クッキー(3歳半)の反逆 2020年5月15日、5月17日、18日追記


封鎖開始から2ヶ月、在宅隔離も我慢の限界が近くなってきている。そんな矢先、13日、再び、31日まで封鎖継続のニュースが流れた。MECQ(修正強化地域防疫)と称しており、工場や事務所の限定的再開などの緩和措置があるようだ。庶民の生活としては食料品の他に日常品の販売が解禁になる。ただし、外出禁止は継続しており、公共交通機関も動いていないので、庶民に取ってはジョギングなどが許されたことくらいが大きな違いだろうか。私としても二ヶ月間一歩も外に出ておらず、外の空気に触れるのは一日一回、新聞を取りに玄関に出る時だけで、いい加減飽き飽きしているのだが、60歳以上は外出厳禁なので、全く変らない生活が続くことになる。

フィリピンの封鎖解除の順番は、現状の最高度の(1)ECQ (Enhanced Community Quarantine、強化地域防疫)の次が今回の (2)MECQ (Modified Enhanced Community Quarantine修正強化地域防疫) で、マニラ首都圏以外の(3)GCQ (General Community Quarantine一般地域防疫)、最後は(4)MGCQ (Modified General Community Quarantine、修正一般地域防疫)となって封鎖解除の運び(New Normal)となる。因みに(3)GCQないし(4)MGCQに下がってようやく、日本の緊急事態宣言のレベルになる。

5月18日追記 ECQ、MECQ、GCQ、MGCQの制限の違いは政府通達オムニバス・ガイドラインに詳しく定義されているが、25ページもの文書を一体誰が読むというのか、しかも、法律家の作成した文書は実に難解で何度読んでもよくわからない。大使館の緊急情報でも、この文書を参照しろというだけで、概要を説明することはあえて避けている。そこで私が大胆にもサマリーを1ページにまとめることを試みた。100%とはいえなくても90%程度の精度は達成したと思うので参照して欲しい。

外に出れないので、パパ・カーネルが持ってきた室内自伝車でエクササイズに励むキアン。私のもやるのだが、退屈で5分と続かない。

(4)GCQないしMGCQに緩和されるまで、食料、医薬品などの生活必需品の商店は開いているものの、官庁(入管、PRA、市役所)、公共交通機関、 レストラン、カラオケなども閉鎖ないし禁止され、庶民の生活が戻るのは 巷の噂では7月以降とされている。しかし、 封鎖解除後は、ニュー・ノーマルと称して、日本と同じく、基本的に日常ではあるものの、 第2波が発生しないように、 色々な制限、防疫措置がなされ、やりにくい世の中になりそうだ。

学校は12月まで、オンライン授業となることが決定されたらしい。 その後も、在宅勤務、自粛隔離(因みに60歳以上の外出はGCQでも禁止されている)などの措置が継続され、本格的なビジネス活動が可能になるのは2021年以降にずれこむかもしれない。その間、学校もオンラインでキアンは在宅で、当方も在宅勤務になるのであれば、いっそビコールの農場に疎開して、マヨン火山の絶景と新鮮な空気を満喫しながら、来るべき時を待つことにした方が良さそうだ。

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こんな時に何でと思うのだが、スマホの使用をママ・ジェーンに禁じられて仕方なくレゴに熱中するキアン。

日本では、緊急事態宣言から1ヶ月を経過してコロナ感染が急速に終息しつつあり、東京等の特別地域を除いて非常事態宣言そして自粛要請が解除された。一方、フィリピンは3月15日、早々と封鎖宣言は発令されたにもかかわらず、その後、感染は急拡大して、現在も収まる気配がない。

フィリピンの封鎖は、食料と医薬品以外の商店、銀行、官庁、公共交通機関等々が、全て閉鎖され、外出禁止についても違反したら逮捕、近隣とを結ぶ道路も軍や警察によって、厳しく検問されるなど、日本の自粛要請などという甘っちょろいものではない。新型コロナは新型世界大戦なのか2020年3月29日参照

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私の執務机の下にもぐりこんでユーチューブを眺めているキアンとクッキー、猫のように子供は狭いところが大好きだ。

5月17日追記 最近のテレビのニュースでは、スコーター・エリア(スラム街)で集団感染というニュースが盛んに流れている。一般的な居住エリア、オフィス、工場等では、徹底的な隔離により、感染者はほとんど出ていないようだが、一部屋に10人もの人が暮らしているスコーター・エリアでは隔離も糞もない、まさに密集、密閉、密接の3密の状態が日常だ。そのため、大量の住民が感染し、大規模クラスターないしホットスポット化している。感染者は別途隔離するものの、残りの住民は、そのエリアに封じ込められ、感染防止というより、感染させて抗体ができるのを待つ、という作戦のようだ。

