Daily Archives: August 10, 2010


8月23日の昼前、PRA(退職庁)に退職者のビザ申請に同行すると、PRA職員がテレビにかじりついている。一体何事が起こったのかと聞いてみると、人質 (Hostage)事件だという。テレビはタガログ語で、道路の真中に止まったバスの画像を写すだけだから何のことやらさっぱりわからない。ことの詳細は 翌日のマニラ新聞で知った。  この事件は、国家警察の元警部(キャップテン)が、恐喝事件に関与した疑いで受けた懲戒免職の処分に不満を 持ち、その撤回を求め、中国人観光客25人を乗せた観光バスを乗っ取ったものだ。この警部はその前年、優秀な警官として表彰されたばっかりの警官の鏡だっ た。それが、部下が行なった恐喝のために詰め腹を切らされた。しかもその事件は裁判で却下されたにも関わらず、最終的にオンブズマンにより有罪とされ、退職を間近に控えた彼は、職ばかりでなく退職金も年金も、将来享受すべきすべての利益まで失ってしまったのだ。警官にはそれを不服として申し立てる手立てがない、そして思い余って今回の事件を起してしまったという。 だからと言って、観光客を巻き込んでの人質事件は最悪の選択だ。オンブズマ ンに不服があるなら、そこに直接抗議すればいいのだ。多くの人が、フィリピンのイメージを改善し、観光客や企業の投資を誘致してきた努力が、この事件で水 泡に帰すことになりかねない。当方も盛んに「退職者の老後の生活をフィリピンで」と言ってきたのに、それらの努力をお釈迦にするようなとんでもない事件 だ。相棒のジェーンも「これでフィリピンのイメージが10年前にさかのぼってしまう」と、ポツリとこぼしていた。 そもそもフィリピン人は我慢強く、弱いものはいつも泣き寝入りしてしまうのだ。だからこのような突飛な行動に出て世間を騒がせることは極めてまれだ。私も20年以上フィリピンに関わってきて、初めてこのような事件を耳にした。かつて軍の将校が人質をとってホテルに立て込む事件があったが、人質に危害が加えられること は皆無だった。これらは茶番とも思えるような政府との交渉で解決されてきたが、今回は最悪の事態を迎えるという極めて異例な幕切れだった。  犯人が人質と共にバスに閉じこもっている間、犯人は人質に対してとても親切だったそうだ。しかし、警部の弟が説得工作に乗り出し、それが逆に兄をあおるような 行動に出て、事態が急変した。犯人に対する政府の対応も犯人の主張に対してけんもほろほろで、弟が兄に「こんな政府からのレターは紙くず同様だ」と告げた そうだ。さらに、メディアや警官が弟を取り囲んであたかも暴力を振るっているような報道が、車内の犯人にも筒抜けになっていたのだ。その結果、兄が激昂し態度が急変した。メディアの中継で犯人は車内から外の状況を的確に把握している一方、警察は車内の状況がわからない。こんな状況が事件の解決を難しくし […]

人質事件で中国観光客が8人死亡 2010年8月24日