日本の若者はセックスをしないのか?2011年9月9日


先日、PRA(フィリピンん退職庁)のGM(長官)と打ち合わせをしていた折、いかに日本から退職者を呼び込むかという議題になって、長官は突如として「日本の若者はセックスをしないのか」と質問してきた。日本は少子化で、介護老人を世話する人がいなくなっている。この傾向はこれからますますひどくなって、フィリピン人の出番がある、などと話をしていた最中である。私はあわてて「いやそんなことはない、若者はセックスをまるでスポーツのように楽しんでいて、貞操などという言葉は死後だ」と説明した。長官は「ならば、どうして子供ができないのか」ときりかえしてきた。私は、「日本では避妊意識が徹底しており、かつ堕胎が法律上許されているので、多くの新しい命が消えて行っているのだ。フィリピンのように避妊薬(ピル)や堕胎が法律で禁止されていたら、日本でも巷に子供があふれるようになるだろう」と話した。

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マカティのもっともモダンな街、グリーンベルトの中央にある教会、日曜日は、中に入りきれない多くの人々が教会を取り囲んで祈りをささげている。

 しかし、少子化はそれだけが原因ではない。家族制度が崩壊した日本では子供がほしくても子育てができないのだ。フィリピンのように大家族であれば子供は皆が面倒を見てくれるので、母親も子供を預けて休んだり、仕事に行ったりできる。人手が足りなければヤヤ(子守)を雇うこともできるから、子育てに縛り付けられて、母親が育児ノイローゼになるなんて話を聞いたこともない。有給の出産休暇は2ヶ月も、もらえるし、出産開けには100%の女性が職場復帰する。その点フィリピンは日本よりもはるかに先進的で、女性ににとって、そして赤ちゃんにとって天国ともいえる状況だ。そんな社会体制を整えれば、日本だってまだまだ少子化を食い止めるチャンスはあるだろうに。

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教会の周りの広場にはたくさんのカラバオ(水牛の模型がおいてある。それをまたいで喜ぶKIAN。後ろではたくさんの子供達が記念撮影をしている。

「フィリピンは貧乏で子作り以外に楽しみがないから、やたら子供ができるのだ」なんていう日本人がいるが、それはとんでもない勘違いだ。日本はたしかに戦後生まれの団塊の世代が頑張って、第2次世界大戦の壊滅的状況から世界を日本ブランドで席巻する経済成長を遂げた。しかし、豊かになった日本人は、結婚したらマイホームを手に入れ、妻と一人か二人の子供だけで暮らす理想の生活、核家族化を邁進した。さらに退職したら夫婦二人だけで年金暮らし、子供とは一緒に暮らさない、子供に面倒はかけない、などときれいごとを並べたてている。要は家族が頼りあわなくても生きる糧を獲得して、家族の役割を忘れ去ってしまったのだ。そして現在、核家族どころか、一人で暮らす老人、あるいは生涯独身で核家族でさえ持てない人が急増している。これでは少子化に歯止めをかけるどころではない。

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私がいフィリピンにやってきた1989年以前に立てられた教会だが、なかなかモダンなデザインだ。その後に建設されたグリーンベルトの庭園によくマッチしている。

フィリピンでは家族の絆がなによりも強いから、たとえ職がなくても、収入がなくても誰かに面倒を見てもらえる。だから、昼間から大勢の若者が何もしないで街角にたむろしているが、彼らは、なんとか食っていけるのだ。兄弟やいとこが長いこと居候していても、追い出したりしないで飯を食わせている。居候するほうも何の遠慮もなしに毎日3度、ただ飯を食らっている。しかし、一旦、職に就くと彼らが恩返しに困った家族を面倒見る。だから、職がなくても病気で職を失っても、彼らは明るく、日本人のようにすぐ自殺したりしない。だからフィリピンでは、誰かが自殺すると新聞のニュースになるくらいだ。この家族の仕組みこそが人類をここまで発展させ、地球を征服させた原動力なのだ。
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最近オープンしたグリーンベルト5はゆったりした広場が特徴だ。KIANは大喜びで、ここぞとばかりに走り回り、ビューティフル・アイズを連発している。

 そもそも、子供や老人の面倒を見るのは家族の役割だから、その家族が崩壊したから、少子化、そして介護老人の問題が表面化している。これらの弱者を保護する家族がなかったら、それは国があるいは社会が面倒を見なければならない、ということになる。それが福祉国家だと、もてはやされているが、それに必要な莫大な費用と人材はどこからまかなわれるのか。現役の若い人達が生み出した税金と若い人そのものとなるのだろうが、それが少子化で、若者がどんどん減っていったら、国も社会も回らなくなってしまう。生産活動から離れ消費するだけ、しかも医療や介護などに莫大なコストを必要とする高齢者ばかりが多数を占め、一方では、それを支える若者の減少する。まさにこれは破滅への道のりで家族制度を放棄した先進国がたどる道なのだ。

 こんな世の中あるいは国家が存続できるはずがない。日本の経済破綻や大災害によるまさに日本沈没が取りざたされているが、まさにその日が近いという気がする。日本の首相の首を何度すげ替えてみても事態は変わらない。今回の大災害のように日本を大きく揺さぶって目を覚めさせないと取り返しのつかないことになるだろう。だから、日本もフィリピンに学んでかつての家族を復活させるべきだとしみじみ思う。

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グリーンベルト5からながめたアヤラの最高級コンドミニアム、ザ・レジデンス・グリーンベルト。3棟ともほぼ完成して、その取引価格は20万ペソ/平米といわれ、50平米のユニットで1千万ペソ(2千万円)、100平米なら2千万ペソ(4千万円)もする。もはや日本とかわらない価格だといえるが、ここはフィリピンの中心マニラ、そしてそのまた中心のマカティの一等地にあるのだから、単純に比較はできないかも知れないが。

フィリピンでも人口抑制の議論が活発だ。人口の増加が貧困に拍車をかけている、だから人口抑制のための避妊薬(ピル)の解禁やコンドームの普及などが必須だという。フィリピンの人たちが避妊や人口抑制に目をむけて、少子化に励んで豊かになっていったとすると、肝心の家族の絆はどうなってしまうのだろう。日本だって、一昔前は家族の絆は強かった。介護施設などはなくて、家族で老人を面倒見ていた。それがちょっと豊かになったら、家族のことを忘れてしまった。 

  最近ブームのコンドミニアムのモデル・ルームを見に行くと、21平米とか25平米とか、それこそマッチ箱みたいなユニットがほとんどだ。まさか、ここでおじいちゃんやおばあちゃん、それに居候まで一緒に住めるはずがない。フィリピンでも豊かな核家族を夢見る人が増えているのではないか、そしてフィリピン最大の強みの家族が失われつつあるのではないか、と危惧される。

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グリーンベルトの散歩のあと、天天火鍋で食事をしたが、店で出会った女の子に盛んにアプローチするKIAN、と思ったらヤヤに何かをねだって大泣きするKIANだ。

 

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