フィリピンで留学型の英会話学校がブームになって久しい。フィリピン全土に約700校、生徒数500~700人規模の学校もあるというが、これらは 100%が韓国資本だそうだ。これらの英会話学校は宿舎を併設し、韓国、台湾、日本などからの10代~60代の生徒に、1週間~1年程度、英語尽くめの生活を提供する。料金は3食、宿舎、マンツーマンの英会話授業付で1ヶ月10万~20万円程度。アメリカなどへ留学する5分の1~10分の1だという。英会話が出来なければ就職もおぼつかないという韓国からは年間5~10万人の留学生がフィリピンに押し寄せているという。
今回訪問した EIEN英会話学校はマカティから北にちょっと離れたオルティガスのビル街にあるが、オルティガスだけで40の英会話学校があるという。これは1990年代のビル建設ラッシュの時に大量の高層ビルが建設された結果、借り手市場になり、安い物件が大量に出たためと推測される。
EIENは韓国資本ではあるものの、本社を日本に置き、日本のマーケットを中心に生徒を募集している。したがって、生徒比率は日本、韓国、台湾がそれぞれ 30%、その他が10%だ。生徒数は現在、60名程度だが、昨年までは200名程度在籍した。来年になれば、韓国経済が復興し、再び大幅に生徒数が増えるものと見込んでいる。
社長の李さんは東大の大学院を終了した後、東大で社会学の講師をする傍ら、2006年にEIENを立ち上げたエリートだ。英会話の次はフィリピンで日本の介護老人を対象とした介護ビジネスを立ち上げようと計画している。EIENのURLは http://www.eienjapan.com/
学校の入り口はいかにも韓国式で派手派手だ。内部の設備も決して美しいとは言いがたいが、充分清潔で機能的だ。マンツーマンの教室も1.2m角程度で極端に小さい。日本人が経営したらこのような感覚は生まれてこないと思う。李さんによると、日本人経営では決してこの価格は実現できない、だから、フィリピンの英会話学校は100%韓国人経営なのだという。現在、63の教室があり、したがって63人の先生が働いている。もちろん先生は全員フィリピン人だ。毎日6時間、マンツーマンの英会話の授業を受けるそうだが、いやがうえでも英語が上達するだろう。そして外へ出れば、英語尽くしの世界が広がり、実戦の場にも事欠かない。
14階と15階が事務所、教室、自習室および食堂となっている。7階、16階、17階は居室で、一人、2人、3人部屋などがある。元々コンドミニアムであるものを改装して学校にしたものだ。
韓国人のフィリピンに対するイメージについて李さんに質問してみた。フィリピンで英会話を勉強しようと日本人に声をかけたとしても、10人中9人は、「あんな危険なところで?」と拒否反応を起こすだろうが、韓国も同じだったと、李さんは言う。しかし、1990年代、フィリピンで英語を勉強した人が見違えるように英会話がうまくなって帰ってきて、安い、近いということで、われもわれも押し寄せるようになったのだそうだ。フィリピンが危険などというのは単なるイメージであって、実際に行ってみればすぐにそんなイメージは払拭される。だから韓国からは、年間70万人の観光客が訪れ、日本をはるかに凌駕するようになっている。日本でも何かのきっかけで、そんなブームが来ないものかと期待しているのだが。