こちらで子供の教育のために母子で暮らしている方のご両親が孫の顔を見にやってきた。観光には興味がないというので、ボニファシオ・グローバル・シティとアメリカン・セメタリーで近代フィリピンの勃興を視察、そして、ショッピングをエンジョイしてもらおうと掘り出し物のメッカ、グリーンヒルを案内した。
日本料理の老舗、きんぷらで食事をした後、ちょっと先の入り口から入り、早速値段交渉の決戦に臨んだ。プラダのバッグ、4個、コーチのバッグ5個など、威勢の良い買いっぷりだ。大体、言い値の半分で交渉すればよいと指導しているが、敵も限界に近づくとてこでも値段を下げないので、その辺が折り合いとなる。
先日、私が衝動的に買った5.11ブランドの時計が再びテーブルの上に置かれていた。確か1200ペソで買ったはずだが、値段を聞くと大柄のオカマがなんと4500ペソだという。とんでもないと反応すると瞬く間に値段が下がって、1100ペソ、2個で2200ペソで買うことができた。
そして、一番奥の突き当りを右に折れて、しばらく真珠の装飾品の店を眺め、突き当りを右に折れると再びバッグやかばんの店が並んでいる。そこにはかなりの数の時計屋があり、ショーケースにはいかにも高そうな時計が収まっている。 ブランド名はオーディマ・ピゲとパティック・フィリップ、スイスの最高級腕時計のブランドだが、それに比べるとロレックスやカルティエはただの普及品で、ショーケースに束になって並べられている。ここに陳列されているのは従来のクラシックなものではなくて、いかにも現代的で重厚なデザインだ。
まず、右側のショーケースのHUBLOTという、あまりなじみのないブランドの価格を聞いてみた。そうしたら、2万ペソ(45000円)という答えが返ってきた。45000円といえば、普通に買っても高級腕時計だ。それで、本物かと聞いたら、レプリカ(復刻版)だという。
普通、ショーケースに並んでいるのが、Aクラス呼ばれ、500-1000ペソ程度だ。最近は流行の大型の時計がロレックスやカルティエをしのいでいる。こちらが本気と見て取ると、店の中からケースも持ち出して、AAA(トリプルA)と呼ばれる品物を出してくる。これが2000-3000ペソくらいで、本物と見分けがつかない。だから、このレプリカと呼ばれる品物の2万ペソがいかに破格かわかる。
そして、左のショーケースのオーディマ・ピゲやパティック・フィリップの値段を聞いて、開いた口がふさがらなかった。なんと45000ペソだというのだ。約10万円、私が生涯購入したことのない値段の腕時計だ。これこそ本物かと聞いたら、当然のことではあるが、レプリカという答えが返ってきた。本物なら、300万ペソ(約700万円)だそうだ。700万円といえば、高級車一台分だが、そのレプリカが10万円したとしても不思議ではない。しかし、そんなもの作る人が世界のどこかにいるというのが不思議でならない。たぶん、中の器械まで本物と寸分違わないのだろう。ひょっとしたら本物の横流し品ではないだろうかとさえ思う。
ところで最近、私が成田の空港のガチャガチャ(100円入れてレバーを引くとカプセルに入ったおもちゃが出てくる器械で、数十年前に私の子供たちが夢中になっていたやつ)で買ってきたおもちゃの時計をKIANがうれしそうにしてる。そこで、ショーケースの外に並んだ安物の時計に目をつけた。値段は、最低100ペソから。KIANにおもちゃのような時計はにあわないからカシオのGショックを450ペソにまけてもらって買った。家に持って帰ってきて良く見たら、本物と見分けがつかない精巧な出来だ。アナログとデジタルの両方がちゃんと機能して、ストップウオッチも使える。これまた、本物の横流しではないかと疑いたくなる。