私がフィリピンに始めて足を踏み入れたのは1989年の初頭、そして、その年の8月から駐在を開始した。そのころの記憶を頼りに20年後の現在との物価の比較をしてみた。また同時に日本の価格も併記して、後述する物価10倍原則や比日の生活レベル格差等について考察してみた。なお、1990年ごろは1ペソが5~6円で、現在は約2円だ。なお、これらは正確な統計に基づいたものではなく、あくまでも私の記憶と知識の範囲内のものなので、正確さを欠いている部分は容赦願いたい。なお、日本の物価は私がほとんどフィリピンに暮らしていたことから良く把握していないが、ここ20年の感覚的平均値を記載した。
1990年 2010年 日本
ペソ 円換算 ペソ 円換算 円貨
大卒初任給/月 2500ペソ 1万3千円 1万ペソ 2万円 20万円
ガソリン/リッター 8 40 40 80 110
大衆車 35万 175万 80万 160万 120万
ジープニー初乗り 4 20 7 14 (バス)250
タクシー初乗り 12.5 62 35 70 600
米/Kg 8 40 35 70 400
鶏肉/Kg 90 450 120 240 1000
コンドミニアム/m2 2万 10万 10万 20万 50万
ショート 1300 6500 5000 1万 ?
ジープニー/タクシーや鶏肉の奮闘振りが目立つが、車はほとんど輸入部品の組み立てだから、日本の物価にリンクする。全体的な物価については、ペソ換算だ とこの20年であらかた4~5倍に値上がっているが、円換算にするとせいぜい倍程度だ。給与も倍近くになっているので、生活水準はあまり変化していないと いえる。
しかし、巷には日本製の新車があふれ、数百万ペソもするコンドミニアムが飛ぶように売れている。これはOFWの活躍や中間富裕 層の成長の証に他ならない。このように都市部の生活水準は確実に上がっているものの、スコーター(スラム街)や地方の生活は何の変化もないようだ。
ちなみに全国的の給与水準は、一家族6000ペソ/月程度が最低の生活水準を維持するのに必要といわれるが、国民の半分近くがそれ以下の収入だそうだ。今 でも大卒の経験者でも1.5万~2万ペソ(3万~4万円)程度で充分雇えるし、役職付でも2~5万ペソ(4万~10万円)程度の給与が大半だ。先日アキノ大 統領の給与が新聞に載っていたが税込みで9万5千ペソ(19万円)、手取り6万3千ペソ(12万6千円)という、外国では考えられない破格の安月給だ。
車、ガソリン、電化製品などの輸入品を除く生活必需品の価格は日本の約5分の一と思って間違いない。だ。そして1ペソは2円だから、値段を言われたらまず 2倍して円に換算して、さらに物価差の5倍をかけて、高いか安いか判断すると良い。もっと簡単に言うと、2×5=10倍すればよい。例えば、100ペソと いわれたら、10倍して1000円と考えれば即座に高い安いが判断できる。ただし、輸入品は2倍のまま、レストランでは5倍となる。
ち なみに給与水準は日本の10分の一だから、サラリーマンにとって日本の方が2倍豊かだといえる。しかし最近では20万円の初任給にありつける人はかえって 少数となっているかもしれないので、一律に日本が倍豊かとはいえないかもしれない。もし、日本で給与をもらってフィリピンで暮らしたら、給与格差の2倍と 物価差の5倍、すなわちフィリピン人に比べて10倍豊かな生活ができるということになる。
このことは企業の駐在員か年金生活者ならば実 現できることだ。高級コンドミニアムに住んで高級車を乗り回し、いつも高級レストランで食事をしていたら、日本とかわらない生活費が必要だろうが、普通の 生活をしていたら、余裕のある生活をエンジョイできる。特にメイドやヤヤ(子守)あるいは介護婦を住み込みで雇って面倒をみてもらうという日本では想像で きない贅沢が可能なのだ。