iPS細胞は夢の技術かそれとも悪魔の技術か 2012年10月22日


 昨夜、NHKスペシャルでiPS細胞(万能細胞)を発見した功績でノーベル賞を受賞した山中伸弥教授の特集をやっていた。従来の万能細胞(ES細胞)は受精卵をこわして作る、すなわち、自然の命から取り出すものに対して、これは皮膚の細胞を初期化して、万能細胞を作りだすものだ。したがって、患者の皮膚から作った万能細胞で、臓器や神経細胞などを作って患者の体に戻せば拒否反応もなく、倫理的問題にもならない、まさに理想の再生治療=夢の技術が実現しようとしているのだ。

 さらに種々の病気のメカニズムの解明や薬のテストなども実験室で行うことができて、パーキンソン氏病やアルツハイマーなどの難病に画期的な新薬ができることが期待される。すなわち、医学会に革命をもたらす画期的な発見なのだそうだ。

 一方、山中教授は倫理的な規制の議論が必要と付け加えるが、この技術を使えば、様々な臓器を作って体に組み込んだり、さらには一個の生命そのものも人工的作ることができてしまう、ということを暗に示唆しているに違いない。

CIMG4724s-4赤ちゃんはまさになんにでもなれる可能性をしめた万能細胞そのものだ。


 昔、手塚治虫などの漫画で見た、人工の臓器などを人体に組み込んだ、まさにサイボーグ=鉄腕アトムの世界であり、さらに、生殖というプロセスを経ないで自分の分身、クローンを作ることができるという、FS映画の世界だ。ゴルゴ13でも「毛沢東の細胞を使って毛沢東の分身を数百人作り、彼らを訓練して、理想の国家指導者を作り上げるプロジェクト」の話があった。こんな漫画やFS映画の世界が技術的に可能となったのだ。

  さらに、植物の世界で、すでに実用化されている遺伝子組み換え技術と組み合わせると、超人ハルクのような生命体もできるかもしれない。また、ハリーポッターに出てくる人と動物を組み合わせた半人半獣が出現しても不思議でない。

CIMG4728s-4たったの2歳半で読書をするKIAN。本当の所は何も理解しているわけではないのだが。

 山中教授は、その辺の倫理規制が必要で、どこまでこの技術の利用を可能とするか、国際的な取り決めが必要だという。しかし、原子爆弾がそうであるように、独裁国家などが取り組んだら、その動きを簡単押さえ込むことはできない。独裁者は自らのクローンを作って永遠の命を保とうとするだろうし、自らのクローンで軍隊でさえ作れるだろう。「地球外でクローンを増産し、軍隊を仕立てて販売するというビジネス」の映画があったが、そこでは、彼らは生命体ではなく使い捨ての機械という設定だった。

 さらに、人工的に作った臓器や神経は命として認識されず、売買され、実験や治療に使われることが是とされている。しかし、その延長線上にある一個の独立した生命体はどうなるのだろう。近未来に、生殖という過程を経て誕生した人間と、人工的に作られた人間(クローン)という2種類の人間ができて、後者は機能的には全く同じでも、人権をもたない道具あるいは機械として売買されるという状況が出現するかもしれない。現代の技術をもってすれば、これらクローンに自分が機械であるという認識を植え込み、人間に逆らうことはできないようにプログラムすることは容易であろう。(以前たしか、こんな設定の映画を見たことがある)。

CIMG4777s-4最近はCARという自動車のアニメに凝っていて一日中繰り返して見ている。まさに自分がCARになった気分でテレビの中に入り込んで車を運転している。

 そうなってくると、このiPS細胞を夢の技術と呼んで、ノーベル賞を与えて浮かれていていいのだろうか。この夢の技術で、本来人間に与えられた生命の限界を、果てしなく克服して、寿命を延ばしていくことが、人類全体にとって益ととなるのだろうか。動物そして人類は世代を交代することによって進化を遂げてきた。言い換えると、動物は個々の生命が次の世代を生み、自らは死んでいくことによって多様化し、環境に適応したものが生き延びて、生命の宿る地球を維持してきた。

 今、人間が、自分自身の細胞で悪い部分を取り替えて永遠の命を獲得したとしたとしたら、人類は進化することを止めて、まさに破滅の道を歩みはじめることになるだろう。さらに遺伝子組み換えにより、自然に存在し得ない生命体を作り出すなど、人間あるいは動物の生命というメカニズムを人間が操れる時代が来たとすると、このiPS細胞の技術はまさにパンドラの箱を開ける悪魔の技術となってしまうのではないだろうか。

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