長年、フィリピンの駐在日本人企業戦士を慰め続けてきたカラオケも栄枯盛衰が激しく、生まれては消え、消えては生まれる歴史を繰り返してきた。最近はジャパユキさんが日本にいけなくなったせいで、日本が話せるGRO(Guest Relation Office、要はホステス)が激増し、大半を占めるようになった。1990年代はマカティのカラオケは駐在員用、マニラエルミタ地区のカラオケは観光客用と住み分けられていたのだが、最近は企業の接待費の使用が絞られたせいか、マカティのカラオケも観光客を相手にしないと生きていけなくなったようだ。
大型カラオケの雄、イルージョン
かつてマカティにはほとんどいなかった日本語を話せるGROが、 今や日本語は必須となっている。すなわちほとんど全員が日本のどこかで働いた経験があるのだ。また、これら観光客相手のカラオケはイルージョン、アッ プステージ、ブルーエンジェルなどパサイ通りあるいはパソンタモ通り沿いの大型店が主体で、昔ながらの駐在員相手のアカシヤ、夢の中へなどのカラオケは隅 のほうでひっそりと営業を続けている。
パサイロード沿いには10軒ほどの大小カラオケがある
日 本人駐在員のおじさん達がフィリピーナと仲良くなるというのは、現実的にカラオケくらいしかない。普通のオフィスのレディ達は鼻も引っ掛けてくれない。しかし、カラオケはビジネスだから、得意のホスピタリティを発揮してなんともやさしく対応してくれる。これがお互いに大きな勘違いを呼んで、本 当の恋人同士になってしまうのだ。したがってカラオケは駐在日本人男性の恋人予備軍の基地という役割を果たしていた。そして幾多の恋物語を生み出 してきた。(ところで日本人用カラオケは決して女性を連れ出してホテルへ連れて帰るなどと言う場所ではないので、誤解のないようにしてほしい。その 点、ゴーゴーバー、ナイトクラブ、置屋、等とは一線を画している。)
家族的雰囲気をかもし出すカラオケ
同伴という制度が日本から導入され、店は積極的にGROに客との同伴を奨励している。最低週一回の同伴を義務付けているところもあり、それが達成できなければ首とか、厳しいノルマを課している。この同伴がどうにも勘違いを呼び起こすきっかけのような気がするのだが、50過ぎのおじさんと20前後の小娘が二人で恋人同士のように食事をしているはいかにも奇妙な光景だ。しかし原則、1対1の同伴は許されず必ず、同伴の同伴がいて二人でやってくる。だから二人分の食事をご馳走しなければならない羽目になる。
GROと談笑する客
GROは上記のノルマを達成するために、今様は携帯電話を駆使している。なじみの客には朝昼晩と一日3回、10名近い客にメールを打つそうだ。一回1ペソだから、彼らにとってはかなりの出費となる。文面は How are you? Did you finish your dinner? I miss you, Take care, など決まり文句の繰り返しだ。たまにはI love youなどと心にもないメールを送るGROもいるようだ。
歌と談笑の組み合わせが楽しい
イルージョンの内部は高級感を漂わせる
さて料金体系だが、店によって千差万別だ。500ペソ均一、飲み物無料、延長無料、とかなんとか歌い文句にしていても、その代わり余計なものがついていたりして、結局のところ同じ。2~3時間程度遊んで、一人当たり1500ペソ~2000ペ ソといったところだ。明細は見てもごたごた書いてあって何がなんだかわからない。しかし、レディズドリンクを黙ってじゃんじゃん出したり、延長の時間 が来ても黙っている店は、ぼられると思っていいだろう。ぼるといって、途方もないお金をとられるわけではないが、相場の2~3倍とられることがまれにあるようだ。
「しあわせ」ではGROが勢ぞろいして踊りも見せてくれる
GROの質だが、これがまた千差万別、こんな女がよく日本に行けたなとか、びっくりするような美人もたまにはいる(せいぜい大きな店に一人くらいだろうが)。10人十色だから、なんともいえないが、わが社の事務所の女性陣よりは大分レベルは高いようだ。なにしろ事務所では顔の形はまったく評価の対象としていないが、カラオケはなんといっても顔で決めるだろうから、当然といえば当然だ。
客の指名を待つGRO(ショーアップと呼ばれる)
ほとんどのGROが高校卒か大学中退だ。学費が払えず大学に行けず、十代の半ばすぎから一族郎党を背負って立っているのだと思うと、いつも頭が下がる。そして、そういうGROのお尻に手をやってにやけているオヤジを見ていると張ったおしたくなる(自分のことかも)。さて、今夜は久しぶりにカラオケにくりだしましょうか。
イルージョンのショーは本格的だ
マ ラテ/エルミタ地区にはカラ置屋と称される、連れ出しが可能なカラオケクラブがある。カラオケとゴーゴークラブのシステムを併せ持つもので、一見なん ら普通のカラオケと変わりないが、ママさんがTake outしますかと聞くのでそれとわかる。かつてマビニの「ダンヒル」「鍵」「サンパギータ」などが有名だった。これらのカラ置屋は店の規模の割りに女 性の数が多く、店一杯女性ばかりという感じだった。客がGROをどんどん連れ出して行ってしまうので店が空にならないように大量の女性を置いておくのだす。最近はあまりはやらないようで、そのような大規模なカラ置屋は影を潜めたようだが、デルピラ通りの南のはずれにある「YOKOHAMA BAY」な どが細々と営業を続けているようだ。
マカティスクエアにあるファラオはフィリピン式の高級カラオケ、個室のみで、かなり高いがここは連れ出しができる