フィリピーノは何故時間を守らない 2010年11月25日


フィリピーノ・タイムとは時間通りに来ない、いつ来るのか、はたまた来ないのか、当てにならないことを言う。フィリピーノは一般に時間に遅れることを恥じない、遅れても詫びない、また人が遅れても責めたりしない、平気でいつまでも待つ。役所でもたくさんの人が文句も言わず自分の順番をひたすら待つ。遅いとか、割り込んだとか、文句を言っているのは外国人だけだ。エアコンの取り付けや家具の配送など、約束した日に来ただけでもラッキーで、配送を待つために一日中家に待機しなければならない。

 女の子をデートに誘ってもまともに来ることはありえない。夕方5時ごろ携帯で、6時に食事をすることを約束したとしても、やってくるのは6時半から7時だ。何とか彼女を射とおそうとする当方は、待つのも甲斐性とひたすら待つしかない。歩いても10分くらいのところを「On the way」とメールを送りながら、それから30分くらいかかる。一体何なんだと、怒ってはいけない。それは、有利に恋愛ゲームを進めるための彼女なりの作戦なのだ。

CIMG3710s-1 (先日、日本から帰ってきた折に飛行機から撮影した夜のマニラ。この日は快晴で夜景が美しかった)

 以前、約束の時間に遅れそうなのでマニラ市内を車で飛ばしたことがあった。約束の相手はフィリピーノだが、一旦約束した時間は万全を尽くして守るのが日本男児だ。そこで隣に座っていた相棒のジェーンが切れた。いわく「少しくらい遅れてもフィリピーノは気分を害しない。こんなに飛ばしたら事故を起すかも知れない。命と約束をどっちが大事なの。少々遅れたからと言って死ぬわけじゃないでしょ!」。たしかにその通り、約束の時間に遅れたとしても命をとられるわけではない。交通事故の方がよほど怖い。しかし、約束の時間に遅れると思っただけでパニックになってしまうのだ。

 もう大分前の話になるが、福知山線の脱線事故で100人近い死者を出した。この話を相棒のジェーンにしたら、「日本人は、本当に馬鹿だ。たった数分の遅れが出ないようにとスピードを出し過ぎて、おまけに脱線して百人もの人を死なすなんて。数分の遅れが何なんだ。人の命を一体何だと思っているんだ」まさに仰るとおりで返す言葉がなかった。それ以来ジェーンは「日本人は、親切で、頭が良くて、お金持ち」というフィリピンにはびこる信仰の「頭が良くて」という部分に疑問を持ったようだ。

CIMG3271s-1(プレートナンバーの末尾の番号により、特定の曜日に走ることを禁じた法律を路線バスにも適用するということになり、バス会社は採算性を著しく阻害すると猛反対をした。そして新規則実施の当日、渋滞の緩和には何の役にも立ってないと批判の声が上がっている)

 それにしてもフィリピーノの時間のルーズさは許せない。そもそもタイム・マネージメントが出来ていない。スケジュール・コントロールなんて言葉は死語のようだ。マイペースで仕事をして、終わった時が完了予定で、いついつまでに終わらせるためにはどうすればよいのか、などとは考えていないようだ。フィリピンにやってきた日本人は、このことをフィリピン人が劣っているのだと感じる。しかし、日ごろ優秀なフィリピン人に舌を巻くことが多い当方は、何故そうなのかと考え込む。

 フィリピンを含む東南アジアには四季がない。1年中暖かく、バナナやココナッツは季節に関係なく、いつでも取れ、田植えも水さえあればいつでもできる。その時のお天気次第で、いついつまでにやらなければいけないということはない。そして寒い冬が無いから、特に冬支度というのがいらない。寝るところがなければ外で寝ても凍え死ぬことはない。一方、温帯に住む人間は冬の食料を蓄え、薪を積んで長い冬に備える。田植えの時期も稲刈りもタイミングよくやらないと冬の備えが出来ない。それが出来ないとそこには死が待っているだけだ。だから我々温帯人は「時間に遅れる」と思っただけでパニックに陥ってしまうのだ。 

 フィリピーノには、いついつまでにこれをやらなければ明日は無いというような悲壮感とは無縁だ。そんな生活を数十万年やってきて、急に現代になって「タイム・イズ・マネー「ビジネスはスピード」「ジャスト・オンタイム」などとせかしてみても、さほど真剣に受け取れないのはやむを得ないことかも知れない。約束した時間に行かなければならないなんて彼らにとって無視しうる些細なことなのだろう。

CIMG3736s-1(1114日に行なわれたボクシング世界タイトルマッチでフィリピンの英雄パクヤオ選手は勝利し、前人未到の快挙、8階級制覇を成し遂げた)

 そもそも人類はアフリカの熱帯で発生し、赤道に沿って世界に広がった。北の寒い地域に向うのは随分と後のことだ。だから人間の体は元来熱帯向けに出来ていて、寒いところではリウマチなどいろいろな持病が出てくる。特にお年寄りにとって寒暖の差は辛い。熱帯の気候はとても体に優しく、人々はストレスなく伸び伸びと生きていられる。それは肉体だけではなく、精神的にも言えることで、果物や作物が1年中取れ、寒暖差の少ない熱帯こそが人類の故郷なのだ。

 退職してゆったりと生きていくならば、ここフィリピンで彼らの生きかたを学ぶべきだ。そうすれば、きっと幸せな老後をすごすことが出来るだろう。先日ジェーンが日本に行った折、横浜駅で朝のラッシュに遭遇し、サラリーマンが皆走っているのをいたく興味を持って眺めていたのが思い起こされる。「日本人、そんなに急いでどこへ行く」と。

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(マカティメディカルセンターのクリスマスの飾り。イエスキリストが天使となって宙を舞っている。我が家のクリスマスの飾りはキアンが喜ぶようにサンタが宙を舞っている) 

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