ここ数ヶ月、新聞やテレビをにぎわせていたコロナ最高裁長官の弾劾裁判に決着がついた。5月29日に行われた上院議員による表決の結果、20対3で長官の有罪が決定した。最高裁長官が上院による弾劾裁判で有罪判決を受け更迭されるという事態は、フィリピン史上初めてのことだ。
コロナ長官はアロヨ前大統領が2年前、任期終了直前に指名したもので、すでに大統領選の当選が確実となっていたアキノ現大統領の非難の中、長官に就任した。
アキノ大統領就任後、アキノ大統領の行政に不利な判決を出し続け、コロナ長官はアキノ大統領の目の上のたんこぶとなっていた。昨年11月にはアロヨ前大統領の出国監視措置を解除する仮処分命令、アキノ大統領の実家のルイシタ農園の農地分配の命令、などなど。
弾劾裁判の判決の決め手は資産報告義務を定めた憲法違反、240万ドルのドル預金と8070万ペソの預金が報告書に記載されていなかった、というものだ。そのほかの罪状は、すでに有罪判決が確定されたので評決はされなかった。
無罪評決を出したのは、憲法専門の弁護士のアロヨ上院議員(アロヨ前大統領とはたまたま名前が同じだけで何の関係もない)、毒舌家で有名な弁護士、ミリアム上院議員、それに親の代からアキノ家と対立してきたマルコス元大統領の息子のボンボン・マルコスだ。賛成した上院議員は憲法上、果たして有罪かどうかというよりも、コロナ長官の個人資産の額や検察側のショッキングな報告に大いに心を動かされたらしい。
巷の意見は二つに分かれている。コロナ長官の無罪を主張するものと、有罪を歓迎するものだが、知識人は無罪に傾いているようだ。知識人は、アキノ大統領が自己の無策を棚に上げて、アロヨ前大統領やコロナ長官を槍玉に挙げて、失政の矛先を変えようとしているに過ぎない、という見方をしている。彼らは、英雄、コーリー・アキノ元大統領の息子というだけで、大統領に当選したアキノ現大統領の手腕を大いに疑問視しているのだ。