コンドミニアムの路線価格の怪 2010年7月27日


私の住まいはマカティのはずれ、パソンタモから少し入ったサン・アントニオ・ビレッジの一角のマカティ・プライム・シティ・コンドミニアムで、パーム・ タワー・コンドミニアムと隣接し、高層、低層そしてタウンハウスの建物が10数棟建ち並ぶマカティでも有数の集合住宅街だ。このほどわけあってこの住宅街 にある3階建て延べ床面積200平米のタウンハウスの取引に関わることになった。

CIMG0320s-1 CIMG0354s-1

 一階は駐車場とリビング、2階がダイニングとキッチンそしてマスターベッドルーム 、3階にはベッドルームが3室、さらにバス・トイレが全部で4つあり、ちょっと古いタイプの大型の住居だ。現在建築中のコンドミニアムは、ほとんどが25 平米あるいは50平米、大きくても100平米を超えることはない。それは新築コンドミニアムの平米単価が10万ペソ近くになり、100平米なら1千万ペソ (2千万円)となってしまい、とても庶民の手が出る範囲ではなくなってしまった。25平米~50平米の小さなスツジオあるいは1ベッドルームなら250 万~500万ペソで、なんとか住宅ローンが組める範囲なのだ。

CIMG0334s-1 CIMG0346s-1

 マカティの中心街を外れるこの付近の中古コンドミニアムは平米単価が5万ペソ程度で、50平米程度のものが200~250万ペソで手に入る。したがって、 新築にこだわらなければ半値以下のお買い得で、人気がある。一方、200平米となると、そのままの単価を適用すると、1千万ペソとなってしまい、買う人は いない。そのため、平米単価はぐっとさがり、今回ハードなネゴにより、400万ペソで取引が成立した。平米単価は2万ペソでかなり有利な取引となった。し かし問題はこの取引に関わる税金だ。

ちなみに不動産の取引には下記の税金がかかる。

1.  キャピタルゲインタックス(Capital Gain Tax):売買価格(Selling Price)あるいは路線価格(Zonal Value)の最も高いものの6%。キャピタルゲインタックスは、そもそも売却による利益にかかるべきものだが、売買価格を操作して脱税するものが多いの で取引価格そのもののパーセントになっている。

2. 印紙税(Documentary Stamp Tax):同上、1.5%

3. 移転税(Transfer Tax):同上、0.5~0.75%

4. 登録税(Registration Fee):売買価格の1%

5. 固定資産税(Real Estate Tax):評価額(Assessed Value)の2.5%

  固定資産税は別途、毎年1月に支払わなければならないので、売買取引に伴う登記移転までに支払うべき税金は売買価格の9%程度になる。このほか、契約書の 公証代など、合計で10%程度の費用が必要となる。通常は路線価格や評価額は実際の取引価格より低いので、売買価格の10%というのが一つの目安になって いる。また、契約にもよるが、キャピタルゲインタックスと印紙税は売主、その他は買主が支払うのが普通だ。今回はキャピタルゲインタックスが24万ペソ、その他の 税金が合計で12万ペソ程度と試算された。

 売買契約も無事終了し、次のステップ のために税務署(BIR)を訪問して、税金の額を試算してもらった。そうしたら、キャピタルゲインタックスが60万ペソ、印紙税だけで15万ペソという、 想定外の金額が提示され、愕然とした。この地区のコンドミニアムは路線価格が5万ペソ/平米で本物件の路線価格は1千万ペソで、それが税金の計算の根拠と なっているというのだ。

 そんな馬鹿な話があるものかと、早速インターネットで調べてみたら、確かに 1995年以降に建設されたこの地区のコンドミニアムは一律5万ペソ、それ以前のもので38,000ペソ/平米となっている。この路線価格1千万ペソと言うのは、なんと売買価格の2.5倍だ。さらに固定資産税の基準となっている市の評価額200万ペソとなっており、それに対しては5倍というとんでもない開 きがある。しかも、新築あるいは中古でも、高級あるいは3流でもすべて一律という、なんとも不合理な話だが、確かにそう定まっているから致し方ない。

  コンドミニアムの税金は高いという話は聞いたことがあるが、その辺にからくりがあったのだ。ちなみにコンドミニアムとして登録されていない、一般の住宅あるいはアパートについての路線価格は土地についての定めしかなく、建物については市の役人が作成する評価額が適用される。今回のタウンハウスの評価額は 200万ペソだから、実際の売買価格の半分だ。だから一般の土地付住宅(House and Lot)の取引においては売買価格だけが問題となる。そのため、売買価格が異なる2通の契約書を用意して評価額に近い取引価格を記載した契約書を税務署に 提出することが一般に行なわれている。

 新築のコンドミニアムを買う分には、いや がうえでもVAT(付加価値税)が販売価格の12%かかってしまうので迷いようがないが、中古のコンドミニアムの売買には、影で路線価格というわけのわか らないものが控えているので、充分気をつけて欲しい。アキノ新大統領は前アロヨ政権の不正の追求に躍起になっているが、こんな不合理な税金がまかり通って いる現実にもメスを入れて欲しい。誰だってこんな不合理な税金を掛けられたのでは節税あるいは脱税に知恵を絞って、全うに税金を支払う者がいるはずがな い。

Leave a comment

Your email address will not be published. Required fields are marked *