兼ねてから取りざたされていた禁煙令が大統領の肝いりでいよいよ7月23日から全国的に施行された。すべての公共施設で禁煙、もちろん駅や公園、道路も含まれる。かつてマカティ市でも市条例として禁煙令が施行された歴史はあるが、いつのまにかうやむやになり徹底とは言い得ないものだった。しかしながら違法薬物の取り締まりで見せ付けられたように、世界的なブーイングにもめげない大統領の強硬姿勢からか、市民は唯諾々と従っているようだ。麻薬のように超法規的殺人とまではいかないにしても高額の罰金を課しており(一回目が5百~千ペソ、2回目が千~5千、3回目で5千~1万)街からタバコが一掃されたという感がある。
それでかわいそうなのがタバコの一本売りで生計を立てていたベンダーだ。街の人が集まるところにはかならずタバコが売りがいた。、20本入りのタバコ一箱を60ペソで仕入れて、一本、6ペソで売り、一本あたり3ペソのもうけ、一日、100本(5箱)売れば300ペソの収入となり、一家の生計をまかなっていける。禁煙令以降、これらベンダーは街から姿を消した。ちなみにサリサリやスーパーではタバコは売っているはいるが、その場では禁煙となっている。
究極の小売、タバコのばら売りは公共施設のいたるところで見られた
レストランなどで喫煙室を設ければ喫煙可能だが、そこは換気装置のほかに他のエリアとは壁とドアで仕切られ、かつトータル面積の20%以下という厳しい規制があり、簡単に喫煙席を設けるわけにはいかない。どこかの国では店のオーナーの反対などで規制がとんと前に進まないがフィリピンは大統領の鶴の一声で実行され、何の騒ぎにもなっていない。レストランや喫茶店ではどこも誇らしげに禁煙の看板を掲げている。
レストランの前には誇らしげにNo Smokingの張り紙がある。ちなみにRA9211とはRepublic Act 9211の略で法令第9211号という意味
それで喫煙場所を探してみると、ほとんど見当たらない。先週、ようやく我が家のあるコンドでその看板を発見した。「Designated Smoking Area」と書かれた立て札を見て、キアンに「Designated」とはどういう意味かと聞かれて説明に窮した。日本語であれば「指定喫煙所」となるのだろうが。一方、日本たばこ産業(JT)は22日、フィリピン2位のたばこメーカー、マイティの資産を総額526億ペソ(約1200億円)で買収すると報じた。こんな状況のフィリピンでタバコ事業を買収するなんてどぶに金を捨てるようなものではないのか。いくら日本の市場が縮小されつつあるとはいえ、フィリピンは縮小どころか消えてなくなりそうな状況なのだ。
Designated SMOKING AREA(指定喫煙所)という立て札を見ることはめったにない
一方、ドテルテ大統領の施策が矢継ぎ早に発表されている。8月5日「国立大学の教育無償化」、ハイスクールまではすでに無償なのだが、国立大学まで無償にするというのだ。巷では、そんな予算はないとか、大学に進む子弟はすでに富裕であり、格差是正どころか格差を広げるだけとか意見があるが、とにもかくにも英断であることには間違いないだろう。
8月15日はウーバー営業停止、16日はクリークサイドの退去、これらの出来事は別途このブログで報告した。
8月17日は「パタヤスのごみ集積場閉鎖」のニュース。フィリピンではごみは焼却せず、野積みだ。ここには首都圏のごみ約2700トンが毎日集められているが限界に達しているというのだ。今年の12月31日をもって閉鎖としているが代替地は見つかっていない。また、ごみから生計を得ている2000人の補償問題もある。これらの人々はごみからペットボトルなどの売れるごみを集めて生計を立てている人たちだ。かつて、フィリピンの代名詞だったスモーキー・マウンテンは今でも健在なのだ。パヤタスのゴミ投棄場 2009年12月24日
さらに8月18日は首都圏で麻薬容疑者ら25人を殺害、その前日にはブラカンでは32人を殺害するなど、ドテルテ旋風は留まるところを知らない。
しかしながら、彼の信任度は90%近いという驚異的な数字を維持している。フィリピン国民の大多数は大統領の強力な指導力で住みよい国の実現を望んでいるのだ。どこかの大国とは大違いだ。