グローバル時代の子育て(キアンのお稽古事)2019年4月22日 1


マニラで発刊されているPLECOMMという無料週刊誌に毎週「グローバル時代の子育て」という題で、子育てについてのノウハウが連載されている。「習い事が人生を決定付けるほど重要な理由」「やる気を延ばす家庭教育とは」「本気で習い事をしている子は、勉強も本気でやる」「子供を暇にしてはいけない理由」「子供がよい習慣を身につけるには」「コミュニケーション能力を高める方法」等々、目にうろこの記事が続く。元ねたの「全ての子供は天才になれる、親(あなた)の行動で。」(ダイヤモンド社刊)を是非一読したいところだ。

4才で習い始めたので、いよいよ5年目に突入したピアノ。当方には信じられないほど器用な指使いだ。後3年、ハイスクールに入学することに独奏会も出来るのではないだろうか。ただ、ほとんど家で練習しないので、自ら進んで独習するようになれば上達も早いだろう。

中でも習い事の重要性については、まさにこれだと、唸らされた。曰く、習い事は、何もそれで身を立てる技術を身につけるということよりも、習い事によって培われる「やり通す気力と忍耐」、「達成感と喜び」そして「自分が優れているという自信」が重要で、机に向って勉強しているだけでは決して培われないものである。これは学業にも寄与するばかりか、そしてこの力が将来社会に出たときに発揮され、いわゆる「出来る」人間になるのだ。欧米の世界有数の大学では学科試験のほか、スポーツあるいは芸術の腕前、さらにボランティア活動の実績などが問われ、文武両道が要求される。

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一家一同でピアノリサイタルの会場に向う。キアンはリサイタル用の衣装、クッキーも一丁前におめかしをしている。手前は従姉妹のヤナ、後ろはヤヤ(子守)

キアンが4歳のころ、私がイニシアティブを取って、公文、空手そしてピアノと習い事のオンパレードが始まった。私の狙いは、①公文:数字に滅法弱いのが当たり前のフィリピン人に育ってほしくない。②空手:自分自身に自信と誇りを持つとともに自己防衛力を見につけて欲しい。③ピアノ:音楽は頭の回転を早め賢い子になる、音楽で人生が豊かになる、人に自慢できて自信がつく、そして女の子にもてる、という多目的で、自分がなしえなかったことへのリベンジでもある。

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音楽教室EUPHONYのリサイタル会場。50人以上の生徒のほか、先生方も演奏を披露する。中央でギターを弾いている人は若い頃はバンドを組んで世界をかけ回ったそうだ。
会場には出番を待つ生徒も含めて100人近い観客が生徒の演奏に聞き入っている。

①公文は やたら宿題が多くて キアンにとって苦悶でしかなく、DNAのなせる業か、挫折した。現在は家庭教師にまかせきりだ。②空手は時期尚早だったのか、キアンの抵抗でギブアップ。代わりに水泳に路線変更をして本人も喜んでチャレンジしているが、いずれ何らかの武道への再挑戦の機会をねらっている。③ピアノは大成功、キアンも毎年一回開かれるリサイタルを楽しみにしている。現在は「エリーゼのために」を聴衆の前で演奏できるようになるのが目標だ。④さらに最近は週一で日本語のレッスンに通わせており、これはおまけだが、先生に言われて日本語のアニメをユーチューブ(英語の字幕付き)で楽しんでいる。

昨年の順番は前から数人目だったが今年は大分後ろになった、ということは順位があがったということだ。5分ほどの演奏だが、キアンが日ごろのレッスンの達成感を満喫するには十分だ。
ご多分にもれず表彰状をもらって先生とのツーショット。キアンの高揚は絶頂だ。

そして最近出会ったのが「グローバル時代の子育て」で、習い事が学校の授業よりも優先される、ないし重要度が高いという情報だ。ママ・ジェーンは学校の試験前や家族の外出などと重なると平気でピアノや水泳を休ませる。不満顔をすると「学校の試験とピアノとどっちが大事なの?」とありきたりの言葉を発する。ピアノのお稽古を単なる私のお遊び相手と思っているらしい。しかし、「グローバル時代の子育て」の教えによると、学業よりも大事なのだと、自信を持って言い返すことができるようになった。「キアンのために今日の試験が何点などということは、どうでも良い、キアンの成長、将来のために必須なんだ」と。

