マニー・パクヤオ対オスカー・デラホーヤの戦い2008年12月7日


 この日、127日の昼過ぎ、マニラの街は人影もまばらでひっそりしていた。ミンダナオのMILF(イスラム系反政府武装組織)と国軍との戦いも申し合わせたかのように全面休戦となり、犯罪の発生もゼロ、警官にとっても安心できる一時となったようだ。それは、フィリピンの国民的英雄であるWBCライト級チャンピオンのパクヤオと伝説の王者デラホーヤのノンタイトル12回戦がラスベガスで行なわれたからだ。イスラム戦士も犯罪者も軍隊も警官もほとんどすべてのフィリピン人がテレビの前に釘付けになり、戦争や犯罪に構っているどころではなかったのだ。これをパクヤオ効果というそうだ。CIMG7710s-4  パクヤオは現役の世界チャンピオンで、しかも4階級制覇という偉業を成し遂げたボクサーとして油の乗り切った29歳だ。一方、デラホーヤはすでに39 (新聞では35歳とも書かれているが、どちらが正しいかは不明)、6階級制覇という偉業を成し遂げたとはいえ、7年もの間、試合から遠ざかっているとも言われ、結果は火を見るより明らかだった。(写真はテレビで映し出されたラスベガスの夜の街並みとリングでフィリピン国家を歌う歌手)
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 パクヤオのファイトマネーは5億ペソ(10億円)というフィリピンでは天文学的数字だそうだ。こんな大金をどうやって使うのか気になるところだ。先の 20075月に行なわれた統一選挙でミンダナオのジェネラルサントス市から下院議員に立候補したが惜しくも落選した。選挙には1億程度のお金がかかるというから、このお金で大統領選にでも打って出ようというのかもしれない。

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 ラスベガスのMGM GRANDというところで行なわれたこの試合はノンタイトル戦であるにもかかわらず、前座で世界チャンピオン戦が二つ行なわれるほど。この試合に対する注目度がうかがい知れる。フィリピンの各所では映画館や体育館に特設会場が設けられ、500ペソでこの試合の実況中継を見ることができる。また、マニラのカラオカン市では市長が無料で十数か所に特設会場を設置し、無料で市民に観戦を楽しんでもらうというしゃれたことまでやってくれた。国軍では本部敷地内の体育館に大型スクリーンを設置して兵士に観戦させたそうだ。

CIMG7751s-4  一方テレビ中継はこの試合が終わってから始まるというもので、興味が半減するが、わざわざ500ペソ払って観に出かけるのも億劫で家でテレビ観戦ということになる。実際何時から始まるのかは試合の進行状況によるので、10時ごろからつまらない前座を見る羽目になってしまう。ラウンドが3分で合間のコマーシャルが4分とやたらコマーシャルが長い。パクヤオの試合がやっと始まったのは午後の2時前で、その時は携帯で知らせが入ってパクヤオが勝った事が知れ渡ってしまっていた。余計なことをするものがいるものだと腹立たしいこと仕切りだった。

CIMG7760s-4  さて試合が始まってみると、4分のコマーシャルが8分に延びてしまっている。3分のラウンドの合間に8分では間のもたせようがない。高い放映権を支払っているのだから仕方のないことかもしれないが、それにしても長い。一方試合の方は7ラウンドからパクヤオの一方的なものとなり、8ラウンドが終わったところでデラホーヤがギブアップしてしまった。いくら往年の名選手とはいえ、39歳ではその力の衰えは明らかで、パクヤオの早い動きには全く付いていけず、ワンサイドの試合になってしまった。(赤いトランクスがパクヤオ)

CIMG7783s-4  デラホーヤの顔はパクヤオの鋭いストレートパンチで腫れ上がり、まさに敗者の顔だった。一方パクヤオは勝利を知ると、しばしリングのポストで神に感謝の祈りを捧げ、その後両手をあげて喜びを全身で表していた。

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 テレビではしばらくの間、リングの周囲に陣取るフィリピン人の喜びの様を映していたが、かなりのフィリピン人がこの試合を見るためにアメリカに渡ったらしい。ちなみにリングの上でパクヤオを抱え上げていたのは、なんとフィリピンのデ・カストロ現副大統領だったそうだ。パクヤオがフィリピンに帰ってくるとアロヨ大統領の祝福を受けるためにマラカニヤン宮殿を訪問するのが恒例で、パクヤオは今やフィリピン国民にとって紛れもない伝説の英雄なのだ。

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