日本の健康保険がフィリピンで使えるのか、という問い合わせを良く受ける。こたえはYesであり、Noで もある。正確には、海外で治療を受けた場合、いったん治療費を自分で支払い、それを日本で保険事務所に求償することにより還付が受けられる、ということだ。還付金額は同 等の治療を日本で受けた場合の点数を基準に算定され、実際に海外でかかった費用は関係ない。申請に必要な書類は医師の診断書、治療の明細、領収書等だが、最寄りの市役所に和英のフォームが用意されているので、事前に入手しておくことをお勧めする。
フィリピンの医療費は日本に比べれば物価水準どおり5分の1程度だ。しかし、日本人クリニックに行ってもやたら高いし(普段は自己負担分しか払っていないせいもあるが)、ちょっと厄介な病気になると、必ずマカティメディカルを勧められ(日本人クリニックの女医さんの旦那がマカティメディカルにいるためではないかと思うが)、このマカティメディカルがフィリピンで医療費が一番高い病院で、日本で治療したのと大差のない治療費を要求される。従って、フィリピンの医療費は日本と変わらないとレポートされるゆえんだ。
し かしながら、健康保険の求償はめんどうだし、医師に書類を作成してもらうのも無料とは限らない。軽い病気であれば自己負担の兼ね合いもあって、実質ほ とんど戻ってこないこともある。しかし、大病をして入院というような事態になったときは大変有効となるはずだ。一方、大病にかかって、多額の現金が 必要となると、それを立て替えるのが困難になる事態もおきえる。その場合は、フィリピンの医療保険に入っておくという手がある。最高支払い額、25万ドルの医療保険が年間、千ドルくらいで入れる。クリニックは限定されるが、キャッシュレスの治療サービスも受けることができる。ブルークロス等が扱っているが、この保険の欠点は民間の保険であるために、年齢があがるとそれにつれて保険料が幾何級数的に上がっていくことだ。
たとえば、最大保障額25万ドルのベーシックな医療保険に対する年間保険料が、51歳~65歳は1000ドル程度であるものが、71~75歳で5000ドル、81~85歳で約1万ドル、96~100歳では3万ドルとなっている。これは純粋な確率計算から来たものと推定されるが、民間だから、日本の健康保険のように赤字というわけには行かないのだ。しかし65歳までであれば、日本の健康保険よりはるかに安いので、日本から住民票を抜いて健康保険を止めて、これらの医療保険に入っている方もある。詳細は下記にコンタクトしてほしい。
高齢になるとこの医療保険では保険料がたまらない。ある70過ぎの人は、もしがんなどの大病になったらすぐに日本に帰って、住民票を復帰して健康保険にはいれば翌日からでも保険が利く、といっていた。どんな保険でも既往症があると入れないが、健康保険は国民皆保険で既往症も関係ないわけだから、うまい方法だと思う。しかし敵もさるもので、不払いの保険料を過去にさかのぼって支払う必要があるらしい。
フィリピンでの命の値段をご存知だろうか。せいぜい、5万から10万ペソだ。交通事故で人を殺してしまっても、その程度のお金で話が済んでしまうのだ。逆に、自分が交通事故にあって死んだとしたら、その程度しか支払われないということになる。任意自動車保険の対人もせいぜい、15万ペソ程度に設定されている(その任意保険に入っている人もほとんどいないようだが)。従って、フィリピンに生活する限り海外傷害保険は必須だ。フィリピンの保険では上限が低すぎて問題にならない。なお、クレジットカードに海外旅行者障害保険がついているが、有効期限は出国から3ヶ月程度なので気をつけてほしい。