フィリピンでは鉄道が発達していないので、旅は飛行機か船あるいは車ということになる。島から島への移動は飛行機か船で行うがが、島の中は車となる。車の移動はバスかジープニー、あるいはフィルキャブと呼ばれるバンが公共の乗り物だが、我々外国人に乗りこなすのは極めて困難。そうなるとや はり自家用車ということになる。
自家用車での旅で一番必要となるのは地図だ。その地図がフィリピンでは極めて貧弱で頼りにならない。現在フィリピン全土を網羅していて入手可能なのは“Travel Atlas”位で、その各ページが“E-Z MAP”としてばら売りされている。値段は500ペソ、ばら売りの地図は1枚、100ペソ位で、National Book Storeで売っている。この“Travel Atlas”も全国の都市を網羅しているわけではないので、土地勘がないと地方都市を走り回るのが難しいだろう。そうなるとやはりフィリピーノに同行してもらうのが必須となる。
こんな峠の景色が味わえるのは車の旅ならでは
バギオへ向うケノンロード、一度自転車で試してみたいコースだ
宿についてはほとんどの都市には、そこそこのホテルが複数あるので、その街についてから探せば大丈夫。リゾートホテルもたくさんある。しかもどこ もすいていて満員で泊まれないなどということはほとんどない。また、連れ込みホテルも多数あるのでいざとなれば問題なく泊まれる。連れ込みホテルは家族連れで泊まっても平気なようだ。普通のホテルで一泊、1000~1500ペソ、連れ込みホテルなら500ペソも出せば安心して泊まれるだろう。
太平洋の夜空に浮かぶ満月
タガイタイに行く途中にはJapanese Sweet Cornと称して甘いゆでとうもろこしを一本10ペソくらいで買える
ガソリンスタンドもペトロン、シェル、カルテックスなどのスタンドが全国津々浦々にある。食事どころもいくらでもあるが、ジョルビー、チョーキン などなじみの味が全国展開しているので問題ない。ただし、地方都市では円からペソの両替はきわめて難しくなる。レートも悪いようだ。マニラで 十分なお金をペソに換えて持っていくべきだ。もし、銀行口座を持っているなら、ATMカードを持っていればどこでも下ろせる。
タガイタイの近くでは道端に栽培されているパイナップルに遭遇できる
道端では付近の畑で取れたパイナップルを格安で売っている。手前のかご一杯でたったの100ペソだ
フィリピンの地方を回ろうとすると、どういうわけかフィリピン人は自分の住んでいるところ以外はどこも危険と忠告する。NPA(共産ゲリラ)が出没するとか、MNLF(モスリムゲリラ)が どうとか、とても不安になる。たしかにミンダナオ島の一部には危険な地域があるようだが、私が旅行した限り、どこも何の不安もなかった。な にしろフィリピン人は誰も自分の住んでいるところは一番安全と自慢しているから、色々な人の話をあわせるとどこも安全ということになる。一般論とし ては、地方は都市より安全なようで、地方の人はマニラをことの他、怖がる。ただし、誰の案内もなしに知らないところをうろうろするのは控えたほうが良い かと思う。
地方では道路はもみを干すためのスペ-スとしての役割が重要
フィリピンに数年住んだ人は、問題なく運転できると思いますが、フィリピンに来たばかりで自ら運転するのは控えたほうが良い。左ハンドルの右側 通行なのでなれるのに少々時間がかかる。運転マナーも日本とは大分違うようだ。追い抜きや交差点でウインカーを出すことは余りない。追い越し もかなり大胆だ。車線を変えようとウインカーを出すと、どういうわけか急加速して邪魔される。日本のように歩行者優先ではなくて車優先なのだ。
田舎道ではジープニーは唯一の交通手段で中も外も満員となる
マニラ市内の道は雨季ともなるとでこぼこになり、雨で冠水することもしょっちゅうだ。しかし地方の道は自動車の通行量が少ないせいか、返って舗装が整備 されていて、気持ちよくドライブが楽しめる。日本の休日のリゾートのようにどこもかしこも満員とか交通渋滞とかいうこともなく気持ちよく車の旅を満喫できる。あの悪魔のような渋滞はマニラおよびマニラ周辺だけで、フィリピン中の車がマニラに集まっているのではないかと思うくらい、マニラは車の密度が高い。一方、地方 では車のありがたみがつくづく感じられます。ちなみに私の家のあるビコ-ルのタバコ市には信号が一個も無いという位だ。
ただ、地方を走っていて気に障るのは、あのトライシクル(3輪バイク)だ。時速10~20kmで走るトライシクルは車の平均速度を著しく低下させる。あれで案外幅があるので、簡単には追い越せない。対面車両が多いとき、時速20kmくらいで悠々走られるといらいらさせられることこのうえない。これが3輪自転車(パジャック)になると語るにつきる。しかしパジャックは市街地だけしか走らないのがせめてもの救いだ。
こんなトクダネにめぐり合えるたのも車の旅ゆえ
フィリピンのガソリンの値段はリッター約40ペソ(100円)だ。日本より2~3割安いのだが、物価差を考慮するとかなり割高だ。これでタクシーが初乗り、40ペソ(100円)とか信じられない安さなのはどういうことかと不思議だ。なにしろ車の値段は日本と変わらないか、あるいは昨今の円安で日本より高いくらいなのだ。このため自家用車での旅行はかなりお金がかかる。それだけ贅沢であるともいえる。一方運転手の給料は日本の10分の1程度だから、長距離の旅行では自分で運転するのは愚の骨頂といえる。是非運転手付の豪華なドライブを楽しんでほしい。なお、運転手には食事は提供しなければならないが、宿泊施設は同じものを提供する必要はない。少々金をやれば一泊200~300ペソで適当に見つけて寝てくれる。ちなみにレンタカーは運転手付で1日3000ペソくらいで借りることができる。
こんな時代錯誤の風景に出くわすこともある
車の旅行は飛行機のように点を結ぶのではなく、途中、その土地々の風物に接することができて、それなりの楽しみがある。道端で売っているその土地の名産のスイカ、ランブータン、パイナップルなどの果物、バゴオン、ブコパイ、蜂蜜などの名物、刃物、かご、調理器具などの特産品などをひやかしてみるのも楽しいものだ。し かし長距離を走って、同じ道を戻らなければならないのはいかにも退屈するという向きには、行きは車、帰りは飛行機にして、車は運転手に持ってこさせるとい う手がある。運転手にある程度の小遣いをやれば夜のうちに寝ずに走って戻ってきて、翌朝、空港まで迎えに来てくれるだろう。
マニラの南へ向う高速道路、ラッシュ時以外は閑散としている
最近開通したスービックークラーク間の高速道路は日本の高速道路顔負けの快適さだ
フィリピンには高速道路と呼ぶことができるのはマニラの北と南の200km足らずです。その他はすべて一般道だ。しかしここではそれをHighwayと呼んでいるので注意してほしい。そのためこの国ではたとえHighwayでもせいぜい平均時速50kmがやっとだ。しかしフィリピン人のドライバーは、夜間ではあろうが、時速100km位で走り通すというから驚きだ。