原油市場の気が狂ったような高騰のあおりで、フィリピンでも毎日のようにガソリンが値上がりしている。1990年ごろガソリンがリッター15ペソになったということでタクシーやジープニーの運転手が抗議のストライキを打った。それが、今や55ペソだというのだ。日本円に換算すると135円程度になる。日本のガソリン価格からガソリン税を除いた程度の価格だ。もっとも、ほとんどのガソリンはもシンガポールやタイの大型石油精製基地で生産しフィリピンに輸入されているから、日本と同じ値段だとしても不思議はないが。
ところが、そのあおりをまともに食らっているのがタクシー運転手だ。初乗り料金はたったの30ペソ(73円)、100ペソ(240円)も払えば市内のほとんどのところに行けるから、超割安だ。車の値段はフィリピンのほうが日本より高い。安いのは人件費だけであり、これでどうやってやって行けるのか不思議だ。タクシーやジープニーはほとんどがバウンダリーと呼ばれる賃料を支払ってオーナーから車を借りて営業をしている。車の状態や、時間等で違うが、バウンダリーは600~800ペソ/日程度。ガソリン代は運転手負担で、売り上げからガソリン代をひいて、バウンダリーを支払って、残りが自分の収入になるという仕組みになっている。それが、ガソリンの高騰ににより、バウンダリーさえも払えないタクシーが急増しているのだ。運転手にとっては一日働いて、一銭にもならないという状況が出てきている。
もちろんタクシー運転手もバカではない。なんとか収入をあげようと、客との交渉が始まる。今やほとんどのタクシーが追加料金を要求してくる。今までも夜間、雨天など追加料金を要求してくるタクシーはあったが、最近はそれが定常化してきているのだ。タクシーを管轄している陸運局は一体何をしているのかと思うが、タクシーやジープニーの料金があがると物価が上がったという実感が庶民にいきわたるので、不人気のアロヨ政権としてはタクシー料金の公式な値上げが大いに躊躇されるところなのだろう。