食い物の恨みは恐ろしい 2012年2月22日


 1.コーン・ビーフ事件
10年近く前になるが、私が退職してフィリピンに住み始めたころの話だ。農場で犬を5 匹飼っていたので、彼らの食事の準備が中々大変だった。安い鶏の頭の部分を買ってきてやわらかくゆでてご飯に混ぜて食べさせていたが、鶏のくちばしを除いたり、私自身が面倒を見ていた。そこで、鶏の頭がいつも手に入るわけではないので、緊急用の犬の食料として大きめのコーン・ビーフの缶詰を5個ほど買って部屋に保管しておいた。隠しておかないと、誰かが知らぬ間に食ってしまうので、いざというとき犬の食料がなくなってしまうのだ。

 当時メイド役で、まだハイスクールのデビナが部屋を掃除する際にそれを見つけて、「ダダ(私のあだ名)は食料を部屋に隠している」とジェーンの兄のダシンに告げた。そこでダシンらが「ダダはご馳走を独り占めしようと部屋に隠している」と憤慨しているとジェーンが私に告げたのだ。そこで、私は「それは犬の食料であり、自分のお金で買って保管しておいて何が悪い」と反論した。ジェーンがそのことをダシンに告げたが、ダシンは納得しない。そもそもコーン・ビーフは人間にとってもご馳走であり、それを犬の食料にするなんて言語道断であり、挙句の果てに「犬と人間とどっちが大事なのか」などと、わけの分からぬ議論に発展してしまった。このままでは私に対する恩も尊敬も何もかも消失してしまいかねない危機的状況に陥った。

 それ以来、私のは犬のえさの面倒は放棄して、彼らに任せ、部屋に食い物は一切置かないことにした。買ってきた食糧は台所に置いておいて、誰でも好きに食べられるようにしたのだ。おかげ彼らに興味のない日本食などはそのまま何年も忘れ去られてしまうはめになってしまった。

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 定番のアイスクリームをほおばるKIAN。アイスクリームと聞けば泣く子もだまるKIANなのだ。

2.KIANのフライドチキン事件
 KIANはチキンから揚げが大好きだ。先日、おなじみの日本食レストランのSAIKAから鳥から揚げをテイクアウトして、一緒に食べた。手に握り締めて食べているのを、先の部分の肉が落ちそうなので箸でつまんでお皿においてやった。そうしたらKIANが激怒して両手でテーブルをたたいて元へ戻せとわめき散らすく。あわてて骨に肉を刺して戻したのだが、その怒り様は初めて見るものだった。そしてもう一本のチキンのから揚げを頂戴と言ったら、また大きな声でわめいて拒否する。普段は何でも分けて食べるのだが、フライドチキンだけは別格のようだ。こんな横暴な態度は赤ちゃんだけが許される特権なのだろうが、KIANにとっては人生最大の危機だったと見えて、しばらくの間私に対しそっぽを向いていた。 

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そろそろ赤ちゃんを卒業して子供の雰囲気を出し始めたKIAN。やることなすことにはきりとした意志が伺える。

3.ヤナの日本菓子事件
 昨年、KIANのいとこのヤナ(6歳)がマミーと一緒にしばらくマニラに滞在した。その時、私がKIANに日本食材店からお菓子を買ってきてやった。しばらくして、そのまま置いてあるので、封を開けて皆に配った。その後、ヤナがジェーンの部屋でさめざめと泣いていたのだ。ジェーンによると、ヤナがKIAN に買ってやったお菓子を見て、全部自分にくれと申し出て、ジェーンがOKしたのだそうだ。ヤナは学校に持っていって皆に日本のお菓子を見せびらかしたかったらしい。そんないきさつを知らない私は、すでにヤナの持ち物になっているお菓子を開けてしまい、ヤナの希望を打ち砕いてしまったのだ。ならば、「なぜ、私に断らなかったのか、そもそもKIANにあげたものを何故勝手にヤナに与えてしまったのか」と抗議した。しかしジェーンは「一旦、KIANに与えたものは、すでにダダの手を離れてしまったのだから、母親がどうしようとかってだ」と切り返す。私は「ならば、KIANに対する私の気持ちはどうなるのか」と反論したが、理解してもらえない。結局、後から日本の別のお菓子をヤナにあげて、丸く収めるしかなかった。

