統一選挙戦の火蓋が切られた 2010年2月12日


次期統一選は510日。この日、大統領を初め、副大統領、1名、上院議員の半数12名、下院議員287名、その他、州知事、市長、市議など、合計 18000人の議席が争われる。210日は丁度その3ヶ月前にあたり、公式に選挙戦がスタートした。今回の選挙の目玉はポスト・アロヨの大統領の座だ。アロヨ大統領は憲法を改正し大統領の再選を可能とする画策をしてきたが、アキノ元大統領やラモス元大統領の反発を食らってその試みは頓挫した。特に昨年8 月のアキノ氏の葬儀における国民の熱狂を目の前にして、身を引く以外にはないと悟ったようだ。

CIMG8299s-4CIMG8298s-4ベニグノ・アキノ大統領候補(ノイノイ)の妹クリス・アキノは芸能界を代表する人気女優、右の女性はノイノイの彼女

 現状において大統領選の有力候補は5人に絞られる。ベニグノ・アキノ上院議員、マニュエル・ビリヤール上院議員、ジョセフ・エストラーダ前大統領、ギルバート・テオドロ前国防長官そしてディック・ゴードン上院議員の5人だ。

 ベニグノ・アキノ3(ノイノイ):元アキノ大統領の長男、父親は英雄ベニグノ(ニノイ)・アキノでマニラ国際空港の名前にまでなっている。まだ新米の上院議員だったが、昨年の母親(コーリー・アキノ元大統領)の葬儀で一躍注目を浴び、大統領候補に祭り上げられた。マルコス政権を打倒の引き金となった父、そして清廉潔癖な大統領であった母の正当な後継者として大統領の座に挑戦するが、その政治的手腕には疑問があるとされている。人気女優のクリス・アキノを妹にもち、さらに有力財閥のコファンコ家をバックに、圧倒的支持を得てきたが、ここに来てビリヤール候補の追い上げにより、差が小さくなってきている。しかしテレビで演説を聴いていても何かカリスマ性に欠け、小物という感をぬぐえない。それよりもいっそ、人気女優で同じく英雄の血を引くクリス・キノ自身が立候補したほうが確実という気がするのだが。

CIMG8360s-4CIMG8300s-4 副大統領候補はロハス上院議員。彼は、元々は自由党の次期大統領候補と目されていたが、昨年の熱狂的アキノ人気のためにベニグノ・アキノ3世に大統領候補の席を譲り、副大統領として立候補した。当選したら、経験の浅いアキノ候補を補佐して国政をおこなっていくことになるのだろう。

マニェル・ビリヤール(マニー):東洋一のスラムといわれるトンドでエビを売っていたが、その後不動産事業で財をなし、マニラの南、ラスピニャスの市長から、下院議員、上院議員と上り詰め、その仕上げとして大統領選へ挑戦した。選挙戦初日の演説会場には、多くの有名芸能人が集まり、歌や踊りを披露し、観衆にサービスした。さらに豊富な資金を武器に、テレビに頻繁に登場し、アキノ候補を猛追し、ほぼ互角の支持率を獲得している。マニー(金)というニックネームも皮肉だ。毒舌で有名なミリアム・サンチャゴ上院議員も赤いドレスを着て同じ国民党の候補であるビリヤール候補を応援した。副大統領候補は美人政治家のレガルダ上院議員。

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超有名俳優のドルフィーとウイリービリヤール候補を応援するが、彼らは30M ペソ(6千万円)の謝礼をもらって、応援しているという。フィリピンの大統領選はマニフェストがどうのこうのではなく、いかに人気俳優達の人気に背負われて票を獲得するかという競争なのだ。

ジョセフ・エストラーダ(エラップ):元人気アクションスターで、1998年大統領に選ばれたが、不法賭博フエテンによる不正蓄財等により2001年アロヨ副大統領らにより政権を追われた (EDSA革命2)。さらに2007年不正蓄財で有罪となり終身刑の罪となったが、アロヨ大統領は即刻、特赦をあたえ釈放した。その後、大統領の再挑戦を目指し活動してきたが、前大統領であるエストラーダの立候補については憲法違反であるとの指摘もある。しかし、貧民層への人気はいまだに根強いものがあり、72歳の最年長候補者だ。

CIMG8355s-4自分自身が芸能界出身ということか、テレビコマーシャルでは派手なパフォーマンスは無く、静かに国民に語りかけるポーズをとっている。終身刑を食らった身で浮かれるわけにも行かないのだろう。副大統領候補はマカティ市長のビナイ市長。かねてから反アロヨの姿勢を明確にして、たびたび反アロヨのデモをおこなってきた政治家だ。

ギルバート・テオドロ(ギボ):名門フィリピン大学を主席で卒業し、ハーバード大法科大学院卒業というエリート。43歳の若さで現政権の国防長官となり、若干45歳の若手政治家だ。アロヨ大統領の正式な与党後継者だが、アロヨの政治とは一線を画している。アキノ候補と同様にコファンコ家の一員だが、知識層の支持を受けている。血統、金、人気で大統領を選ぶのではなく、能力で選べと、暗に他の大統領候補者を非難している。そのためか、テレビコマーシャルへの露出度は少ない。

リチャード・ゴードン(ディック):1990年代、アメリカ軍が撤退しフィリピンに返還されたスービック経済特別区の長官として、オロンガポの住民と共に海外から投資を呼び込み、スービックに今日の繁栄をもたらした。市民に生活の糧である仕事を与えるというキャッチフレーズで大統領を目指している。

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 選挙となると有名芸能人を演説会に登場させ、それを目当てに人が集まるというのが常套手段だ。だから、選挙演説は、演説というよりもショーそのものだ。だから候補者もスターと共に踊ったり、歌ったりしなければならない。選挙管理委員会は芸能人が選挙戦に参加して特定の候補者を推薦することに対し、その間芸能活動を停止するよう注意を喚起している。それに違反した場合は逮捕すると警告しているそうだが、効果のほどはどうだろうか。

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 さらに大統領や上院議員選では全国的に名前を売らなければならないので、遊説よりもテレビ出演が主体となっている。民放ではコマーシャル枠の半分くらいが選挙運動に使われているようだ。以下、今回12議席が争われる上院議員候補のテレビコマーシャルだ。

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