12月23日(木)クリスマスイブの前日、二人の訪問者に伴ってビコール地方・タバコ市の農場へ車で向かった。2006年より開始されたセブ・パシフィックのディスカウント・チケットによりもっぱら飛行機に鞍替えして以来、車で行くのは実に4年ぶりだ。今回は2名の訪問者がいるため、色々見物しながら道中を楽しんでいこうという嗜好だ。
渋滞を避けるために、早朝5時に出発したが、南に向かう高速道路(South Luzon Express Way, SLEX)はすでに渋滞が始まっていた。皆考えることは同じなのだ。結局、ケソン・プロビンスの州都ルセナ市を抜けるまで断続的な渋滞が続いた。渋滞が一段落したところでガソリンスタンドに寄ったが、そこにはキリストの生誕をモチーフにした実物大のジオラマが飾ってあった。
ルセナを過ぎてルソン島の太平洋側の海岸に出るためにはルソン島の背骨にあたる小さな山脈を越えなければならない。そのわき道を通るとその峠は国立自然公園となっていて、自然のジャングルがそのまま残っている。遠くにルセナの湾も臨むことができ、道端では近隣に住む子らが道案内をしながらクリスマスのギフトとしてコインをねだっていた。
太平洋側の町、グマカには有名なドライブ・イン・レストラン、リタスがある。日本のドライブインとは比べようがないが、このトロトロ形式のレストランは 24時間営業で客が絶えない。メニューの数はさほどではないが、どれも新鮮でおいしい。イカの丸焼き、小エビのかき揚げ、ゴーヤ・チャンプル、カジキとバナナの幹のスープ(ポッチェーロ)、魚の切り身のフライ、それにライスとミネラルウオーター、4人分でしめて667ペソだった。味付けがさっぱりしていて日本人にとってみても思わずうまいと声が出るほどだ。
厨房ではたくさんの人が必死で下ごしらえや調理をしている。ウエイトレスも含めて20人以上の人がいるから、3交代、全部で60人くらいの人が働いていることになる。たかがトロトロ・レストランとはいえ、相当の売上高になるものと伺える。
ビコール地方に入るところでちょうど旅の半分になる。道はダエット(Daet)経由の旧道と近道の新道に分かれるが、たとえ2時間ほど余計にかかっても情緒のある旧道を通ることにした。途中展望の開けているところで一休みをしたが、そこからは延々と続く未開の山々が見え雄大な気分になれる。今回は新車の三菱モンテーロできたため、道中すこぶる快適で、皆まったく疲れを見せない。マニラ近郊のカラバリソン地方(カビテ、ラグナ、バタンガス、リザール、ケソンの県の総称)が混んでいたため、すでに出発から9時間を越え、さらにタバコの農場到着まで5時間かかる見込みだ。
ダエットを過ぎるとビコール地方特有の並木のトンネルが続く。さらに旧道の終わり付近は自然林の国立公園となっており、周辺に住む住民はまったくおらず、まるで日本の箱根富士国立公園内かどこかを走っている気分だ。ちなみにビコール地方は太平洋側にあるため、マニラ周辺の気候とはまったく異なり、明瞭な乾季がない。だから、1年中緑が豊富で絶えることがない。路肩もいつも緑、どこへ行っても緑・緑に囲まれている。
旧道と新道の交わっているシコポットを過ぎるともうすぐ、ビコール地方最大の都市ナガに出る。ここまで来るとあと2~3時間の道のりだ。だからここにあるペトロン(フィリピン石油公社)のガソリン・スタンドは一息をつく人々でにぎわっていた。そこにはハーレー・ダビッドソンの新車が3台誇らしげに停まっていた。フィリピンでは優に1台100万ペソ(約200万円)する代物だ。しばらくしたら刺青のあるアメリカ人とおぼしき3人が颯爽と乗っていったが、ジャンパーにはMAD MAXなどと時代物の文字が書いてあった。
ここからはほとんど平野、田園地帯でナガ、ピリ、バアオ、ナブス、バツ、オアス、ポランゲ、リガオ、ギノバタン、カマリグ、ダラガなどの市町村がレガスピ市まで連続している。町はクリスマス休暇で帰郷した人々であふれ、クリスマスの飾りがきれいだった。とりわけ電飾で飾り付けたフォルクスワーゲンが目を引いた。わがタバコの農場へはレガスピの手前、リガオで左におれて30分ほどの山道を通ると到着する。午前5時出発、午後7時到着、走行距離500km、少々きつい14時間の旅だった。