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おいしそうにラーメンをほおばるKIAN。バンクオブコマースがペトロンのガスステーションに移動したので、そこにある日本食チェーン、太った少年、テリヤキボーイで食事をした。普段SAIKA等で食事をしている私にとってはちょっと食べられるレベルではなかった。

4.バナナとアイスクリーム
 私は週に1~2回、KIANをつれてショップ・ワイズというスーパー・マーケットに行ってアイスクリームやバナナ、それに私用のワインや野菜を買う。アイスクリームやバナナはKIANのために買ってやるのだが、皆で食べられるように1.5リッター入りあるいは20~30本くらいの大きな房を買う。私も時には味見するが、大抵1~2日でなくなってしまう。周囲の大人たちが我先に食べてしまうのだ。私にとってはちょっと痛い出費だが、KIAN用だけというわけには行かない。一旦冷蔵庫に入れたら、それはそこに住んでいるもの全員の共有物で、皆、何の遠慮も無しに食べる事ができるのが、フィリピンのルールだ。自分の部屋に隠しておくなんてもっての他で、冒頭のコーン・ビーフ事件の二の舞になってしまうことは必須だ。

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抱き枕をマイクに仕立てて歌を歌うKIAN、そして掃除用のモップのバケツに座ってなにやらお勉強をするKIAN


5.KIANのスナック菓子事件

 昨日、マム・ジェーンが、KIANは、するめイカと干し小魚が好きだから、日本食材店で買ってきて欲しいと頼まれた。マカティスクエアの山崎で、色々吟味して、大きな袋に色々なスナックが小分けして入っているのを大230ペソもはたいて買ってきた。戻ってみるとジェーンの友人が二人来ていて、一所懸命浄水器の売込みをしている。しばらくすると、KIANに買ってきたはずのスナックが、客に振舞って半分くらいがなくなってしまっている。そこで割り込んで少しKIAN用にとってやった。そのとき私がジェーンに言った「もうこんなに食べてしまったのか」という言葉が、ジェーンの気にさわった。私としても味見くらいならいいとしても、ほとんど全部食べてしまいそうな勢いにあせってしまったのだ。ジェーンは「客の前で恥をかかせた」というのだ。しかし、「KIANに買ってきたものを勝手に客と食べてしまうというのはいかがなものか」というのがこちらの言い分なのだが。

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TOY Storyに夢中のKIANはダンボールの箱の中に入って小さく丸まって、人形に気分を味わっている。

6.結論と教訓
 フィリピンでは、半数くらいの国民が、その日食べるものに汲々としている。だから、家族が生き延びていくためには少ない食べ物を皆で分かちあい、自分だけ食べ物を独り占めするようなことは反道徳であると強く戒めている。これが家族の絆を強める原動力にもなっているのだろうが、悪い見方をするとカゴの蟹のメンタリティともなっているような気がする(一匹の蟹がカゴから出ようとすると皆で脚を引っ張って引きずり落としてかごに戻してしまうようなメンタリティ)。

 私は、すでにジェーン一家の家族とみなされているから、たとえ私がお金を払ったとしても、食べ物を独り占めするようなことはもはや許されない。現金が食料となったとたんに家族の共有物となるのだ。人が生きていくためにもっとも重要なものは食料だ。動物にせよ人間にせよ、この食物を得るために活動し、働く。だから、食物に対する思いは格別なものがあり、フィリピンでは「武士はく食わねど高楊枝」などと流暢なことはいってはいられない。而して、「食い物の恨みは恐ろしい」という名言にたどり着くのだ。このように、フィリピン人と日本人とでは食い物に対する所有感が微妙に異なる。しかし、この食い違いは決定的な溝を作りかねないから、フィリピン人と結婚してその家族と一緒に暮らすとしたら、よく肝に銘じていて欲しい。

 

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