それでも数値的にはマニラ市で何人、マカティ市で何人、と発表されるため、あたかも地域全体に感染が蔓延しているような印象を与えるが、感染者が多いのはスコーター・エリアに限定されている。しかし、封鎖が解除されれば、スコーターの住人も街に繰り出すわけで、地域全体にコロナ・ウイルスがばら撒かれることになるので、やはり封鎖解除というわけにはいかない。だから、スコーターが多く抱えるマニラ首都圏の封鎖解除の道のりは遠いものになるに違いない。

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3代目の弟ココが使っているベビーベッドで昼寝をしていたクッキー、まだベビーベッドが似合う年頃なのだが、3歳になってからの智恵には驚かされるものがある。

こんな不自由な生活が続くと、我が家もギクシャクしてくる。毎晩、一人でテレビを見るだけの生活もさびしくなって、ジェーンの許しを得て、キアンを部屋に招待した。その接待のために、日本のお菓子を探し出してキアンのご馳走した。そんな時、第六感の働くママ・ジェーンが階下からキアンに私のゴミ箱を持ってくるように命令した。因みにメイドが一週間近く寝込んでいるので、現在ママ・ジェーンが食事、洗濯そして掃除を切り盛りしている。

数分後、キアンが目に涙をためて戻ってきた。そして私を見るなり大泣きをはじめた。何とか聞き出してみるとママ・ジェーンにお菓子の袋を目ざとく見つけられて、ぶん殴られて、私が死んでしまうと脅されたのだという。部屋でものを食べることは禁止されているらしいのだが、なぜならゴキブリがわいて出るためで、そのゴキブリがコロナ・ウイルスを運んできて、私が感染して死んでしまうというのだ。キアンとしては私が死ぬということを想像するだけで、涙が止まらなくなるのだ。そうはいっても私自身はゆでピーナッツやバナナを部屋で食べているので、「風が吹けば桶屋が儲かる」式のへ理屈に聞こえるが、そんなことは子供にはわからないし、ジェーンが、こうだと言えば、我が家のルールになってしまい、異議を唱えるものはいないのだ。

大器を髣髴させるクッキーの寝姿

しばらくするとママ・ジェーンの階下からの呼び声にキアンは、「またママにひっぱだかれる」と私についてくるように懇願した。私がジェーンに文句をいうと返って「火に油」なので躊躇されたが、泣きじゃくるキアンをほっておくわけには行かない。そして、そのとき、颯爽と登場したのがこの日の主役の妹クッキー(3歳半)だ。

ダメ押しのようにキアンを怒鳴り散らすママ・ジェーンに対して、突如、クッキーが声を張り上げて抗議したのだ。「You have no reason to hit Kian」と必死の形相でママ・ジェーンに殴りかかる勢いだ。踏み出した足で床をドスンとたたいて、ママジェーンを威嚇する姿に、私も弟ココのヤヤ(子守)のソニー(ジェーンのおばさん)も目を見張った。一方、キアンはママ・ジェーンが恐ろしくて相変わらず泣きじゃくっているだけでなす術がない。

2~3歳のころ、キアンは私の机に下にもぐりこむのが大好きだったが、最近はクッキーのお気に入りのスペースになっている。

ママ・ジェーンはクッキーの思いがけない反撃にびっくりはしたものの、3歳の娘に親として引き下がるわけにはいかない。「Kian has broken the rule, what’s wrong with me」と反論するが、クッキーはひるまず、「Stop fighting, you have no reason」とやりかえす勢いはクッキーが優勢だ。たしかに訳のわからぬルールを作って、違反すると張ったおすというのは、子供ばかりではなく、私にも理解できないもので、クッキーの主張は文句なく正しい。

5月18日追記 当方は、この辺でよかろうと、キアンを連れて私の部屋に戻ったのだが、今度は、ママ・ジェーンがクッキーとそれにココまで連れて私の部屋にあがってきた。何だとおもったら、パパ・カーネルにビデオ通話でクッキーの様子を中継していたのだ。ママ・ジェーンが再びクッキーにけんかを仕掛けて、ヤラセを始めたわけだが、クッキーは、先ほどの剣幕で、パパ・カーネルに自己の正当性を懸命に訴えていた。

