OFWとはOversea Filipino Workerの略。あえて翻訳すると海外出稼ぎフィリピン人労働者となる。ご承知のとおり、フィリピン経済はこのOFWに支えられているといえるほど大量のフィリピン人が海外に出かけていって外貨を稼ぎ、せっせと国に残された家族に送金している。
統計によると2006年度現在、海外140カ国に在住するフィリピン人は、永住または長期滞在者、356万人、半年以上の滞在者、380万人、違法滞在者、87万人、合計、823万人の上っている。そして、年間の送金額は128億ドルにおよび、国家予算を凌駕する額だ。単純に平均すると、一人頭、1555ドル(19万円弱)、月当たり130ドル(1万6千円)となります。これはフィリピンでは優に一家族が暮らしていける金額なのです。すなわち家族から一人OFWをだすと、その家族は安泰なのだ。一家族平均5人とすると、4000万人を超え、なんと国民の半分以上がOFWの送金で養われていることになる。
街中至る所にあるOFW送る出すエージェントの事務所
OFWとはもっとも身近なところでジャパユキさん(最近はめっきり数が減ったが、彼女たちもフィリピン経済を支えていたのだ)、船乗り(最近の外国航路の大型船は船長以外ほとんどフィリピン人とのこと)、メード(香港、シンガポールの日曜には街にフィリピン村が出現する)、そして中近東の建設労働者、ホテル、レストランの従業員、等々、フィリピン人労働者は世界の産業を支える貴重な労働資源となっているのだ。
リクルートエージェントの前で朝早くから並ぶOFW志願者
な ぜ、これほどまでにフィリピン人は海外に生活の糧を求めるのだろうか。政治の腐敗、貧困というバックグラウンドはあるとしても、それは東南アジアの各国 に共通なものだ。それは、フィリピンという国が長くスペインそしてアメリカの支配を通じて、東南アジアにありながら西洋的な文化を持っていること、さら に世界で英語を話す国民がアメリカ、イギリスについで3番目であること、に起因している。
フィ リピン人は、先進国、すなわち、アメリカ、カナダ、そして日本等で暮らすことに強い憧れをもっている。残念ながらフィリピンという国へのこだわりは大変 希薄なのだ。しかしながら、これら先進国は、彼らの入国をきびしく制限している。そのため、とりあえず、彼らを受け入れる、外国人労働者がなければ国 が成り立っていかないような、香港、シンガポール、中近東等の中進国へ向かうだ。
今日もOFW(右)が飛び立つ
彼らが一定期間外国で暮らし、たっぷり外貨を稼いで帰国する時、マニラ国際空港(NAIA、Ninoy Akino International Airport)にはジプニー、一台を借り切って家族総出で出迎える。それに答えるために、件のOFWは目いっぱいお土産を買い込んできる。もし、お土産を買ってこれない場合は、そのまま、Duty Free Shopに乗り込んで外国製品を買い込む。そのため、フィリピンに入国後2日間は空港の近くにあるDuty Free Shopで買い物ができるという制度までがあるのだ。
OFWが持ち帰ったドルを水際で回収するDUTY FREE SHOP
以上のとおり、OFWはフィリピンを支える最大かつ最重要な産業なのだが、OFWを管理、保護するために、POEA(Philippine Oversea Employment Administration、フィリピン海外雇用庁)という役所がある。メトロマニラ、マンダルヨン市、EDSAとオルティガスAve.の交差点にあるPOEAのビルには海外労働許可を取得に来る数千人の人々で毎日あふれかえっている。そして街のあちこちでたくさんの人がたむろして何かを待っている人を見かけるが、これは海外派遣斡旋を生業とする業者の事務所で海外出稼ぎの申し込みをする人たちなのだ。
海外出稼ぎ労働者を管理する総本山のPOEA
街角にひたすら順番を待つOFW
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