて、益々、御精進されん事を祈念致します。この情報公開は、他のPRAビザをお持ちの方にも注視すべき事柄ですね。

  • 藤井

    和民さんおかえりなさい。
    生意気言わせてもらいますが、これからはお身体
    ご自愛なされてボチボチやってください。

  • kujira

    お帰りなさい。相続手続きは保留しておいてもが罰則や滞留税の発生はないのでしょうか。
    また預託金のかなりの部分が手続き上徴収されることが現実なのでしょうか。
    充てにはしていないのですが悲しいですね。マーケッターの力では無理なんでしょうね

    • shiga Post author

      滞納税は発生しますがたいした額ではありません。現在、いかに費用を抑えられるかあるいはPRAによるTrain Lawの適用の可能性について研究中です。しばらく様子をみていてください。進展があったらこのブログで報告します。