マニラの高層建築は鉄筋コンクリート製 2010年3月14日


メトロマニラの中心であるマカティはここ15年ですっかり高層化され、国際都市の仲間入りをしている。これらほとんどの高層ビルは1990年代後半に建設されたものだが、これら近代的なビル群は鉄筋コンクリート製で、日本のように鉄骨ないし鉄骨鉄筋コンクリート製のビルはほとんどない。

 マカティに建てられた最初の高層ビルはマカティ・アベニューとブエンディア通りの角に建っているパシフィック・スタービル(左下写真)で1989年に完成した。これだけは鉄骨製だ。さらに最初の高層コンドミニアムが同じごろアヤラ・アベニューに建設されたパシフィック・プラザ(右下写真、左側)で、このころは海外の設計者のデザインによるものが多く、多分鉄骨製だろう。その後、DMCIなどの大手建設会社が鉄骨製の設計に対して鉄筋コンクリートがはるかに安いと設計変更を施主に提案し、鉄筋コンクリート製の高層ビルが定着していった。

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何故鉄筋コンクリートが安いのか。フィリピンに製鉄所はないから鉄骨はすべて輸入される。一方、セメント、砂利、砂はフィリピンで調達できる。それに人件費が安いから現場で手間暇のかかる鉄筋コンクリートの方がはるかに安く上がる。しかも、マカティの地盤は日本の都市のようにふわふわな粘土の沖積層や比較的固い砂利層の洪積層ではなくて、まるで岩盤のような、いわば砂岩のような地層だ。だから地震があってもあまり揺れず、重量の大きい鉄筋コンクリート製のビルでもしっかり支えてくれる。かつて自社ビルを建てた折、たったの数メーターの深さの地盤をバックホーで掘削していたら火花が出たくらいだ。数十メートルの掘削も土留め無しで掘っているし、マカティで杭を打っているのを見たことがない。ほとんどすべてのビルの基礎は直接基礎で基礎工事が極めてシンプルだ。

 今、マカティは再びビルの建設ラッシュだが、ほとんどのビルはコンドミニアムだ。私の事務所があるパソンタモ通りを南に下り、パサイ通りを左に折れて、ドーシットホテルに向うビル街の外周コースを歩くと、交差点ごとに高層のコンドミニアムが建設中だ。そのすべてが鉄筋コンクリート製なのだ。

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筋コンクリートはご存知の通り、階ごとに柱や梁の鉄筋を組んで、支保工と型枠をつくり、コンクリートを流し込んで出来上がり。それを繰り返し、上へ上へと上がっていく。日本のように一気に鉄骨を組み立てて、あっという間にビルの骨格が出来上がるのと違い、極めてのろい。しかし、上層で骨格を作っている間に、下層階は仕上げに入っているなど、並行して工事が出来るの、建設期間はそんなに差がない。また、さほどの重量物を運ぶ必要が無くて、タワークレーンもちゃちで、いまだにT字型のクレーンが主に使われている。

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 コンクリートの柱、梁、床の骨格が出来ると、壁はほとんどの場合ブロックで作る。ブロックは安いし、断熱、遮音効果もあって、中々優れた材料だが、重くて手間がかかるのが難点だ。しかし、地盤が良く、手間賃の安いフィリピンにはぴったりだ。それに現場で積み上げていくので、どんな形でも自由自在に作れて、精度の心配もない。だから実石さんの作るブロックが飛ぶように売れわけだ。

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マニラの高層ビル群を眺めてみると、ここ15年の様変わりに感心する。写真下の中央がシャングリラホテルで、後方がサルセド・ビレッジ及びレガスピ・ビレッジでマカティの高層ビル群の中心地だ。左隅の低層ビル街はコマーシャルエリアでデパートやモールだ。右の写真はアヤラ通り沿いに立ち並ぶ高層ビル、手前はマカティ・メディカル(病院)

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マカティの東、かつての軍の基地を払い下げて開発中のフォート・ボニファシオ・グローバル・シティのビル群。2000年代の開発の目玉だが、急ピッチな開発のために空室が目立ち、値下がり傾向にあるそうだ。右の写真の手前は名門マニラゴルフ。マカティとフォートに挟まれ、都会の一等地にあるゴルフ場で、値下がりが目立つゴルフ会員権の中で、ここだけは高値を堅持しているそうだ。

CIMG9398s-4さらにマカティとフォートの間には広大な高級ビレッジのフォルベス・パークとダスマリニャス・ビレッジが広がる。大使公邸や商社の支店長、そしてフィリピンのお金持ちが住む別天地だ。右の写真はマカティに続く高層ビル群のオルティガスだ。ここは、写真手前のアジア開発銀行を囲むように1990年代後半、瞬く間に高層ビルが建ち並んだ。

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