日本の学力低下 2010年2月10日


先日NHKで日本の子供の学力低下が問題となっていると報道されていた。とある19歳の女性は両親が離婚して母親が毎日遅くまで働いていて、妹の世話や家事で勉強する暇がなかった。わからないことがあっても教えてくれる人もいなかった。そのため、学校の授業について行けず、結局高校を中退して働いた。しかし職場でも簡単な算数ができず、学力不足ゆえの疎外感のため、将来の人生が描けないでいるという。

 その例えとしてあったのが、「面接で1か月分の給与の額を聞かされて、1年でいくらもらえるのか即座に計算できなかった」だった。今、仮にフィリピンで巷の人に、「1ヶ月の給与が12000ペソで、1年で幾らになりますか」と聞いて、何人の人が144000ペソと暗算で即座に答えることが出来るだろうか。 10人に一人いればいいほうだろう。となると、フィリピン人は皆学力がとてつもなく低いのだろうか。

CIMG7902s-4パソコンに興じる子供達

 近所のサリサリ・ストアーで2本のサンミゲルビールを買って帰るのが私の毎日の日課だが、2本のビール(1本ビン付で21ペソ)に氷5ペソを買って、50 ペソ支払ってお釣りがいくらか、売り子は計算機を使わないとわからない。21+21+5=4750-47=3、を一々計算機で計算するのだ。だからボタンを押し間違えて、とんでもない結果になっても、暗算でわからないから評価できず、計算機に従ってお釣りをよこそうとする。

サリサリのお姉さんではさもありなんというところだが、かつて、フィリピン随一の法律事務所、シッシップ・サラサールの会社法専門のエリート弁護士と打ち合わせを持った時のことだ。フィリピンの会社法の説明を受けているとき、彼女は簡単な計算を黒板で試みた。一応エンジニアーを専門とする当方としては、いとも簡単な計算だったが、彼女はわけがわからなくなりパニックに陥ってしまったのだ。こんな優秀な弁護士でも、こと計算となると日本の小学生並みなのだ。

 私の知り合いに計装の施工会社の社長さんがいるが、彼がアメリカの大学院に留学していたときの話だ。かれはもともと数学が苦手だったが、アメリカの大学院では数学に関して最優秀の学生だったそうだ。だから、アメリカ人は数学がまるでだめだと笑っていた。

CIMG8110s-4マクドナルドのドライブスルーのお姉さん

 何故、欧米系の人々は数学ないし算数が苦手なのだろう。もちろんすべての人ではないだろうが、一般的にそう感じられる。フィリピンの算数/数学の教育は小学校から英語でやるから、教育の仕方は欧米系と一緒だろう。これは一体何だろう、と色々話し合ったことがあるのだが、小学校で反復練習した九九に原因があるのではないかという結論に至った。英語で九九を言うと、日本語ならKuku hachijuichiというところをNine times Nine equal Eightyoneとなり、いかにもまどろっこしくてリズム感がない。こんなものでは何度反復しても憶えられないだろう。これが算数のスタートで決定的なネックとなり、大多数の生徒が暗算で計算するのを放棄してしまうのだろう。特に現代は計算機があるので何とか繕うことができてしまいあきらめるのも早いのだ。

 一方、インドの九九は19×19まで暗記するそうで、インド人は算数にとんでもない能力を有している。このように世界は広く様々で、たかが暗算で計算が出来るか出来ないかで人間の価値を云々すること自体がおかしいと思う。そこで冒頭の女性に言いたい。算数が弱くて将来の展望が描けないのだったら、是非フィリピンに来て欲しい。簡単な計算でも暗算で出来ないのは普通だし、フィリピンにはそんなことで人をさげすむような人はおらず、皆明るく仲良く生きているのだ。どうも日本はこのようなハンディを持っている人々を冷たくあしらい、世間からつまはじきにするという傾向が強く、無縁社会を加速させているような気がする。

CIMG8034s-4タバコを一本づつ売っているお兄さん。馬鹿でかいライターを持っていた

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