タムタム君の試練 2013年5月12日


夏休みを利用して、農場のあるタバコからジェーンの甥と姪、4人、さらにマミーやビアンカなど合計6人が、遊びに来ていた。それに息子が日本から戻り、も ともとの住人7人とあわせて総勢14人が我が家に滞在していた。まだこのほかにも、6人の甥や姪が田舎に残っているが、夏休みの後半には彼らもやってくる 予定だそうだ。

 その中で、いつも、なんとなく一人でつまらなそうにしているのが、ジェーンの弟、ボボイの3人目の子供のタムタム君(7才)だ。 双子の姉(アレアとアレクサ、8才)と、長兄ダシンの次女バレリー(10才)も一緒なのだが、なんとなく仲間はずれになっていることが多い。

CIMG7982s-4子供達を連れて行きつけのサイカで食事を取ることが多いが、ボボイはタムタム君の面倒をかいがいしく見ている

 そんなある日、事件がおきた。 KIANがタムタムに絡みついてきたので、タムタムがKIANを振り回して、転ばせてしまい、その折、KIANは顔を床にたたきつけて口びるを切って血を 流してしまったのだ。その話を聞いて寝室に行ってみると、泣き疲れたKIANが、上口びるを大きく腫らせて寝ていた。タムタムは、自分自身がまだまだ幼い 子供と思っているから、4つ下のKIANに対しても手加減というものを知らない。それにKIANは誰彼となくパンチを食らわしたり、足蹴りをかます乱暴者 だから、人が見ていないことを幸いに日ごろのうっぷんを晴らしたのだろう。

 3才になりたての子供をやっつけようと思えば簡単な話で、タムタムが人目を盗んで、階段の上からKIANを突き落とすことさえもありうる。そんなわけ で、私からジェーンに「一刻の猶予なくタムタムを我が家から追放せよ」という命令が下された。 この裏には、日ごろからタムタムの存在がうっとうしく思われた私の心理が働いていたかもしれない。

CIMG8074s-4近所のスーパーマーケットで試食品を口にする子供達。中央のちょっとらっきょ頭をしているのがタムタム君。KIANも、この試食品大好きだが、この直後、バレリーがKIANから受け取った試食品を食べてしまい、大騒ぎになった

 事件の夜、、双子の姉が、事の顛末を、タムタムを責め立てる調子で、興奮気味に語った。彼女達は、「例えどんなにKIANが乱暴者であろうが、赤ちゃん だから甘んじて受け入れ、決して仕返しをするようなことはしない。タムタムは、KIANを傷つけるようなことをして、けしからん。そもそもタムタムはアホ だから、そんなことをするのであって、その証拠に小学校2年にも進級できず、1年生をやり直すことになった」などなど、この際、徹底的に弟を告発して、叩 き潰してしまおうという魂胆だ。その発言には、さすがのボボイも「マイガイ・カ、(うるさい)」といって姉達をたしなめた。

タムタムのサイドに立って発言する者は誰一人としていない。ジェーンは、あまりに周囲がタムタムを責めるので、黙って話を聞いていて、タムタムを優しく たしなめる程度だった。しかし、これがタムタムではなかったら、怒りは爆発していただろう。ジェーンの言い分は、「タムタムは誰からも嫌われ、相手にされ ない。このままでは将来ろくでもない人間になって、我々家族を困らせるだろう。だから、今、誰かが愛情を注いで、矯正しなければならない」だ。私に言わせ れば、「その役割は、彼の親が担うべきで、叔母さんが、自分の子供にリスクを背負わせてまでやらなければならないことではなかろう」となる。当の父親(ボ ボイ)や別れた母親は、私から見ると、見て見ぬふりをして、姉任せにしているように見えるのだ。

CIMG8186s-4息子の帰国祝いに2枚の大きなピザを買って、歓迎会。右から4番目がタムタム君

 日本から帰ってきて、1週間ほど滞在した息子が、タムタムがうっとうしくてたまらんと、ぼやき始めた。子供達と一緒に過ごすことを楽しみにして帰ってき た息子だが、一人で周囲をうろちょろするタムタムにうんざりしたようだ。子供達に優しい息子に相手をしてもらいたくて、まとわりついたり、パスコンを使っ ていると、後ろから覗き込んだり、とにかくうっとしいと。

他の子供達が部屋でKIANと遊んでいるので、「お前も皆と遊んで来い」と息子が命じた。タムタムが中に入ろうとしたら、中からKIANが「Go away, I don’t like you」と、怒鳴って、タムタムは、すごすごと部屋から引き返さざるを得なかった。KIANは、言いたいことを歯に衣着せず言うが、それは皆の言いたいことでもあるのだ。

田舎に帰る準備のためにデビソリア(フィリピンのアメヤ横丁)に買い物に行った折、子供達を任された息子が女の子に物を買ってやると、タムタムが自分も 欲しいと泣き出した。息子は、「男のくせにめそめそするな!」と、つい怒鳴ってしまったそうで、「こいつは鍛えなおさなくてはいかん」とコメントする。ビ アンカらと車でタバコの農場へ帰るのを楽しみにしていた息子だが、私から「タムタムも一緒だよ」と、聞かされて、「楽しみも半減」とがっかりしていた。 

CIMG8244s-4夜、テーブルを囲 んで雑談に花を咲かせる皆。KIANがいないので、会話はタガログ語で行う決まりだったそうだ

タバコへの出発を翌日に控え、ヤヤが「タムタムが可哀想」ともらしていた。しかし、ヤヤも「タムタムが嫌いだ」と本音を漏らす。となりにいた キム(KIANの腹違いの姉)も「この日を楽しみにしていた、とにかくKIANとタムタムが一緒にいると気が気ではない」と、タムタムの帰郷を喜ぶ。皆、 タムタムがいなくなるのでほっとしているのだ。

それにしてもタムタムにとってみれば、なんとも不公平極まりない世の中だ。自分よりもはるかに悪(ワル)のKIANは、皆が、KIANKIAN、と可 愛がり、何をしても許され、逆に喝采を浴びる。自分が同じことをすると叱られ、疎まれる。7才の彼にしてみれば、全く理解の外だろう。

その原因の一つは、彼が年相応の発育をしておらず、精神的に幼いということがある。消化器系に障害を持って生まれ、大手術で一命を取りとめ、それがゆえ に幼少のころ両親に溺愛されていたことも原因しているだろう。しかし、その愛も、すでに弟のジェルミーに引き継がれてしまっているうえに両親は離婚してし まっている。そして今、何故大人たちや他の子供はKIANばかりを愛するのか、それを理解するには幼すぎる。


 自分自身の人生を振り返ってみると、誰もが世間から不公平な目に会ってきたと感じていることだろう。自分がラッキーと思えることは、宝くじに当たるくら いめったなことではない。私は、世の中は誰にとっても不公平で、それを乗り越えて生きていくのが人生なのだと思う。これもタムタムに与えられた一つの試練 ないし宿命で、彼がこの試練・宿命を乗り越えて生きていけるかどうかは、彼自身にかかっているのだ。

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