ジョイント・アカウントの勧め 2011年7月7日


 銀行口座のジョイント・アカウント(共同名義)というものは日本には存在しないようだが、フィリピンではごく一般的に用いられる、きわめて便利な制度だ。

 AND/ORアカウントとも呼ばれるが、会社の口座においてはほとんどの場合、これだ。印鑑という概念がない外国では、会社の口座からお金を引き出す場合においても個人のサインで引き出される(小切手を使うのが普通だが)。これを1名に限定しておくと、その人が出張していたり、あるいは病気で休んでいたり、さらには急死した場合など、会社としてお金が使えなくなり、会社としての機能が停止してしまう(印鑑さえあれば誰でも会社のお金が引き出せる日本とは大違いだ)。したがって、複数の人をサイナーとして指名する。当然のことながら、このサイナーの指名は役員会で決議しなければならない重要事項だ。しかし、1名のものがサイン権をもちお金を引き出せるとなると、今度は逆に会社のお金を不正に使用するというリスクが出てくる。したがって、小切手のサインは次のようにするのが一般的だ。

 仮にABC および D 4人にサイン権を与えるとする。小切手のサインは2名連記で行い、次の4つの組み合わせとする。普通ABは会社の代表、一方CDはトレジャラー(監査役)やアカウンタント(会計係)だ。これにより、会社のお金が勝手に使われてしまうことを相互に監視させようというわけだ。この場合、C and Dではおろせないのが味噌だ。
①A and C
または A and D
②B and C
または B and D

 個人の口座の場合は、普通、妻とのジョイント・アカウント(AND/ORアカウント)にしてどちらでも自由に引き出せるようにするのが普通だ(もちろん妻以外の誰とでもジョイント・アカウントにすることも可能だ)。夫婦の財産は法的に共有というフィリピンではきわめて自然なことで、日常の出し入れも奥さんがきりもりして便利だし、一方に一方に何か起きた場合、速やかにおろすことができて、相続などというややこしい手続きを不要とすることができる。ただ、厳密には預金の50%分はEstate Tax(遺産税)がかかるそうだが、一方の死亡の事実を銀行に黙っておいて引き出してしまえば、税務署も把握のしようがない。ちなみに先日、亡くなった退職者は独身だったために、普通預金のすべてを日本人の妹さんとジョイント・アカウントにしておいて大いに助かった。

 ATMカードは、日本の全く状況が一緒だ。あえてジョイント・アカウントにしなくてもATMカードと暗証番号を妻に教えておけばそれで済む。もしものことがあったとしても銀行に連絡する前に引き出してしまえばそれで問題なない。あとから銀行が死亡の事実を知ってもあとの祭りだ。ただ、ATMの場合は一日に下ろせる金額が2万~5万ペソなので、大金の場合、全部引き出すのに数十日の期間を要することになる。

 日本人がフィリピン人の妻との間で普通預金をジョイント・アカウントにしておくと、なけなしの預金を全部下ろして、姻戚にばら撒いてしまう恐れもあるので、慎重にことを運ばなければならない。年金の振込み口座のようなものであれば、全部おろしてもまた入ってくるのかまわないが、退職金のような一時金は、二度と戻らないので、やばい。なにしろ「宵越しの金は持たない」のがフィリピン人なのだ。

 しかし、遺産としても問題になってくるのは大きなお金であって、数十万円のお金を問題にしているのではない。この点ジョイント・アカウントは両刃のやいばなのでよく考えて判断してほしい。子供がいて死後のことが心配だったら、一時払いの貯蓄型の保険としておくのも手だ。そうすれば勝手に下ろすことはできないし、死後、子供の養育の責任も果たせる。

 さて、SRRVを取得するために行ったUS$の定期預金をどうするかだ。これはビザを保有している限り、本人でも引き出すことはできない。一方、本人が死んでしまったら、気の遠くなるような相続手続きを必要とし、2万ドルなら、その半分くらいが、税金や手続き費用で吹っ飛んでしまう。だからこそ、これをジョイント・アカウントにしておいて、いざというときは妻などのジョイントアカウントの相手が下ろせるようにしておくべきだ。

