退職者が死んでしまったら その4 2014年6月7日


5月xx日、夜明け前から、携帯が長いこと鳴っていたが、どうせ間違い電話だろうと出ずに切ってしまった。そうしたら、朝早く、とある退職者(さん)と一緒に暮らし、面倒を見ていたが、さんが亡くなったと知らせにやってきた。以前から病弱で、つい先日、「床ずれの良い薬を知らないか」と電話があり、「医者に相談してほしい」などと話したばかりだった。

にはとにかく、肉親に連絡して、フィリピンに来てもらうこと、その際、家族関係を証明するために戸籍謄本を持ってくることとアドバイスした。

翌々日、さんのお子さん(さん)が会いにやってきた。結論としてお骨を一刻も早く日本に持ち帰り、葬式を日本でしたいとのこと。当方としては、さんは、退職ビザのスマイルプログラムであるために、ビザ預託金2万ドルをEnd of Term needs and obligation(終末のニーズ) に使えるから、下記の書類を準備することをアドバイスした。

① 預託金を引き出したい旨のPRA宛レター

② 出生証明書の取得(退職者と申請者の関係を証明する文書)

③ 委任状(当方がPRAと折衝、手続きを遂行するため)

④ 入院費、葬式等の領収書ないし請求書

月曜朝一、再度、さんがやってきた。結論として「葬式の費用を払わないと、遺体を火葬することができない。しかも、そのような費用は準備してこなかった。」ということで、一刻も早くPRAに葬式の費用を支払ってもらうことが、急務となった。ちなみに預託金はDBP(Development Bank of the Philippines)に預けてあるので、小切手の発行等のアクションは、すべてPRAの手の内にある。

遺族のさんを伴ってPRAに申請に出かけていったが、あっちこっちたらいまわしにされた挙句、最後にハビタン部長にたどり着いて、前向きに対処することで即決した。下記の条件のもとに、翌日(火曜日)には何とかなるとのことだった。

① 預託金の使用は、入院、葬儀等の実費のみに使用できると

② 支払いは、葬儀社等に直接小切手で支払われること

③ ハビタン部長自身が葬儀場に出向いて確認をすること

④ 預託金の残金は、通常の相続手続きを経て支払われること

翌日、ハビタン部長から電話があって、葬儀社が小切手の受け取りを拒否しているので、急遽小切手の受取人を私にしたいと連絡してきた。しかし、このためにはPRAのGMの承認が再度必要になるとのこと。

水曜の朝、小切手の発行はハビタン部長からフィリップ部長にバトンが受け継がれたが、葬儀社は、葬儀社名での口座がないとか、火葬の実行は小切手が現金化されてからだとか、現金をマカティPから持って帰るのはリスクがあるとか、わけのわからないへ理屈を並べ立てて、せっかく用意された小切手の受け取りを、かたくなに拒否した。これから、GMの承認を再度もらって、受取人をさんに変更して小切手を発行するのには、最低でも、もう一日かかって木曜になってしまう(フィリップ部長の判断で小切手の受取人は私でなくて遺族であるさんとすることが適当ということになった、また、GMはセミナーで週末まで事務所に来ないので、セミナー会場まで書類を持っていて承認をもらわなければならないという悪条件が重なった)。

一方、さんは、日本での葬儀を土曜に予約済みで、木曜中に帰って、金曜に役所に届けなければならない。したがって、木曜の早朝に予約済みの火葬の実行は必須だった。万策尽きて、フィリップ部長が私につぶやいたのが、「私が立て替えて葬儀社に払っておけ」ということだった。どうにもそれしか方法がなさそうで、急遽、相棒のジェーンに連絡して、お金を用意させた。PRAのフィリップ部長が支払いを保証するのだから、間違いはあるまいという判断だ。

PRAの幹部二人の協力と当方の立て替えて、何とかさんの希望をかなえることができた。GMの不在、葬儀社の抵抗など、想定外の障害があって難航したが、月曜から丸一週間、午前中を全部つぶしての対応で、何とか乗り切ることができた。特に、木曜は、早朝6時の火葬に始まって、大使館でのお骨の封印、小切手の現金化のための委任状の作成と署名、そして午後の便での帰国と、ぎりぎりのスケジュールとなった。

火葬の後、お骨を日本大使館にもって行って、封印をしてもらうが、そのためには、死亡証明書原本と火葬証明が必要だ。さらに日本で死亡届けを提出するために、もう一通の死亡証明が必要で、都合、2通の死亡証明書が必要だが、さんはパニック状況で、それを忘れてしまった。さらに、葬儀社にお骨の持ち出しのために、検疫証明をアレンジしてくれたが、それもぎりぎりの到着だった。

今回、スマイルプログラムで、相続手続きを経ずに預託金の支払いが実行されたのは、PRAとしても始めてらしい。しかも、限られた時間ということもあって、担当者では判断できず、両部長の直接の采配でことが進められた。しかし、これで、スマイルの「End of Term Needs and Obligations」に基づく預託金の引き出しについての具体的な運用が見えた気がする。

なお、相続手続きにおいて、遺産分割協議書(Extrajudicial Settlementないし遺言)は、必須としているが、そのほかの手続き(新聞公告、相続保証など)の必要性については、DBPと話し合わなければわからないとPRAの担当はコメントしている。

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