キアンのまねをしてレゴ遊びにいそしむクッキーだがいくつかの部品をつなぐだけで、なにか形を作るというにはほど遠い。しかし、このレゴという遊びは、40年前、私の息子達のプラモデルと並ぶ最高の長寿おもちゃだったが、現在もますます人気ものだ。それにしても純正品は何故あんなに高いのか、理解できない。

そして最後に、下に降りて、ママ・ジェーンがキアンに「Sorry」とあやまって、握手して、さらにクッキーの指示でハグして、さらにクッキーはママ・ジェーンと握手をして仲直りの儀式は終わった。その後、クッキーはキアンが心配だと私の部屋に来て、そのまま寝てしまったが、修羅場を乗り越えて、事件を丸く治めたのでどっと疲れがでたのだろう。

5月18日追記 後で、よく考えてみると、クッキーの使った言葉(You have no reason to….、Stop … ing) は、私が、クッキーを叱るときに良く使う言葉だった。キアンが私と算数の勉強をしているとき、クッキーがキアンにちょっかいを出して、キアンが適当にあしらうと、クッキーが腹を立てて「キーアン」とびっくりするような大声で怒鳴る。そこで私が、「Stop shouting. you have no reason to shout to Kain」と叱るのだ。そうすると、クッキーはきょとっとして、おとなしくなるのだが、クッキーにとって、私の言葉は、天からの正義の言葉ー天下の宝刀と響いていたのだろう。だから、このとき、ママ・ジェーンにその天下の宝刀を抜き放ったのだ。

ママ・ジェーンに言われて私の部屋のモップ拭きに挑むクッキー。クッキーもやっぱり女なのか、家事仕事をいとわず喜々として励んでいる。

10歳の兄貴を庇って、ママとやりあって、一歩も引かず、最後にはママに侘びを入れさせるという行動に、普段、キアンの勉強を邪魔するうっとうしい存在だったクッキーに、私は尊敬の念さえ覚えた。後で聞いてみると、クッキーは、ジェーンの子供の頃と全く同じで、まるで「子は親の鏡」を地で行ったような存在だそうだ。因みにクッキーの本名はジェーン、ママはメリー・ジェーンで、まさにジェーン2世なのだ。

私の観察では、ママ・ジェーンの分身が、ヒステリックに我が子であるキアンをいじめる様を見かねてクッキーの姿をかりて、ママ・ジェーンを諌めたのだと感じている。3歳の子供が独力であそこまで母親に立ち向かうなんて信じられないことだ。今までクッキーは半分可愛くて、半分うっとうしいだけの存在だったが、これからは我が家の次期首領(ドン)として大いに敬って手なずけておかなければならない。キアンにも、我が家でママ・ジェーンを諌めることが出来る唯一の存在となったクッキーをうるさがらずに可愛がるように諭した。

Xボックスのゲームで画面にしたがってダンスに励むキアンとクッキー、それを後ろで見守るココ。キアンのやることは何でもまねをするクッキー、二人ともなかなかの腕前だ、ちなみにママ・ジェーンはハイスクールではダンス・クイーンだった。

私がこの家で唯一不愉快な思いをしているのが、キアンに対する親のいじめとも言える理不尽なしつけ、ないし過度な干渉で、これを回避できる手立てがみつかったのだ。ママ・ジェーンがキアンをいじめたら、クッキーに言いつけるって寸法だ。キアンのハートはすでに私のもので、私を一生面倒みると宣言しているが、対外的に私を守ることができるのは、このクッキー以外にはないと悟った。

5月18日追記 クッキーは、この6月から幼稚園の年少組みに通う予定だったが、コロナ騒ぎで開園されないだろうから、私が、家庭教師になって英語と算数を教えることを決意した。これもクッキーを味方につけるための算段であると同時にコロナ封鎖中の暇つぶしの一環でもある。

明るくて、優しくて、ひょうきんで、誰からも愛されるキアンは、フィリピン人男性の典型のようなものだ。一方、機嫌の良い時は誰にでも愛想を振りまくが、一旦、舵が入ると、誰にでも喧嘩を仕掛けるストリート・ファイターのクッキーはフィリピン女性の典型だ。我が家でクッキーが天下をとるのもそう遠くない将来だろう、早くて小学校へ入学するころ、ハイスクールに行ったらもはや間違いない。

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パパがおらず、親子が怒鳴りあっていても、いまのところは、何もわからず、ボーっとしているココも6ヶ月になって、いよいよ自力で座るようになった。これから成長が楽しみだ。

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