拙著、「金なし、コネなし、フィリピン暮らし」の133ページの囲み記事で紹介した、五つの「あ~ない」はフィリピン人と付き合っていく上での心得を端的にまとめた、先達の伝説的名言だ。すなわち
「あせらない」、「あきらめない」、「あたまにこない」、「あてにしない」、「あまやかさない」だ。これにあやかって、いつも気になるフィリピーの気質を、五つの「あと~」にまとめてみた。
1.なにか頼むといつでも答えは「あとで(ママヤ)」、何かしていて忙しい訳でもないのに、何で「あと回し」なのか理解に苦しむ。そしていつやるのかと思ってみていると、いつまでもやらない。それで催促すると、また、「あとで、(ママヤ)」と同じ答えをする。なぜやらないのかと、責めると、「しつこい、(マコリット・カ)」と逆襲される。そして、期限ぎりぎりになって、あわてて始めるが、もはや手遅れとなっていることが多々ある。あるいは、いつまでもやらないので、仕方がないから、自分でやってしまう。件の敵は、きっと、「はじめから自分でやればいいのに」と、思っているのだろう。
ちょっと風邪気味で大きな鼻ちょうちんをつけてぐったりとして抱かれているKIAN
2.遅れてきたり、忘れたり、何か失敗をしでかしても、いかにもそれがはじめから必然であって、自分に責任はない、という「あと訳(あとからするとってつけたような言い訳)」をする。例えば、書類を日本に送ってもらおうと、タイプした日本の住所を渡して郵便局に行かせたら、戻って来た伝票の住所が違う。町名が抜けていたのだ。彼いわく、「住所が長すぎるので落ちてしまった、郵便番号があるから問題ない」と、それがミスだとは決して認めようとしない。確かに書類は届いたから良かったものの、送り先不明で戻ってきたら、とんでもない費用と時間のロスだ。ちなみに日本へのEMS(国際スピード郵便)の料金は717ペソで彼らの2日分の給与に匹敵するのだ。
お気に入りのテレビ番組を興味深げに眺めるKIAN
3.サリサリやトロトロではつけ売りが一般的で、個人的に何か売っても、その場で現金で支払うことはほとんどなく、「あと払い(ウタン)」が当たり前だ。お金を貸したらまず戻ってこないと思ったほうが良いが、この「あと払い」も踏み倒されてしまうことが多い。こんな商売をやったら儲かる、農地を買ってこんな作物を作ると儲かるから、まず金を出してくれ。儲けは「あとで払う」から、と数万円から数十万円の出資を持ちかけられた経験をお持ちの方が多いと思う。そして実際に出資金の配当あるいは返済をしてもらった人は果たして何人いるだろう。くれというのは恥ずかしいから、「貸してくれ」、あるいは「出資してくれ」というが、実際はもらったものと思っていて、それによって自分達の生活の糧を稼ごうとしているだけなのだ。彼らにしてみれば、「本当に戻ると思っていたのか」と、心の中であきれているのだろうが。
ヤヤ(子守)もKIANと一緒に楽しそうにテレビに見いっている。大人と1歳の赤ちゃんが一緒に楽しむ番組は一体なんだろう
4.フィリピン人の時間のルーズさにほとんどの人は頭に来た経験があるだろう。その原因はさておき、約束した時間をとうに過ぎているので、電話で「いつなったら来るのかと」催促すると、決まって「あと少し(マラピット・ナ)」と答える。そしてすぐ近くに来ているはずなのにさらに30分も現れない。歩いても10~20分くらいのところを、なぜ30分もかかるのだ。この「あと少し」を決して信じてはいけない。いつかそのうち来るだろうと、マイペースで他の事をしながら気長に待つか、自分も遅れていくことだ。
KIANの笑顔はまるで天使だ。すべての大人を魅了する。
5.事務所や部屋をフィリピーノが使ったらすぐに分かる。なぜなら、パソコンやテレビを使ったら、そのまま「あと片付けをしない」ので、色々な設定を自分でやり直さなければならないのだ。人のものを使ったのだから、使わしてくれた人が使いやすいように「元に戻しておこう」とは決して思わない。「やったらやりっぱなし」が、フィリピン流だ。これを責めると、やはり「マコリット・カ」逆襲される。「親切心で貸してやったのだから、ついでに元へ戻す位のことを自分でやって何が悪いのか」と。
それが数秒後には悲しげな顔に激変、そしてまた数秒後には再び笑顔が戻る
フィリピン人は奥が深くて理解するまで数十年の月日を要するようだが、我々日本人にとってネガティブな面ばかりではない。愛すべきフィリピーノを大分こき下ろしたので、フィリピーノの心に宿る日本人にはもはや失われた「五つの愛」を紹介する。
①切っても切れない家族の深い絆、家族愛
②お年寄りと赤ちゃんを心から愛し、大事にする、弱者への愛
③自分の食べ物がなくてもご馳走で人をもてなす心、隣人への愛
④その日、家族一同が食事をできたというだけで幸せを感じる感謝の気持ち、神への愛