虐待の連鎖 2011年5月26日


先日、訪問中の子供達を招待して天々火鍋で食事を取った。その後、私は客とカラオケに出かけたのだが、皆が帰るとき事件は起こった。コンドミニアムの近くまでやってきて、運転をしていたボボイが、強引に角を曲がって、向こうから来た車とすれ違えなくなってしまった。姉のジェーンは狭い道を向こうから車がやってくるのに、なぜ突っ込んでいったのかと、ボボイを責めた。そこで謝ってしまえばいいのに、ボボイはいつものように、なんかかやと言い訳を言った。そこでジェーンが切れてしまい、ボボイにぼこぼこにパンチをくれてやったのだ。CIMG3791s-2

KIANは何かほしいものがあると、それを指差して手に入るまでねだる。私を見ると指差すが、これは抱っこのおねだりだ) 

後から、ジェーンはそのときの様子をパクヤオ選手のようにパンチを浴びせたと、笑って話して聞かせてくれた。メイドのレンは、それを見ていて恐ろしがって泣いていたそうだ。今まで現場は見たことはないが、ジェーンがボボイに張りピンタを30分くらい浴びせ続けたとか、そんな話を何度か聞いたことがある。相手はボボイに限らず、他の甥や姪にたいしても、たまにあるそうだ。普段はあんなに兄弟、甥や姪を思いやっているのに、なぜ時たま鬼のように怒るのか理解に苦しむ。悪さをしても言い訳をして謝らないと頭に血が上って、怒りをコントロールできなくなるらしい。CIMG3857s-2

KIANは私の部屋で遊ぶのが大好きだ。普段は親の部屋にいるから、ここには色々と目新しいものがあって、KIANには宝物のように思えるのだろう。私の孫の手を振り回して部屋中を歩き回っている。

 

 先日NHKで「虐待の連鎖」という番組をやっていた。芥川賞を受賞した有名なシングル・マザーの作家が、息子を虐待してしまうためにカウンセリングを受けていた。彼女は息子が意にかなわないことをすると、怒りをコントロールできなくなり、8時間も殴り続けるという。しかも、それが子供への虐待ということを認識できないでいるそうだ。カウンセラーは彼女から、小さいころ両親に虐待を受けていたことを聞き出した。本人は虐待と思うわず、自分が悪いことをしたからと殴られるのあって、良い子でいようと気をつけたという。そしてまた、その両親も親から虐待を受けていたことが明らかにされていく。親から子へ、そして子からそのまた子へと虐待が引き継がれていくのだという。CIMG3901s-2

(家の中を自由に歩き回ることができるようになったKIANは台所のキャビネットからお気に入りの容器を探し出して、意気揚々と部屋に引き上げていく) 

 一方、ジェーンはどうなのか。以前良く話していたのは、母親に箒や棒で尻を散々殴られたことだ。もちろん何か悪さをしたためだが、彼女は泣かないで必死に歯を食いしばって耐えたと、笑いながら話していた。現在。彼女の母親思いには頭が下がるようで、決して母親を恨むようなことはない(ちなみにジェーンの母親は旦那と死に別れてからは、女手一つで4人の子供を育てた苦労人だ)。しかしながら、ジェーンは、この虐待ともいえる行為をしっかり受け継いでいるようだ。しかし件の子供達はジェーンの怒りを虐待と受け止めず、少しもうらむこともなく、心から慕っている。どこから虐待で、どこからがしつけなのかの判断は難しいところだろうが、親はえてして自分の感情をコントロールできずに、子供に暴力を振るうのを、しつけと称して言い逃れをしているような気がする。
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(家中を歩き回って疲れたのかおもちゃの車に乗ってヤヤに汗を拭いてもらっているKIAN。興味は乗ることだけにはとどまらず、車をひっくり返して構造を研究している。 

 

人は多かれ少なかれ、虐待の連鎖のような親の負の遺産を背負って生きているのではないだろうか。その遺産が人格一部をを形成しているのだろう。切れ安い人の親はきっと切れやすかったのだろう。仲の良いやさしい夫婦の子供はやはり優しい。子供の人格を形成する上でいかに家庭環境が重要であるかだ。たとえ夫婦の一方に虐待の連鎖の気(ケ)があったとしても、一方の親が子供を暴力から守るだろう。NHKの番組の場合は両親とも虐待の連鎖を背負っていたのが悲劇だったようだ。そして彼女自身はシングル・マザーなので歯止めをかける身内がいない。NHKはこの虐待を止めるには彼女自身が虐待を受けていたこと、そして自分が子供に対して虐待をしていることを認識することが重要だと説く。CIMG3934s-2
 
(気に入ったものを手にすると得意げに差し出すKIAN。これを受け取るとすぐに返してよこせとせがむ。それを無視して取り上げると、大騒ぎになってしまう) 

 しかし、親から受け継いだ遺伝子をそう易々と変えることができるのだろうか。もちろん、否である。だから子育ては夫婦の役目なのであって、劣性の遺伝子(虐待)は優性遺伝子により封じ込められなければならないのだ。しかし、究極の核家族であるシングル・マザーという状況そのものが虐待という遺伝子を封じ込めることができず、それが猛威を奮って、子供が犠牲となっているのだ。きっと、この子も将来、親の負の遺伝子を受け継いで、いじめや虐待を行うことになってしまうのだろう。

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DVDのスイッチを自分で入れて曲にあわせて踊りだすKIAN

 

 私は親に怒られたり暴力を振るわれた覚えがまったくない。また、逆に子供に対して怒ったり、殴ったりした記憶もほとんどない。しかし、妻は良く金切り声をあげて子供をしかっていた。いや、しかっていたというより、怒(イカ)っていた。私には幼い子供に対してなぜ、そのように怒るのか理解できなかった。これはしつけだと、いろいろ理屈を言うが、それはその怒りを正当化しようとするだけであって、まず怒りありきなのだ。だから、こんなときは私が子供達の避難所になったのだが、夫婦とは所詮そんなものなんだろう。しかし、私が下の子供達が小学校から高校に通うころ、私は、フィリピンに単身駐在していたために、そのバランスが崩れてしまった。年頃の男の子3人を育てるのは、妻にとっては荷が重すぎた。下の二人の子供達が男として成長を始めたころ、私が、そばにいてやれなかったことが、人生の最大の悔いとなっている。

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 (アイスクリームを買ってきてやったら、それを独り占めにして喜ぶKIAN。それをベッドに下に一所懸命隠していたが、人にとられまいという意識がすでにあるのだろうか。それとも自分の食料を棲家に隠すのは本能なのだろうか)

 

 さて、ママ・ジェーンのKIANに対する対応はどうなるのだろうか。やはり、まず大切なのは旦那の存在だ。国家警察の幹部でありながら優しさの権化のような彼は、ジェーンがKIANの奔放な行動や要求に対して苛立ちを見せると、そっとKIANを抱き寄せてかばうそうだ。それにヤヤ(子守)が昼間はずっと面倒を見ているからジェーンは自由に行動ができて、日本の母親のようにストレスはたまらない。いずれにせよ、おじいさん役の私も含めて多くの人が周囲で見守っているので、母親一人で悩んだり、苦しんだり、挙句の果てに怒って虐待に及ぶという心配はない。虐待の連鎖を断ち切るには、子供を母親一人で育てるのではなく、夫婦、さらに家族で育てるのが一番で、そして、それが、そもそも人間社会の仕組みというものなのだ。

 

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