スマイル・プログラムへの移行について 2012年10月16日


退職ビザに関する20115月のルール改正によりスマイル・プログラムが新設された。これで、35歳以上、一律2万ドルの預託金で退職ビザがとれるようになり、50歳以下の若い退職者(?)が急増した。この2万ドルはコンドミニアムの購入等の投資には転換できないが、人生の終末のニーズ(入院費、埋葬費等)には近親者が引き出して使用できるという、画期的なものだ。

 過去の預託金の推移を見てみると

① 20065月以前: 50歳以上 5万ドル、 35歳以上50歳未満 75千ドル

② ~20115月 : 50歳以上 2万ドル、 35歳以上50歳未満 5万ドル

③ 20115月~ : 50歳以上 2万ドル、 35歳以上50歳未満 2万ドル 

(ただし、②と③で年金申請は50歳以上1万ドル、③でクラッシックは35歳以上5万ドル)

 20115月以前に退職ビザを取得した人(上記の①と②)はスマイル・プログラム(③)に移行することにより、預託金の差額(5万‐2万=3万ドルなど)を引き出して自由に使うことができる。ただし、その場合、360ドルの年会費をおさめる必要がある。

 その手順は下記の通りだ。

(1)スマイルへの移行をPRAに申請する(申請用紙に退職者本人が署名して提出する)

(2)PRAからTransfer Clearanceが発行される(申請後1~2ヶ月後)同時に360ドルの年会費を支払う

(3)上記のTransfer Clearanceを預け入れ銀行に提出して、スマイルに必要な2万ドルだけをDBPPRA口座へ移動する

(4)PRAから残りの3万ドルのWithdrawal Clearanceが発行される(2万ドルの移動後、1~2週間後)

(5)上記のWithdrawal Clearance を銀行に提出して3万ドルを引き出し、指定の銀行へ送金する

 これらの手続きは原則として本人が行う必要があるが、委任状の発行等でほとんどの手続きを代行させることができる(パスコで代行しています)。

 ②で50歳以上の預託金が5万ドルから2万ドルへ引き下げられたとき、①の既存の退職者から、「不公平であり、差額の3万ドルをもどすべき」との議論が巻き起こった。その結果、PRAはハーモニゼーション・スキームと称して、3万ドルを引き出す代わりに毎年450ドルのフィーを払うこととしたが、それでも不公平感は免れなかった。

 ③のスマイル・プログラムの施行により、①の既存のビザ保有者はスマイル・プログラムに移行することにより、新しいビザ取得者と同等に扱われることになり、不公平感は払拭されることになった。ただ、②の50歳以上の退職者は、2万ドルの預託金のみで年会費も要らないので大分得をしたことになる。

 ②の50歳未満の退職者もスマイルに移行することにより3万ドルの引き出しが可能である。しかし、PRAは、認定銀行からの急激な定期預金の解約を防ぐために、毎月の移行者の人数を制限している。そのため、PRAは不公平感の早期払拭を目指して、①からの移行者を優先しており、②からの移行には、その承認に時間がかかっている。

 スマイル・プログラムに移行する場合、(3)で、預託金2万ドルをDBPに移動しなければならない。DBPに預金することは、申請時などの時間的制約がない場合、メリットも大きい。最近のEXPORT BANKの破綻など、預け入れ銀行の破綻などのリスクがなきにしもあらずだが、DBPは政府系の銀行であるだけに、そのリスクがない。さらに、PRAの口座に預金するために、ビザの解約や遺産相続においてややこしい銀行手続きが不要で、引き出しが容易だ。

 既存の退職者が預け入れ銀行をDBPに変更するためには、今のところ手続き的にはスマイル・プログラムへ移行するしか方法はない。従来の認定銀行を変更するように、単にDBPへ移行するというわけにはいかない。これは、DBPへの預け入れとPRAへの年会費の支払いとはセットになっているためだ。

 いずれにせよ、PRAのトップが替わるたびにルールが変更になるので、既存の退職者にとっては、何がどうなっているのかわけがわからにという不満が絶えない。いずれ、日本の年金制度のように複雑怪奇なものになってしまうのではないかと心配になる。しかし、PRAの姿勢としては既存のビザ保有者の申請時のルールは既得権として扱い、決して不利になるような変更はしないという原則に則っていることは間違いないので安心して欲しい。

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