 ただ、この預金を引き出すためにはPRAに退職者の死亡の事実を告げ(死亡証明を提出)ビザの取り消しを、まず行わなければならない。そして、PRAが発行する引き出し許可証(Withdrawal Clearance)をたずさえて、銀行で妻などが引き出しを実行するのだが、この許可証に退職者の死亡の事実を記載されていないということが重要なポイントだ。記載されていると、最悪、相続手続きということになるが、ジョイント・アカウントでありさえすれば、遺産税の支払いだけで片がつくはずだ。

 ちなみに先日実施した例では、ジョイントアカウントではなかったので相続手続きは行ったのだが相続税そのものは数万ペソで済んだ。この辺の事情は銀行によって違うので、ジョイントアカウントの手続きの時に署名する紙に条件が書いてあるので注意して見てほしい。ちなみにBank of Commerceのサインカードにははっきりと、「一方が死んだ場合は自動的に残った人に帰属する」と書かれている(画面をクリックして拡大して見てください)。 

今回、PRAGMが、既存の退職ビザ保有者の定期預金についても、今まで、フィリピン人ないし退職ビザを保有する配偶者にジョイント・アカウントの対象が限定されていたものを、法定相続人あるいは誰でもジョイント・アカウントの相手にすることができるようルールを改定すると言っていた。

 これが実現したら、現在個人の単独名義で預金している人は、是非ジョイント・アカウントの手続きを取ってほしい。その際、婚姻証明や出生証明など退職者との関係を証明する書類、およびパスポートなどのID2通、それに写真2枚が必要だが、私が扱っている Bank of Commerceの場合は退職者ご本人とジョイントアカウントの相手が銀行に現れなくても当方が代行して手続きすることもできる。

CIMG4451s-276日のPRAとマーケッターのミーティングの様子、この日はトップ10のマーケッターが招待された。ちなみに右端のジェーンは昨年トップ2のパスコの代表として出席した。もちろん日本人対象としてはダントツのトップだ。

 さて、今回のPRAルール改訂で、今後ビザを申請する退職者の預金はすべてDBPが預かることになっている。しかも、アカウント名はPRAだ。だから今までのように退職者の名義での口座は存在せず、PRAの一存でその預金が誰にでも引き出すことができる。これは大いに便利で、銀行にロックされた(スマイルプログラム)預金は退職者が大病に犯されて入院したり、死亡して埋葬や火葬が必要になったとき、PRAの一存で、預金をそれらの費用に充当できるのだ。もちろん、ビザが取り消された場合、退職者本人に返還されるが、退職者が終末を迎えたとき、PRAが臨機応変に対応できるための、大変優れた制度と評価できる。

 しかし、これがまた両刃のやいばで正しく運営されれば文句はないが、退職者が終末を迎えたとき、入院費や埋葬費は直接病院や業者に払えばよいが、残った現金は誰に渡るのか、自称他称の妻や子供、それにお金を貸していた人たちがが現れて、収拾がつかなくなるのではないか。PRAがポケットに入れてしまうのではないかと懸念される方も多いだろう。

 そこで私が提案したのが、ジョイントアカウントの概念だ。DBPの預金の名義を退職者だけではなく連名にして、何かあったときは、その人がお金を受け取ることができるという、いわば簡易な遺言とすることだ。こうしておけば相続手続きは不要で、最悪でも遺産税がかかるだけだ。それもPRAが速やかに処置すれば、通常のビザ取り消し程度の手間で、遺産がしかるべき人に渡すことができる。PRAとしても退職者の意志に反して、わけの分からぬ輩にお金が渡してしまうというリスクを避けることができる。

 GMとしては連名にするだけでは心もとないので、PRAと退職者との間で簡単な合意書のようなものを交わして、双方が保存するような形を取るべきだと話していた。これにより、残された定期預金の行く末がはっきりするので、片方のやいばを封印できる。したがってこれからビザを申請する方は、定期預金が渡るべき意中の人を選定しておかなければならない。ちなみに今までのように、フィリピンあるいは退職ビザを保有した配偶者に限定されず、法廷相続人の一人、あるいは誰でもよい(ガールフレンドなど)ということになるかもしれない。a

 CIMG4449s-2

中央がアティエンサGM、左がリンガットGM代理、前線で退職者のお世話をするマーケッターに対して耳を傾け、問題を解決して行こうとする姿勢にPRAの明るい将来を見た 

 

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