クッキーが小型の I Padを落として壊してしまって、パパ・カーネルが大きめの I Padを持って帰って、修理の間ということで、貸し与えた、らしい。翌日、外出中のママ・ジェーンから、このI Padを私が預かっておいて欲しいとのメッセージが入った。カバーがないので、クッキーが落として壊してしまうことを恐れたのだ。そのとき、クッキーはオンライレッスン中だったので、I Padを彼らの部屋から持ち出して、私の部屋においておいた。
レッスンを終えたクッキーはI Padを探して、私の部屋にあるのを見つけて、返せと要求したが、私は、断固として求めの応じなかった。過去、キアンのソニータブレットを投げつけて修理不能とし、最近は、自分のI padも壊した前科があるので、パパ・カーネルのカバー無しのI Padもみじめな運命をたどるのは、目に見えている。しかし、ママ・ジェーンも出かけて相手にするものがいないクッキーにとってI padだけが友であり、執拗にI Padを返せと私を責める。
面倒くさいので、戻ってきたママ・ジェーンにI Padを渡そうとしたら、クッキーの怒りは頂点に達していて、すでにパパ・カーネルに告訴していたのだ。そして私がお世辞に顔を近づけるとすかさず張り手が飛んできて、危うくパンチを食らうところだった。顔つきも真剣で、冗談で手を出しているとは思えない。
ママ・ジェーン曰く、パパに電話したいから携帯を貸してくれと言って「ダダ(私)が、I Padを盗んだ、直ちにダダを逮捕して、I Padを取り返して欲しい」と、なんと現役警察官に告発したのだ。ヤヤに頼んで隠しておいたI Padをジェーンに返してほっとしていると、ジェーンがことの次第を報告に部屋にやってきた。
クッキーには「I Padをダダから取り返したから、ダダを許してやって欲しい。」と説明した。そうしたらクッキーのコメントは「今回は許してやるが、繰り返したら、ダダの携帯とパソコンを破壊してやって、お金も盗んだやる。」と、「どうやって壊すのか」ときいたら、「水をかければ簡単にこわれる。」と、3歳児の回答とは信じられないコメントが返ってきたそうだ。
しかし、合点がいかないのが、この事件において、私が悪者なってしまっていることだ。事情を知らない私が、ママ・ジェーンの指示にしたがって、I Padを預かっていただけなのだが、クッキーの怒りが彼女にむかうのが憚れたのか、私を悪者にして、クッキーの歓心を買ったのに違いない。
確かに、クッキーは一体何をしでかすか、見当がつかないので、クッキーの恨みを買うことは避けるに越したことはない。まだまだ先のことを考えるには未熟するぎるので、その場の感情に任せて何をしでかすかわからないし、なまじに智恵があるから体が悪い。そして、叱っても、ママ・ジェーンがたじたじになるほどで、効果がない。
先日、ママ・ジェーンが、「お兄さんのキアンは、あんなに優しいのに、何で、クッキーは乱暴で優しくないのか」とたしなめたら、返って来た答えは「I’m not Kian」だった。それをきいた私は、思わず、内緒で親指を上げて、これが、3歳児の返事かと感心するしかなかった。うまく育てたら、きっと、ミリアム・サンチャゴ女史のような大物になるに違いなく、ママ・ジェーンにはこの才能を阻害することのないようにとアドバイスした。
注 ミリアム・サンチャゴ:元上院議員、大統領候補、毒舌家で有名で、庶民から愛された政治家。