通学しているドンボスコが主催する水泳教室で、犬かきコースを終えて自由形(初心者)に駒を進めたキアン。横一列に並んで、呼吸法の練習だ。手前から二人目がキアンだ。

実はキアンにとっては、口うるさいママ・ジェーンと離れて、私と一緒に出かけたり食事をする時間がこの上ない安らぎなのだが、それは決して口に出すわけにはいかない。何故そうなのかはこのブログの後半に述べる。

飛び込みもなかなか型にはまってきている。
自由形を卒業したら次は平泳ぎ、これが案外難しいようで、なかなか前に進まない。

さらに「グローバル時代の子育て」では「何をなすべきか、具体的な指示はしない」「自主的なやる気が原動力となる」「干渉が多すぎると自信が育たない」「小言や尋問は厳禁」「何でも話せる家庭環境づくりが重要」「親が子供と真剣に向き合うことが基本」などなどと説く。学校や塾で勉強さえして、良い成績さえとっていれば、いい大学に行って一流会社に入って人生の目標が達成できる、と信じている教育ママにとっては耳の痛い話ばかりが続く。会話の無い家庭環境や親の過度な干渉が、子供を木偶(デク)に育ててしまい、社会に出たとき、いわゆる「出来ない」人間になってしまう。

共通の目標を持って仲間たちと努力することが、楽しみであり、成長なのだ。

フィリピンの子育てを見ていると、まさに、その真逆を行っている気がする。何しろ子供の一挙一動に口を挟んで思い通りに動かそうとする。言うことを聞かないと罵声と張りピンタが飛ぶ。子供が話しかけても耳を貸そうとしない。子供を枠にはめて、しつけと称して伸びようとする枝を全て切り取ってしまう。その結果、フィリピンの子供達は自分で何も決めることができず、周囲の流れに身を任すだけの自主性の無い大人に育ってしまう。これはパキキサマと呼ばれるフィリピン人独自の習性だ。ただ、工場等で使うにはすこぶる都合の良い性格だが、いったん歯車が狂うと過激な労働組合運動に集団で走るマイナス面もある。

毎日一時間、2週間(10回)のレッスンが終わると親たちが食べ物を持ち合って終了式の宴会となる。これがまた達成感を盛り上げる。

このしつけにキアンは日夜苦しんでいる。ママジェーンの気持ちもわからないではないが、キアンにはほとんど自由がない。やりたいことはすべて悪いことというレッテルをはられて、やらせてもらえない。親の判断基準からすればそうなのかも知れないが、そこには自主性、自信、判断力の醸成などいうお題目が入り込む余地はない。私が口を挟んでも「親のしつけに口をだすな、そんな考えはフィリピン人として通用しない、キアンの将来のためにならない」ときっぱりと釘を刺されてしまう。

いよいよクライマックスの表彰式。3人一組でレースを行い、金銀銅のメダルが授与される。要は全員メダルをもらえるのだ。全員が勝者でそれなりに達成感を味わってもらおうという魂胆だ。
家にはキアンの努力の証として金銀銅のメダルが飾られている。

だから、キアンは親の前ではとてもいい子で、親の命令や小言に決して反発せず、素直なのだが、私に対してはわがまま放題だ。こんな二面性も社会に出たら必要なのかとも思うが、キアンは「親と一緒にいると緊張して疲れるので、私と一緒にいたい、私と一緒なら安らげる」としみじみと語る。そんなキアンのコメントに、キアンもそろそろ子供時代を脱却して少年になったのだとつくづく思う。


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One thought on “グローバル時代の子育て(キアンのお稽古事)2019年4月22日

  • イマイ

    日本で都内だと、小4になれば中学受験がスタートしますね。
    高2で終える中高一貫カリキュラムは、難関大学に入るには圧倒的に有利だから。
    難関なら就職抜群、Fランなら接客業・ドブ板営業になってしまう。
    ⇒だから、コミュ障が文系くと人生詰む

    中堅あたりだと、専攻に左右されます・・・
    まあ機電系は就職最強だし、モノ相手なのでコミュ障でも心配ありません。
    フィリピンでは、その手の日系メーカーの技術者になれば高給取りですね。