ノイノイ・アキノ新大統領の就任式 2010年7月1日


 630(水)は第15代大統領、ベニグノ・アキノ3(ノイノイ・アキノ)、50歳の大統領就任式で祝日となった。いつも突然の祝日に右往左往させられるのだが、この日ばかりは納得せざるを得ない。リザール公園のキリノ・グランド・スタンドに50万人の庶民が集まった就任式は盛大で、世論はノイノイ・アキノ新大統領の就任を歓迎しているようだ。

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 母親であるコーリー・アキノ元大統領の死で、にわかに注目されたノイノイだが、選挙運動中はいかにもカリスマ性の欠ける2代目ボンボンの感がぬぐえなかった。しかしながら、この日行なわれた就任演説はタガログ語で、私にはほとんど理解できなかったが、なかなか雰囲気のあるものだった。地位は人を作るというが、まさに大統領の貫禄を示すものだった。スローガンはPANATA sa PAGBABAG(変革の約束)で、アロヨ政権の行なってきたことをすべて否定し、万人のための政治を行なう、というものだ。

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 就任式に出席した庶民はアキノ一族のシンボルカラーである黄色のシャツを着ている人が目立った。テレビのすべてのチャンネルは生中継を延々と続けていた。こんなことは、コーリーアキノ葬式以来のことで、当面アキノ一族のフィリピン支配が続きそうだ。ちなみにノイノイ・アキノ大統領の従兄弟のダンディン・コファンコはサンミゲルビールやPLDTのオーナーで経済界の重鎮だ。

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マラカニヤン宮殿に到着した大統領を待っていたのは軍隊式の荘厳な式典だ。どこかの首相のように1年ごとにころころと代わり、政党内のたらい回しのようなのとはちょっと違う。国民の直接選挙で選ばれた大統領は、よほどのことがない限り、国家元首として今後6年間、国を治めていくのだ。

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 マラカニヤンには妹で有名女優のクリスアキノなど家族一同が新大統領の到着を待っていた。大統領就任という国家の行事でも、家族が集まって記念写真をとるというのがフィリピン式だ。さらにマラカニヤンでは母親の若きの日の肖像画と対面した。親子2代で国家元首となった思いは、計り知れないものがあるだろう。

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 アロヨ大統領と面会した両大統領は、お互いに笑顔をかわしていたが、アキノ新大統領はアロヨ大統領の不正を徹底的に暴くと宣言し、昨日、元最高裁長官を委員長に任命して、真実究明委員会を設置したばかりの犬猿の間柄だ。

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アキノ新大統領は「汚職なければ貧困なし」をスローガンに掲げて当選した。確かに汚職により政治の方向が曲がってしまい、国民の利益につながらない政治になってしまう、ということは多いにあるだろう。しかし、末端の公務員の汚職は、汚職というより、ちょっとした心づけという面も強く、彼らの生活の糧ともなっている。このような慣習を不正/悪として決め付け、ただひたすら潔癖症的に止めさせようとすると、かえって公務が機能不全に陥ってしまうかも知れない。なぜなら、末端の公務員は、充分に食べていけるだけの給与を国から支給されていないのだ。中には潔癖に一切の心づけも拒否する公務員もいるにはいるが、普通の人にこれを求めても無理な話だ。彼らとしても霞を食べて生きて行けるわけではない。日本の公務員のように、民間と比べて遜色のない給与があってこそ、汚職を悪として追放する基盤ができるのだ。そうでないと、全うな能力を持った人材はすべて民間に流れ、デモシカの役人ばかりになってしまうだろう

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