1990年代、DVDがビデオ(VHSやβ)にとって代わって以来、フィリピンではレンタルビデオ店が姿を消した。フィリピンでは香港などで製造された海賊版のDVDが格安で出回っているので、レンタルというビジネスモデルが成り立たなくなったのだ。 マカティスクエア、グリーンヒルなどのモールあるいはデビソリア、バクラランなど庶民の買い物どころでは60ペソ程度で最新の映画やアニメのDVDを買い求めることができる。ちなみに無修正の日本製アダルト系のDVDも100ペソ程度で買える。ただしこれらは店頭には置いていないのでそれらしき人に告げて奥から出してもらわなければならない。ビデオと違ってDVDはプレスするだけだから、ソフトと機械さえあれば只みたいなお金で製作できるのだろう。 これらDVDは基本的に日本語の字幕はないから、日本人が観て楽しむにはかなりの英語力を必要とする。アダルト系のように見るだけならばいいのだが、普通の映画やアニメでは言葉がわからないとちんぷんかんぷんだ。しかし、これが意外な使い道があるのだ。 最近のDVDはアメリカ映画でも英語の字幕がついているが、日本では日本語と英語の字幕、フィリピンで買ったものは英語と中国語などの字幕がついている。私の息子がこのDVDの字幕を利用して英会話の勉強をしているという話を耳にした。要は英語の字幕を見ながら映画を見ていると、何度か繰り返しているうちに英語を聞き取れるようになるというのだ。そもそも俳優が映画のなかで話している言葉などは簡単な会話であって、書いてありさえすれば大方意味が理解できる。初めはちんぷんかんぷんでも、段々耳が慣れてきて字幕も見なくても理解できるようになるというわけだ。もちろん一朝一夕では無理だろうが、映画を楽しんでいるうちにヒアリング能力が飛躍的に向上するそうだ。しばらくやっていたら、商売上出合った外国人が早口の英語で話しかけてきても自然に返事ができるようになったという。 アメリカ映画を観ていて日本語の字幕に頼っていると俳優が話している英語は全く聞いていないから、何度観てもヒアリング能力の向上には役立たない。 頭の中を英語モードにして映画を観ることが重要なのだ。そのためには日本語の字幕は邪魔者なのだ。 ご承知の通りフィリピンではアメリカ映画でも字幕がない。それでも映画館では多くのフィリピン人が楽しそうに映画を鑑賞している。フィリピン人はたとえ英語が喋れなくても聞きとることはできるのだ。それは子供のころからディズニーなどのアニメを字幕無しで観ているからで、もともと言葉などよくわからない子供のうちから英語になじんでいるうちに自然に理解できるようになってしまうのだ。私はかつてデズニーの「ライオンキング」を観にいって、周りの子供たちが大笑いしているのに、何がおかしいか理解できなくてとても恥ずかしい思いをしたことがある。それ以来、フィリピンでは映画館を訪れないまま10年以上が経過してしまった。 しかしここで一念発起して、一枚60ペソのDVDを駆使してアメリカ映画を字幕無しでエンジョイできるようにしたいと思っている。そうすればフィリピンでも最新のアメリカ映画を安く早く楽しむことができる。現在、映画館の入場料は100~150ペソ程度と従来に比べてかなり高くなっているが、それでも日本に比べればはるかに安い。また字幕を作成する必要ががないためかフィリピンの方が日本より封切りが数ヶ月早いようだ。 DVDを鑑賞するためには当然のことながら、DVDプレイヤーが必要になる。もちろんパソコンに付属したDVDプレーヤーでも観ることができるが、パソコン嫌いの人でも専用のプレーヤーが昨今2000~3000ペソという格安で買えるのだ。デビソリアやバクラランに行くと中国製や韓国製のDVDプレーヤーを大量に積み上げて叩き売り(?)をしている。