University of Santo Tomas(UST)に潜入-フィリピンの大学事情 2013年10月27日


退職者の方が入院している関係で、サント・トマス大学(University of Santo Tomas, UST)を訪れる機会があった。USTいえば、1611年に設立されたアジアでも最古の大学で、42000人の学生を有するフィリピン最大の大学でもある。マニラ市内の繁華な場所にある約25ヘクタール(7万5千坪)のゆったりしたキャンパスは学生であふれ、ここには、いかにも大学のキャンパスという雰囲気があった。

CIMG0564s-4構内にあるUST付属病院はUPなどと並んでフィリピン有数の病院だ

 UST出身者には、ケソン、オスメニア、ローレル、マカパガル(アロヨ前大統領のお父さん)など、フィリピン共和国の初期の大統領の名が連なる。特にケソンはケソン・シティの名の由来でもある。ちなみにローレルは日本がフィリピンを占領していたときの傀儡政権でもあったので、今では歴史から抹消されて、道路などの名前になっていないので、めったに耳にすることはない。英雄ホセ・リザールもここでも学んでいる(彼は大学を3つ出ているそうだ)。

CIMG0546s-4キャンパス内の道路は広々として学生が自由に闊歩する

 ちなみにフィリピンNo.1の大学は、押しも押されぬ国立のフィリピン大学(University of the PhilippinesUP)で、全国に10校を有し、学生総数は5万人を超えるが、単独の大学としてはUSTに席をゆずる。中でもケソンシティに500ヘクタール(150万坪)近い広大なキャンパスを構えるなUP Diliman校は旗艦大学として25000人の学生を擁し、幾多の国家的指導者を輩出してきた。 

CIMG0547s-4遊歩道にはミリエンダ(おやつ)とるを学生がくつろぐ

  フィリピンの歴史に名を残す第10代大統領、マルコス、マニラの大通りの名前でおなじみのRoxas(ロハス)、Quirino(キリノ)は第5代と6代の大統領、そして、現在の副大統領、Binay(ビニャイ)などがUPの出身だ。UPの学生は、国家あるいは社会の指導層になるべくエリート学生の集合体で、その誇りと自信ははなみなみならぬものがある。なんでも一番にならなければ気が済まず、組織の中でトップとなることができないとさっさとやめてしまう。UP出身者ということで、ある程度経験を積みさえすれば、いくらでも転職先はある。

CIMG0548s-4都会のど真ん中に広大な校庭を持ち、学生がスポートを楽しんでいる

 私が、現役のころ、毎日のように新入社員の面接を行っていた。日本のように決まった時期に一斉に入社させるのではなくて、一年中新入社員を迎えていたような気がする。入社試験を行うとUPの学生は、とにかくできる。面接をしても実にしっかりしている。それでつい雇ってしまうのだが、大体、2~3年して、ある程度仕事を吸収すると、さっさと、もっと給与のもっと高い、出世の可能性のある会社に移ってしまうのだ。

 CIMG0554s-4     学生も今やキャッシュカードの時代だ、仕送りならぬカードで生活費をおろす

 そんな、悩みを大手建設会社の副社長に打ち明けた。彼は笑いながら、「うちでは決してUPの学生を雇わない。彼らは組織のトップになれないと悟ったら、さっさとやめてしまう。ちなみにうちの会社にはUP身者は2人しかいない。それは、社長とこの俺だ」。そんなわけで、入社試験ができるだけでは、だめ、その人間にどれだけ会社に貢献してもらえるか、とい尺度で雇うことにした。すなわち、会社へ忠誠心ということだが、フィリピン人の社員に会社への忠誠心を求めることは容易なことではない。

CIMG0556s-4さすがにフィリピン最古の大学、校舎にも風格がある

 国立の雄、UPの向こうを張るのが私立の雄、アテネオ大学だ。UPに隣接するキャンパスは100ヘクタール(30万坪)を越え、充実した施設を誇る、空からしか見たことは無いが、その辺の街並みと大差ないUPのキャンパスとは大違いだ。それもそのはずで、アテネオの授業料は並外れて高い(と言っても、年間数十万ペソ、50万~100万円程度だがフィリピンでは並外れているといえる)。だからアテネオの学生といえば、血筋も頭もよいお金持ちのお坊ちゃま、お嬢様で占められる。アテネオと聞けば「スマート(お利巧)でマヤマン(お金持ち)」というのが第一印象で、UPと聞けば「スマートだけどマヤバン(生意気)」となる。

CIMG0558s-4キャンパスは緑あふれるオアシスだ

 アテネオの出身は、なんと言っても現在の大統領のアキノだ。前大統領のアロヨ、元大統領のエストラーダ、あるいは英雄ホセリ・サールもここで学んだ。それに次期次期大統領と、私が勝手に思っているクリス・アキノ(女優)は主席でここを卒業したそうだ。彼女は、2000年前後のフィリピンNO.1の人気女優で、マルコスを追い込んだニノイ・アキノとその遺志を継いだ妻のコーリー・アキノ元大統領の血を引き、兄は、現役の大統領、血と冨と名声そして美貌をあわせ持つクリス・アキノは、政治家としての経験を積んで大統領選に打ってでたら、間違いなく当選するだろう。ちなみに現大統領のノイノイ・アキノはクリス・アキノの強烈な後押したあってこそ、大統領に当選したのだ。

 CIMG8299s-4次期次期大統領の呼び声が高いクリス・アキノ(女優)、2010年の大統領選では、兄、ノイノイ・アキノを強力にバックアップして当選させた

CIMG0559s-4大学設立当初の門、USTの象徴だ

 そして、3番手に位置するのがデ・ラサールだ。函館ラサールや鹿児島ラサールと根っこは一緒だが、フィリピンでは大学で、多くの付属校を有する有名な大学だ。ここもお金持ちの行く学校で、ラサールと聞くと「マヤマン(お金持ち)」という印象で、必ずしも「スマート(お利巧)」という印象はない。しかし、ビジネスマンの子弟が多く通い、将来のビジネスのコネを作るには格好の学校だ。ちなみにフィリピンNo.1のSMデパートを率いるヘンリー・シーはここの出身だ。

CIMG0561s-4敷地の中央に位置する遊歩道にはユニフォームを着た学生が憩う

 マニラ首都圏で有名校には、上記のほかに、工科系のマプアがある。工科系としてはUPの向こうを張って優秀な学生を輩出している。かつてUPの学生に混じってマプア出身の化学工学出身のの学生を雇ったが、その後、国家資格試験で全国第2位の成績をとった。そして地道にこつこつと仕事をこなし、最後にはUPの出身の社員を尻目に、部門のトップにまで上り詰めた。他にも、マプア出身で、国家資格試験で第一位をとったという社員がいたが、人格と英知に優れ、秀逸な尊敬に値する社員だった。

CIMG0562s-4今や学生も車で通う時代、構内には巨大な有料駐車場がある

 上記のほかに、地方にも優秀な大学がある。学生のまち、ネグロス島の南端のドマゲッティ市にはシリマン大学、高原の街、バギオにはセント・ルイス大学、ミンダナオ、イリガン市にはミンダナオ州立大学など、フィリピンは学生が謳歌する国だが、国内の就職戦線は厳しいものがあり、少しでも経験を積んで海外を目指す学生が多い。従って国内の人材の空洞化は最たるものがあるが、いつか国内の産業が勃興し、海外の人材がフィリピンにUターンしたら、とんでもない技術大国が出現するだろう。

CIMG0563s-4駐車場の脇にはマクド、ジョルビー、KFCなどのファーストフード店が軒を連ねる

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